第39話
春の花が舞う宮廷の庭は華やかな装いの者達で賑わっていた。
その中でも一際注目されているのが華陽だった。
ふふ、みんな私を羨んでいるのね。
華陽は口元に浮かんだ笑みを扇でそっと隠す。
それもそのはず、華陽の隣にはこの世の誰よりも麗しい男が立っている。
この国で二番目に尊い身分、偉大なる竜神の加護を持ち、その容姿はまるで見る者を惑わす美しさだ。
珍しい青銀色の長い髪が日の光でキラキラと輝き、より神々しく見える。
「お茶会は楽しまれていますか?」
優しく微笑み、華陽に問う露火はそれだけで周囲を魅了した。
華陽もたったその一言で露火に魅入ってしまい、上手く答えることができないほどだ。
「あちらに席を用意してあります。こちらは日差しが強いですから」
「は、はい……お気遣いありがとうございます。殿下」
露火の言葉に周囲が一気にざわめく。
露火がこのような振舞をするのはとても珍しいようで、周囲が騒然とするのが分かる。
同時に女性達からの嫉妬の声も上がり、華陽は優越感で堪らなくなる。
婚約者になるのだから、これくらいの気遣いは当然だ。
「私は仕事があるのでこれで。本日は余興で楽師たちも呼びました。ゆっくり楽しんで下さい」
普段はない宮廷楽師たちの登場に周りは一層、騒ぎ立てる。
「やはりあの噂は本当だったのか」
「竜王が女性にあのような振舞をするなど、見たことがないぞ」
「桜家の研磨姫を竜王が見初めたということだな」
周囲から聞こえてくる驚きの声に華陽は胸を高揚させた。
華陽がいかに特別な存在であるかを周囲が認知し始めたのである。
「宮に女を囲っているという噂もあるが……」
「所詮は噂だろう。女性に見向きもしなかった竜王が桜家の娘を気遣い、茶の席まで用意し、楽しませるために楽師まで手配したのだぞ。そんな噂話、すぐに消えてなくなるだろう」
「その通りだ。国随一の研磨姫だぞ。そこらの女と訳が違う」
女がいたとしても華陽には勝てないと周囲が断言する。
その通りよ。
この私が婚約者なんだから、他に女の存在なんてすぐに忘れるわ。
華陽は露火が用意してくれた席に移動して座り心地の良い椅子に座った。
天幕のあるその席は春の強い日差しを遮り、心地よい風が入り込む場所でとても快適だった。
疲れた足を休めながら、給仕が淹れたお茶を受け取る。
「竜王殿下からお嬢様に、と」
そう言って出された沢山のお菓子や果物はどれも絶品だった。
露火の寵愛を受ける華陽を同じ年頃の女性達が妬ましそうに見つめていると分かると快感だった。
ふふ、羨ましいでしょう、私のことが。
あんた達には味わえない幸福を私はこれから一生味わって生きるのよ。
かつて華陽を見下して来た女達に向かって華陽は鼻を鳴らした。
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