第36話 海で机を作る話 その2


「そして、この作ったA型フレームで支える机の天板を作る。"井"の形をした木の枠を作るイメージだな」


 水のロープで各所を縛る、これを上手いことA型フレームに噛ませる。


 一つ二つ、天板に差し込み、外側に広げるとーー。



「あ、凄い立った!」 


 その通り。

「ふふふふ、あとはこの天板の上に適当な数の木の棒を置いていけばだね……完成だ」



 出来上がり。

 なんと言う事でしょう。

 燃やすくらいしか使い道がなかった筈の枝が立派なるミニテーブルに!



「お、おお〜〜!! す、凄い、こ、こんなに簡単に枝で小物が作れるんだ……! ……なんか、扱われた魔術の意味不明さと比べると凄く些細なものの気がするけど……」


「ふっ、この調子でA型フレームを量産するとだな! なんと、簡単な椅子まで作れる! 凄いぞ、A型フレーム……!」



 あっという間に、浜には手作りブッシュクラフトのテーブル&イスが出来上がる。


 ふふふ、この入江をいい感じのリゾート拠点にする日も遠くないぞ……!



「お、おお……凄い、きちんと机だし、きちんと椅子だ……ちょっと背中痛いけど」



 A型フレームを背もたれにしたイスに座るクリム君。


 ふふふ、確かにこのままだとささくれやらなんやらで身体を傷付ける可能性もある。



「だが、問題ない」


「え?」



 ばしゃり。

 はい、海にin。

 一瞬だけ、竜化。

 からの鱗と皮を切り剥がす。



「よし、これをカバーにしよう」


「えっ」


 目をキョロキョロさせるクリム君を横に、私は机や椅子のサイズに合わせて鱗皮をカバーにしていく。


 おお! いいんじゃないか!?

 青と白のデザインも申し分ないよ、キミィ!



「え、分からない、私。なんで海に潜ったんですか、なんで竜の素材を持ってるんですか? なんで??」


 また口をぱくぱくしているクリム君には申し訳ないが、これは社外秘だ。

 教えてあげる事は出来ないね。



「ふむ……良い感じだな……」



「あの、私、一つ思った事があるんですが……」


「む、何かね? A型フレームの作り方か? それならきちんと君にも教えてーー」


「いえ、それも気になるのですが、えっと、サキシマさんのその、水鱗生成、ですっけ。それって、そのう……固形化も出来て変形も出来るんですよね?」


「ああ、ロープ状の形にまで変化させる事に成功したぞ」


「……そして、手を離れた後も、特にその形を維持するのにコストは掛からない?」


「む、今の所は特に問題ないな。この前作ったクッションとパラソルもほら、この通り。ふわふわだ、使うかい?」


「あ、ありがとうございます、ほんとだ、ふわふわ……じゃなくて!!」


「うお」


「これ!! これとこれ! 机と椅子!! これ、もしかしなくても、その水鱗生成で作れるのでは!?」


「……………………おお」


 本当だ……。


 ああ〜本当だあ〜。


 作れるうううううう〜。


「あ、ああ、サキシマさんが崩れ落ちちゃった……! ち、違うんです! べ、別にこれがおかしいとかじゃなくて、何か理由があるのかなと」


「ふっ、私とした事がはしゃいでしまっていたようだ……確かに、これでは効率が悪い。悪かったな、クリム君、しょうもない事に時間を使わせてしまった」


「ああああ、違う、私、そんなつもりじゃ!! ああ、いつもこうなんです! 私、燃焼系魔術と人を落ち込ませる事しか才能がない!!」


「ふ……自分の才能を理解しているのは良い事だ、気にする――」



 ぐううううううううううううううう。


「あ……」

「え……?」



 大きな音がした。

 クリム君の薄いお腹の方から。


「…………えへ、そういえば、私、漂流してから、何も、食べてないかも」


「確かに!! すまない、すっかり忘れていた!」


「さ、サキシマさん、そんな、悪いですよう、ふふふふ、お腹が鳴った瞬間になんか空腹感が……」


「すぐに、魚を――」


「私、おさかな、食べられないんです、体質で……」


「嘘だろ!?」


 じゃ、じゃあ、森に行って何かを採るか?

 駄目だ、知識がない。


 おいおいおい、40代のおじさんとして若者を餓死させるなどありえないぞ。


 考えろ、サキシマ。お前ならできる――。


《あー、ちょっといいかァ? サキシマ》


「その声、我が神か!!」


《おおう、なんでお前そんなに信仰値高いんだよ……まあいいや、ちょうどいい、実はお前に良い話があってなあ》


「良い話? 我が神、すまないが、今は急遽出来た同居人が急遽空腹で倒れていてね。火急の事態で――」


《ネットショッピングってスキルに興味ないかァ?》


「あります」





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