公式レビューがきっかけで読ませていただきました。
そういうこと、残念だけど、社会で仕事していると、どうしても時々運悪く、でも、あるよね…みたいな本当にクソみたいな理由で心を傷つけられ、追い詰められて、結果的に仕事を辞めることになった主人公。
すべてを失った傷心の彼女は、祖母の形見の小箱をきっかけに祖母の故郷へ向かう。
そこで祖母ゆかりの強烈な人々や穏やかな妖怪たちによって、カチコチに凝り固まっていた心が少しずつ緩められていくプロセスがとても暖かい物語。
ときに激しく、時に静かな人間や妖とのやりとりの中で、彼女が次第に癒やされていく様子がとても心地良いのです。
一気に読んでしまうこと、間違いなしです。
上司の失敗をなすりつけられ、心を壊して辞職へ追い込まれた柊カナミ。が、なにもかもを失い果てた彼女は見つけるのだ。大好きだった祖母がくれた色あせた小箱を。同封されていた鈴の音を頼りに帰郷した彼女は、祖母の家でその地に住む人々と、そして人ならぬ者たちと再会する。
短く刻んだ一文が効いていることにまず目を奪われました。これによってぽつりと剥き出される心情こそが、カナミさんのへし折れてしまった心の有様をなにより明確に表していましたから。
けれどもしかし。
同じ一文が、今度は闇底に囚われた彼女の心が様々な人と妖怪たちとの交流によってあたためられて動かされていく、その感想と感動をなにより強く表してもいるのですよ。
誰かの言葉が彼女を少しずつ満たし、癒やしていく。けして強い言葉が連なっているわけではないのに力強さを感じるのは、そこにカナミさんの折れてしまった心が接ぎなおされていく、確かな予感があるからなのですよね。
この作品をひと言で表すなら「情け」。読めばきっとあなたの心にも標の灯火が見えるはず。
(「“今”に潜むあやかしども」4選/文=髙橋剛)