第16話
目が覚めた。天井が見える。上体を起こして、周りを見渡す。
俺の部屋。ベットで寝ていたのか。
……あれは夢だったのか。いや、あんなに鮮明な夢はあり得ない。て事はあれは事実。それじゃ、俺はなんで家に居るんだ。
朱里。朱里はどうしたんだ?あのままの状態だったら一生を目を覚まさない。早く、イリーガルエリアに行って、朱里を修正しないと。
トントンとドアを叩く音する。
誰だ。母さんか、父さんか。でも、あの二人は居ないはず。じゃあ、誰だ。
「返事してよ。入るよ」
女性の声が聞こえる。聞き馴染みのある声。……朱里の声だ。でも、どうしてだ。
「ど、どうぞ」
俺は恐る恐る返事をした。
ドアが開いた。そして、朱里が部屋の中に入って来た。
「……朱里」
たしかに目の前に居るのは朱里だ。額に穴は開いていない。
でも、なんでだ。もしかして、奇跡でも起こったのか。
「やっと起きた。朝ごはん出来てるから早く食べて」
「お、おう」
「明日は作ってよね。お兄ちゃん」
「……お兄ちゃん?」
どう言う事だ。何かの冗談か。俺と朱里は兄弟じゃない。血の繋がりなんてない。幼馴染だ。
それに朱里は冗談でもこんな事は言わないはず。
「寝ぼけてるの?」
「いや、寝ぼけてるのは朱里の方だろ」
「ふざけないでよ。お兄ちゃんの方が寝ぼけてるんでしょ」
「……いや、そんな事ないよ。俺の知ってる朱里は幼馴染だ」
「変な夢見たの?私は正真正銘お兄ちゃんの妹の門田朱里よ」
「……門田朱里」
訳が分からない。朱里の苗字は木場だ。門田は俺の苗字。何か変だ。いや、確実に変だ。
「そうよ。門田朱里」
「木場じゃなくてか?」
「木場?どちら様?」
「だ、誰だ。お前は誰なんだ。俺の知ってる朱里じゃない」
「な、なんでそんな事言うの?」
朱里は泣き出した。
「ふざけるのはやめろよ。朱里は俺の幼馴染だ」
「気持ち悪い事言わないで。もうお兄ちゃんなんか大嫌い」
朱里はドアを壊れるんじゃないかと思うほどの力で閉めた。そして、足音がどんどん離れていくのが聞こえる。
……これは一体なんなんだ。ほ、本当に朱里は俺の妹なのか。いや、そんな事ない。朱里は幼馴染だ。も、もしかして、俺は変な夢を見ているのか。
夢を見ているのかを確かめる為に自分の頬をおもいっきりつねった。
「痛い」
痛みを感じる。それは夢じゃない証拠。と言う事はこれは現実。でも、納得できない。今までの朱里との関係が変わってる。……ちょっと待てよ。朱里との関係が修正されているんじゃないか。それだったらこの状況が理解できる。
それじゃ、この状況を修正すればいいんだ。そうすれば朱里は幼馴染の朱里に戻るはず。
朱里との関係を兄弟から幼馴染に修正。
――――修正中――――
「あ、頭が痛い」
激しい頭痛がする。その痛みは頭を潰すんじゃないかと思う程に強烈な痛みだ。
耐えられない。耐える事なんてできない。
視界が暗くなっていく。意識がどんどん薄れていく。どうなるんだ。俺はどうなるんだ。
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