雨の音さえあれば~永遠の森

読んでいた本のページに

うっすらと翳が落ちた

雨が降り始めたらしい


埋め立て地の荒涼の中で

生き抜いてきた野犬が

毒を喰らって死んだ話だった


ここは

文化的で清潔で闇を嫌う光の国

暗い野性の森から迷い込んできた

荒々しいものが棲む余地などない



雨の音が激しくなってきた


重く湿った心の扉の向こう

雨音のトンネルを抜けると

暗い森の入口だった


そこには

硬直して横たわる犬がいた


雨がやさしく降り注ぐ


毒を洗い流すかのように

時を洗い流すかのように


やがて

森の奥の方から

日が射してきて

その光に導かれるように

犬は頭をもたげた


異次元の雨が

静かに降っていた


https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/822139839843971952

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