短編パパ集
田中
まで親友じゃないから
「なんだやねん。まだどこだ、」
野球玉は練習で使い、その度砂が付いて、洗っても落ちずにまるでこんがり黄ばんで、そうなるともう捨てられる。
三年の先輩は「いつまもやごとさ」「別れが四週に一度、それを二年だ。」「涙は出ん。」
二年の先輩は「すぐなれや。」「慣れとじゃら。」「こんなに清楚なあんたも、三週間後は泣けなんぞ。」
そう聞きたワラは、思うことは「なんも、捨てるまでしなさんでも。」なんだ。
「今日は生ゴミの日だから急げんだ」と渡されたビニール袋に、中身は黄ばんだボール21個と入部からの友達の野球玉1つ。
「全部捨てろん。」
タイミングは最悪で収集車の驚いた音だ。
盗塁ゼロのワラは走り出す。
間に合うとしたら別れ話、間に合わないと怒鳴り叱られる。
どちらも嫌いです。
収集車は出発までしてないが、もうすぐここを離れていく。
悩んだワラに聞こえてきたのは薄い声。
「..最後に投球しましょうか..」
このとき初めてワラは、友達は喋るボールなんと知った。
ビニール袋から友達を取り出して、黄ばんだ縫い目にキスをする。
「すまない。でもありがとうに。」
ワラは収集車の出発まで投げ構えた。
別れ話じゃなかった。
運ばれる友達に、ワラの帽子を振る。振って、振って、すぐ曲がり角で収集車は見えなくなる。
姿は見えなくなってもまだ影が残っていた。
なら、収集車の影が消えるまで友達に帽子を振ったらどうだろう。
ワラは練習に戻ろうとしたが、1つ問題があった。
「全部捨てろ」と言って早十分、怒鳴り叱られることは間違いなく。
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