第20話
一週間が経った。
キアラのテレビでのお願いと他の宣伝のおかげでチケットが800枚程売れた。宣伝の効果は思った以上に出た。それにあの一回のテレビ出演のおかげでファンクラブまで発足したらしい。チケットが完売するのも時間の問題かもしれない。
キアラは今日から衣装を着て練習をする。
レッスンスタジオには音響、照明、衣装、美術、その他の部門のスタッフ達が居る。タイムスケジュールや当日の音出しのタイミングや照明の当てるタイミングや演出などを決めていく。その為、壁一面の鏡の前には長テーブルが置かれて、その前の椅子に各スタッフ達が座っている。そして、その中央に居座っているのが僕。ライブの全スタッフの統括及び演出を任されてしまったせいでだ。最初、フギンに言われた時は驚いた。だって、僕はマネージャーだぞ。管轄外で断ろうとしたが、人間界のアイドルのライブみたいにしたいから適任は仁哉君しかいない。そう言われ丸め込まれた。
レッスンスタジオのドアが開き、ブラウンとベージュのタータンチェックの衣装を身に纏ったキアラが中に入って来た。
衣装の着替えの時間も考えないといけないな。何人のスタッフが居ればスムーズに着替えられるだろう。結構これで暗転の長さとかが変わってくるしな。
「よ、よろしくお願いします」
キアラはスタッフ達に挨拶をした。
スタッフ達も各々「おねがいします」と挨拶を返した。
「キアラ・リュッツイのマネージャーをしています。真音仁哉です。今日からライブ本番に向けて頑張っていきましょう。何かアイデアがあれば言ってください。よろしくお願いします。それでは始めて行きましょう」
僕は椅子から立ち上がって、言った。
スタッフ達は拍手で返事をした。
「まず最初は板付きでスタンバイ。様々な色のライトをキアラに当てる。そして、全ての色のライトがキアラに集まる。集まった瞬間に曲を流して、明転でいきましょう」
スタッフ達が進行表に演出内容を書いていく。
「ライトの色は赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色でよろしいでしょうか?」
照明のスタッフがアイデアを出してくれた。
「いいですね。虹みたいで。最後に集まった7色が虹色になるとかって出来ます。魔法とかで」
「大丈夫ですよ」
「それじゃ、それでお願いします」
「了解です」
「じゃあ、キアラ一回歌はなしでいいから踊ってみて」
「うん。いや、はい。でも、出来れば歌ってみたいです。人前でまだ歌って踊ってないので、少しでも早く慣れたいので」
キアラは自分の意見をちゃんと言った。それに二人の時じゃないから気をつけて敬語も
使っている。集中出来ているな。
「分かりました。それでは歌ありでダンスをお願いします。ですが、ミスっても止めないで」
「はい」
「それじゃ、音をお願いします」
「了解です。音流します」
音響スタッフが機材でオープニング曲を流す。オープニング曲がレッスンスタジオ中に鳴り響く。
キアラはダンスをしながら歌う。
声は緊張からか震えているがやはり上手い。ダンスも最初は人前に立ってないレベルだったが今ならいつでも人前に立っても大丈夫なレベルにまで来ている。あの短期間でよくここまで成長したと思う。それはキアラの努力の成果だ。見ていて、泣きそうになってしまった。でも、まだ泣くのは早い。本番が終わるまでは泣くのはお預けだ。それにキアラの前では泣きたくないし。
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