第34話 森の奥の声
「いや!! ですから! それです! さっきの! どう、やった、ん、です、か!!」
「ん? ふ、ふふふ、一体何のことだね」
言いながら俺はまたクリエイトウォーターを使用。
クリム君がくりくりの目をさらに大きく広げる。
「ンギャァ!! やっぱり無詠唱魔術使ってるううう!! な、それ、神話の技術……!! り、竜の使いって無詠唱魔術まで使えるの!?」
「ふふふ、俺、もしかしてまた何かやっちゃいました?」
「急に俺とか言い始めた!! さ、サキシマさん、それ、どうやってやってるんですか!? 誰に教わったんですか!?」
クリム君がぐいぐい、私に迫ってくる。
んふふふふふ、この異世界あるある、本当に起きるものなのだな。
「キミは良い奴だな……」
「ええ!? なんで急にそんな慈愛の表情を!? じゃなくて!! えっと、サキシマさん、その無詠唱魔術!!」
「ああ、これか。えっと、なんだったかな……」
『要はイメージだ。お前のそれは理論や自我によって現実を侵す魔術じゃない。自身の感覚によって新たな法を創る魔法だ。イメージしろ、水を。お前にとっての水のイメージ、ちょうどいま、でけえ水たまりに浸かってるだろ』
ふと、ゼウスの言葉を思い出す。
そうそう、確かこんな事を言っていたな。
私はそのままゼウスの言葉をクリムに伝える。
「い、イメージ??? それだけで? ああ……頭痛がしてきました、お姉ちゃ――天才に物事を教えてもらうの辛いです……」
「この前助けた魔術師、ルートは無詠唱の部分には引っ掛かってなかったぞ」
「あー、ルートさんと私は同じ魔術師でも、こう、専門が違うというか……。彼女は呪文、魔術自体にはあまり関心はないんです、それよりもこう、モンスターとか、未知の環境とかの調査や研究が主でして」
「なるほど。ではちょうど、私の水魔法は君の研究分野だったという訳だ」
「はい……え? 魔法?」
「ん? ああ、水属性魔法」
クリム君がきょとんとした顔で私を見つめる。
表情豊かで感情的だった為、わかりにくいが、人形のような美少女だな。
成長すればとんでもない美人になるだろう。
う~ん、やっぱ家に帰した方がいい気が――。
「マホウ、ってなんですか?」
「……む」
おっと、異世界あるあるその2が急に来たな。
なるほど、この世界で魔術師である彼女がこんな反応をするんだ。
この世界、魔術と魔法が別物か、魔法を魔術と呼称するか、どちらかのパターンだな。
む、どうしたものか……別に隠す必要はないものな気もするが……。
「サキシマさん? ど、どうしたんですか、急に、黙って、すこし、顔、怖い……え、私、捨てられる????」
「え? ああ、違う違う……えっと、無詠唱魔術だったね。実はさっき教えたやり方、私もある人に教えられたものなんだ。また今度話す機会があれば、コツを聞いておくよ」
「へ、へえ~そ、そうなんですね。えっと、私、捨てられない? うざくなったらすぐに言って下さいね? あ、それとも何か焼きましょうか?」
「おっと、ふふふ、君、引き金どこにあるかわからないから怖いな」
ウンディーネちゃんの資材回収もかなり纏まってきたな。
作業自体は、浜でやるのがいいだろう。
この森は……なんというか。
「ここ、不思議な場所ですね……魔力がほかの場所よりとても濃くて……。とても興味深いです……」
「もう少し準備が進めば、ここを開拓するのもありかもな」
「それ、楽しそうですね!! ぐふふふ、労働時間の設定されていない自分の為の労働……自分の生活を向上させるための仕事……本来人間の労働とはこうあるべきですよね!」
「君、なかなか苦労していたんだな……」
「え? もしかして、口に出てましたか? えへへ、でも、なんか今、私、すごくラ楽しくて!! あ! そうだ、サキシマさん、もし良ければこのままいっそ 森の調査を進めませんか!?」
「え?」
「私! 実はフィールドワーク得意でいろいろな素材を見つけるのが特技なんです! 冒険者ギルドにも登録してて、ふふふ、冒険者登録して半年でA級冒険者にもなってたり、いや、別に自慢してる訳じゃないんです! でもね、ふふん、こう、サキシマさんの安全は任せてもらってもいいかなって――」
クリム君が自分の鼻をこすりながら笑う、その時だった。
『げえええええええええええええええええええええmぼええええええええええええええええええええええええええええええええ』
『おんぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、むみぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい』
「ごぼぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、ぶびいいいいいいいいいいいいいいいい』
バサバサ。
一斉に森から鳥達が飛び立った。
森全体が怯えているようだ。
森の奥に、何かいるようだ。
「……」
「……クリム君」
「はい」
「とりあえず、浜に帰ろうか」
「はい」
『ちゅぷ』
そういう事に、なった。
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