第12話

理科は、学校のプールサイドに立ち、深呼吸をしながら水面を見つめていた。高校の水泳大会まであと数日と迫り、緊張と期待が交錯する中で、彼女の心は落ち着かない。プールの青い水面が、彼女の心の中の不安を映し出しているようだった。


「理科、準備はいい?」古琴の声が、理科の背後から響いた。


理科は振り返り、古琴が笑顔で立っているのを見た。「うん、なんとか。でも、少し緊張してる。」


古琴は、理科の肩に軽く手を置き、優しく言った。「大会はただの通過点だよ。大事なのは、自分のベストを尽くすこと。」


理科は頷き、再びプールに目を戻した。


その時、白崎がプールサイドに現れた。「理科、今日の練習もいい感じだったね。大会の準備は順調?」


「ありがとうございます、白崎先生。」理科は少し緊張しながら答えた。「大会に向けて、もっと頑張らないと。」


白崎は微笑んで頷いた。「君の実力は十分にある。あとは自分を信じて、全力を尽くすこと。」


古琴は白崎に向かって軽くお辞儀をし、「理科のことをよろしくお願いします。彼女は本当に努力家ですから。」と付け加えた。


白崎はそれに応え、「もちろん。大会での結果がどうであれ、君の努力は必ず実を結ぶよ。」


その言葉に励まされ、理科は胸を張った。プールの端に向かい、ウォーミングアップを始める前に、もう一度深呼吸をした。今はただ目の前の大会に集中することに決めた。


理科が水に入ると、冷たい水が彼女の体を包み込み、緊張を少しずつ和らげていった。水面の上でリズムよく泳ぐのだった。

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