黒い森の蝶

月が空に溶け始めるころ

黒い森に朝露が降る


そびえ立つ針葉樹の

樹齢の香りをまとい

月の雫をピアスとして

夜の使者然とした

黒いアゲハが舞う

朝の風は厳かに冷たい


夢の果ての緯度は高く

昇る太陽は低く

樹々の影は長い


森の陰を縫って

飛ぶ蝶の軽やかさ

それは

絹のレースのように薄い

翅のせいではなく

ディレッタントな月が

創造した

ただの美しい影だから

なのかもしれない


https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/16818792437747946578

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