第14話

14時10分。

 オカルトショップ「もののけ」の傍に着いた。野次馬が大勢居る。店の前には立ち入り禁止のテープが貼れている。中では創護社の人達が捜査をしている。

 立ち入り禁止テープ前で立っている創護社の人の所へ行く。

「テイルダイバーの巌谷賢です。入ってもいいですか?」

「巌谷君か。どうぞ。入って」

 創護社の人はよく挨拶する人だ。他の課だから名前は知らないが。

「ありがとうございます」

 僕は立ち入り禁止テープを潜って、オカルトショップ「もののけ」の店内に入る。

 店内は荒らされ、商品が破壊されていたり、床に落ちていたりしている。

 部屋の中央では「もののけ」と書かれたTシャツを着ている眼鏡を掛けた華奢な男性が創護社の人と話していた。

 僕はその眼鏡を掛けた華奢な男性のもとへ行く。

「すみません」

「巌谷君か。こちらがこの店の店長・上田石燕(うえだせきえん)さんだ」

 眼鏡を掛けた華奢な男性と話していた創護社の人が説明してくれた。

「上田石燕です」

「僕はテイルダイバーの巌谷賢と申します。お話をお伺いしてもよろしいですか?」

「えぇ。百鬼夜行絵巻を取り戻してくれるなら」

「……はい。取り戻してみせます」

「ありがとう」

「犯人を直に見ましたか?」

「見ました。正確に言えば犯人達です。金髪の短髪とチンピラの男達を見ました」

「そうですか。監視カメラは見れますか」

 ほぼ100パーセント、丹波とその手下達だろう。だとすると、色々と面倒だな。黒現具で、

百鬼夜行絵巻で出てくる妖怪達を黒現化されたら。

「はい。こちらへ」

 上田さんに案内されて、事務所へ向かう。

 想蘇祭初日にこんな事されると大変だろうな。この期間はどこの店も稼ぎ時なのに。

 上田さんは事務所のドアを開けて、中に入って行く。

 僕も事務所に入る。

 事務所内には監視カメラのモニターや店に並んでいる商品の在庫などが置かれている。

「ちょっと待ってください。表示しますので」

「すいません。お願いします」

 上田さんは監視カメラのモニター前にあるマウスを操作している。

「これです。見てください」

「ありがとうございます」

 監視カメラには店内で暴れる丹波とその手下達が映っていた。

 これで確定した。この事件にはアウトリュコスが絡んでいる。そして、百鬼夜行絵巻を悪用する事も。


 15時30分。

 創護社に戻り、テイルダイバー司令室に向かっている。

 いつ、次の事件が起こるのだろうか。心配で仕方が無い。もう休みたいなんて言ってられない。

 テイルダイバー指令室のドアが自動で開く。

 僕はテイルダイバー指令室の中に入り、影草さんのもとへ行く。

「巌谷です。報告に来ました」

「どうだったの?」

 影草さんは険しい顔をしている。

「丹波とその手下達が百鬼夜行絵巻を盗みました」

「アウトリュコスが絡んでいる、か。困ったわね」

「……はい」

「ありがとう。今からになっちゃんだけど、休憩に入って」

「分かりました」

「ごめんね。無理言って」

「いいえ。大丈夫です。でも、僕からも一つ言ってもいいですか」

「えぇ、言っていいわよ」

「影草さんもちゃんと休んでくださいね。影草さんの代わりはいないんですから」

 影草さんと同じ役職の人達、もしくもはそれ以上の役職の人達が街に居ない。だから、影草さんに何かあれば大変な事になってしまう。簡単に言えば、状況を把握して指示を出せる人間が居なくなってしまうのだ。それだけはあってはいけない。

「……ありがとう。休める時に休んでおく」

「はい。それじゃ、何かあったら呼んでください」

「お願いするわ」

「じゃあ、失礼します」

 僕は影草さんに一礼して、テイルダイバー司令室をあとにした。

 

 19時20分。

 創護社の食堂でご飯を食べ終えて、休憩室でソファに座って、休憩していた。

 休憩室には飲料水やカップラーメンやお菓子の自販機が置かれている。創護社に所属する人間はただで利用できる。

 雑誌やテレビやコンピュータが置かれており、時間を潰せる。さらにマッサージチェアまであり疲れを取ることもできる。

 休憩室のドアが開く。

 僕はドアの方に視線を向ける。外から中に入って来たのは莉乃姉だった。

 莉乃姉は僕を見つけて、ニッコリと笑う。その後、怒られないぐらいの速度で駆け寄って来て、隣に座った。

「お疲れだね」

「まぁね。莉乃姉はもののけに行ったの?」

「うん。行ったよ。賢ちゃんとは入れ違いだったけど。壊れた物の修繕をしていたの」

 莉乃姉の神繕筆(しんぜんひつ)の能力は筆で触れたものを修繕すると言うもの。だから、店内の破壊されたものを直していたのだろう。僕には出来ない事だ。

「そっか。それなら莉乃姉の方がお疲れだね。お疲れ様」

「それはどうも」

「初日でこれだから、最終日に恐ろしい事が起こらないか不安になるね」

 事件がエスカレートする可能性は大いにある。

「だね。頼むからこの事件を早く解決したいよ」

「その通りだね」

 突然、サイレンが鳴り出した。そして、警告ランプが鳴る。

「創護社内に居るテイルダイバーは至急テイルダイバー司令室に来てください。繰り返します。

創護社内に居るテイルダイバーは至急テイルダイバー司令室に来てください」

 女性オペレーターのアナウンスが聞こえる。

「事件か」

 きっと、アウトリュコスが起こした事件だろう。

「行こう。賢ちゃん」

 僕は頷いた。そして、僕と莉乃姉はソファから立ち上がり、休憩室を出て、テイルダイバー指令室に向かう。

 僕と莉乃姉は階段を上って、テイルダイバー司令室がある10階へ向かって行く。

 10階に着いた。僕らはテイルダイバー司令室の前に行く。

 テイルダイバー司令室のドアが自動で開く。

 僕と莉乃姉はテイルダイバー司令室の中に入った。

 テイルダイバー司令室の中には影草さんと女性オペレーター達と錦木兄弟が居る。

 僕と莉乃姉は影草さんのもとへ行く。

「事件ですか?」

 僕は影草さんに訊ねた。

「えぇ。北エリアから中央エリアへ妖怪達が列を作って向かって来てるわ」

「それって」

 もののけで盗まれた百鬼夜行絵巻に出てくる妖怪が黒現化している可能性がある。

「盗まれた百鬼夜行絵巻が黒改され、絵巻に出てくる妖怪達が黒現化していると思われるわ。パトロール中のメンバーが中央エリアに入るのを塞ぐ為にフリーノートを構えて待機しているから貴方達は百鬼夜行絵巻を所持している者から百鬼夜行絵巻を取り返して、正常化させて」

「了解しました」

 僕らは返事をした。

「頼んだわ」

 僕らは影草さんに一礼して、テイルダイバー司令室を出て、北エリアに向かう。

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