本作は、独特な村社会の中における弊害と、大切に残したい伝統を切り分けて描かれている。過疎化・少子化に喘ぎながらも、僅かな既得権益に愉悦感を覚えて離れられない人々。村独自の伝統や良さを感じている主人公。こうした対立は、一家の運命をも翻弄してきた。そうした過去かえあの因習に対して、お盆に墓前に供える「松明かし」を焚いた香りと、「供花のカサブランカ」の香りが静かに包み込むのです。
著者様の魅力が凝縮した作品だと思います。視線が温かでいて、それでいて善悪を含めた広いところに平等に開かれている。また、自然の体温を捉えるような、そんな澄んだ感性も行間から感じられ、ままならない生が、複合的に描かれています。「縁側のカサブランカ」。そのタイトルが、最後に深い余韻を残す作品だと思います。