獣人解放編

第24話 更なる安全対策

 「ディグレン!頼む!」


 「任せろ!」


 素早い動きで木々の間を軽々と動き回るディグレンさんとヤレンさんは、現在拠点から結構離れた原始の森で猪の魔物と対戦中。


 戦闘力の高い銀狼族の力を思う存分発揮してるって感じなんだ!


 それに、二人は父さんと俺が作成した魔剣、氷炎剣と雷豪剣も持っているからなぁ。


 こうやって実際の戦闘をみると、流石に過剰だったか?と思ったけど、作るのが楽しかったからなぁ。


 んでもって、ヤレンさんやディグレンさんも長さや軽さにこだわってそれぞれが手に馴染むように何度も調整したから、威力が凄い剣が出来上がってしまったというわけ。


 まぁ、誰だって夢中になると、止め時ってわかんなくなるよな?


 っと誰かに向かって言い訳していると、どうやら辺りにいる魔物は全て駆除し終わったらしい。


 二人の見事な連携と戦い振りに、見守っていた凛と爺ちゃんは思わず拍手喝采。


「凄い、凄い!あの数の猪全部倒しちゃったよ!」


「うむ、見事!身体も順調に回復してきたし、洸の作った剣と俊足の靴に馴染んだようだな」


 二人が褒めまくる中、俺はというと……後ろが気になって仕方なかったんだよ。


 何を気にして居るんだって思うだろ?


 「源ちゃ〜ん!そろそろ戻っておいで〜!帰るよー!」


  凛が呼ぶその先にいる我が家の愛犬、源の事なんだよ。当の本人?は「ワン!」っと元気よく返事をして戻って来たけどさ。


 段々近づいて見えてきたのは、あちこちに魔物の返り血を浴びた源の姿。

 

 「わあー、源ちゃん頑張ったね〜!」


 そんな状態の源を、大きなタオルを広げてパフっと包み込む凛。


 勿論、そのタオルだって普通のタオルじゃないぜ。常時浄化と消臭付与しているから、タオルで拭くだけで綺麗になるって寸法だ!


 「うりゃうりゃ」


 凛に黙って身体中を拭かれている源は、この瞬間も好きらしい。大人しくされるがままだ。


「うん!これでいつもの源ちゃんに戻ったね!」


「わふ」


 嬉しそうに尻尾を振って答える源。これだけ見れば、ただの可愛い柴犬なんだよなぁ……


「爺ちゃん……」


「言うな、洸。我が家の番犬は優秀だが、片付けはできん。行くぞ」


「うええええ……あの量をかぁ……!」


 最近土魔法をかなり駆使出来るようになった源は、俺の[攻撃無効]の付与に加えて[浮遊]付与が着いたベストも着ているもんだから、狩りが楽しくて仕方ないみたいなんだ。


 元々犬って狩猟本能があるって聞いてはいたけど、源もこっちに来て開花したみたいだな。


 諦めて、へっへっへと舌を出して満足そうな源の頭を撫でて、飼い主の務めを果たしに行くと、死んだ魔物がいるわいるわ。


「こりゃ、大漁だな」


「爺ちゃん、急ごうぜ。この血でまた魔物が寄ってきそうだ」


「ん?洸、この辺は大丈夫そうだぞ」


 あ、そういや爺ちゃんに[探索]付与かけたんだっけ。


「んなら、ちゃっちゃと片付けようぜ」


 源が倒した猪やら熊やら鹿の魔物の数は広範囲に渡るんだ。源の奴、徐々にテリトリーを広げているんだよなぁ。オスの習性か?


 なんて考えながらも俺もフオンッと浮かび上がる。


 「洸も更に良いものを作りおったな」


 ガハハと笑って爺ちゃんも浮かび上がり俺に続く。


 へへっ、これも作ってみたかったんだよ。名付けて魔導キックボード!


 [浮遊]/[推進]/[速度調整]/[空気抵抗無効]/[結界]付与をして、何度も調整してできた逸品だぜ!


 改良型バイクを作るよりも簡単ですぐ出来るから、父さんはなんとなく複雑そうな顔していたけどさ。


 で、近隣を散策する時は魔導キックボードを使って、本格的に偵察に行く時は改良型バイクを使うって感じだな。


 自分で作っておいてなんだけど、めっちゃ便利なんだぜ!小回り効くし、移動が楽だしな!


 何よりマジックリュックに魔物を回収するだけだから、そんなに時間がかからずに後始末が終わったし!


「よっし!終了!爺ちゃん、そっちは?」


「こっちも良いぞ!」


 サラっと熊の魔物を追加して狩っていた爺ちゃん。……熊の顔がひでえ事になってるって事は、源泉地獄(顔に源泉の水球を被せて、窒息死させる)やったな……!うん、出て来た熊が悪いわ。


 これでまた色々作れるな!と、ホクホク顔の俺と爺ちゃんが凛達のところに戻ってくると、あっちも片付けが済んでいたみたいだな。


「コウ、流石だな。すごく動きやすいし、使い勝手が良い」


「確かに。移動速度がこんなにも増加するとは思ってなかったぞ。剣の方は勿論文句無しだ!」


 近づいて来た俺達を見て、笑顔で靴の具合を褒めてくれたヤレンさん。その隣でいたディグレンさんも剣を鞘に納めた後、笑顔で俺達を迎えてくれたんだ。


 この二人、あれ(24話)以来よく俺達に笑顔を見せるようになったんだよ。


 少し肩の荷が下りたんだろうな。……うん、良い事だ。


「お兄ちゃん、お父さん達そろそろ着いたかなぁ?」


 そう思っていたら、凛が心配そうに父さん達の事を聞いてきたんだけどさ。


 実は今、父さんはジャンさんを伴って街に先行移動してくれているんだ。


「どうだろうな?爺ちゃん、どんな感じ?」


「移動速度も順調だったからな。……お?街の近くまで行っているようだぞ」


「え、もう?」


 昨日の夜に出発したからそろそろだろうって思ってはいたけど、結構到着が早かったなぁ。


 あ、そうそう。爺ちゃんのスキルだけどさ。元々の地図能力に加えて俺の[探索]付与もかけたって言ったろ?だから、今は誰がどの辺にいるのかもわかるようになっているんだぜ。


 おかげで離れていても、わざわざ連絡取らずに確認が出来るから安心そのもの。


 「じゃあ、爺ちゃん。一旦拠点に戻るんだよな?」


 「ああ、そうだ。皆、拠点へ移動するぞ!」


  俺の確認にまとめ役の爺ちゃんが指示を出し、全員がすぐに移動を始めたんだけどさ。


 移動中チラッと左右を見ると……


 空中を走る魔導キックボード3台に、その横を余裕で並走する銀狼獣人二人、そして浮かびながら並走して走る柴犬の姿があるんだぜ?


 自分の付与魔法で作っておきながら、改めて異世界だよなぁ……ってしみじみ実感したよ。


 慣れって怖え、と密かに思いながら移動していると……拠点が見えて来て、魔導キックボードのスピードを緩めたんだ。


 そのままゆっくり拠点に近づいて行くと、突然「きゃあああああ!」と聞こえて来た母さんの声。


 あ、ここでハプニングが?!なんて期待した人には悪いが、おそらく違うと思うんだよ。


 ほら、また母さんが何かやってるのが見えるんだよなぁ……


「ケイトさん、最っ高!まさか蜘蛛の糸で布が作れるなんて!」


「ハルカさん……その、その前に大漁のシルクスパイダーの残骸なんとかしましょう?」


「あら?まあまあまあ……これじゃあバラバラ事件ね?じゃあ、ゴミ箱行きに——」


「あああああ!待って!ハルカさん!あの女王シルクスパイダーは全身が高級素材なの!」


「あら、まあ。なら一旦仕舞っておきましょ」


 さらっとマジックリュックに丸ごと女王シルクスパイダーを入れる母さんの姿に、ホッとした表情のケイトさん。


 辺りに山になった蜘蛛達の残骸がパッと消えたって事は、ゴミ箱に行ったんだろうな。


 何気に母さんも拠点を守る上で助けになっているけど……結構エグい光景だったぜ……。


 余りの光景に思わず全員整列して止まっていた俺達。


 でも、源が何かに気づいて走り出した事で母さんも俺達が帰って来た事を気付いたらしい。


「あら、源ちゃん。それみんなもお帰りなさい。って、あらあら」


 にっこり笑って俺達を迎えてくれる母さんの足元を、タタッと通りすぎてこちらに向かって来たのはトーニャ。


「ゲン———!」


「わうっ!」


 まるで久しぶりにあったかのように互いに飛びつく一人と一匹。


 トーニャはあれ以来、源がほんっとうにお気に入りなんだ。


 ぶっちゃけ、主人と認めた俺よりも源が好きなんじゃね?と疑う程だけど、その後必ず「コウ!」って気づいてくれるから良いんだけどさ。


「皆さんお疲れ様です」


 そんで、のんびり母さんの隣にいつもいる事が多いケイトさんは、みんなのフォロー役って感じなんだ。


 今だってバスケットに冷えたおしぼりと飲み物持ってみんなに渡してくれてんだぜ。


 よく居酒屋でおしぼりで顔を拭くサラリーマンの気持ちがわかるようになってしまった現役高校生の俺。


 だって気持ちいいし!俺、異世界でなら親父くさいって言われても良いや。


 なんて開き直った俺と全員が結界内に移動すると、母さんの携帯が鳴り出したんだけど———


「母さん、何気に日本で1番長い料理番組の曲に変えてたんか……」


「ふふ、これも良いわよね。料理したいって思うもの」


 そんなピアノの軽快な曲をプチッと切った後、母さんの携帯から聞こえて来たのは父さんの声。


『おーい、なんかあったか?出るのが遅かったが?』


……余計な会話で、心配性の父さんをどうやら不安にさせたらしい。


「繁さんなんでもないわ。そっちはどう?」


『街の見えるところまで来たぞ。今街道から少し外れた林の中に居るんだ。予定通りジャンを戻すぞ』


「はあい。こっちは準備オッケーよ」


 母さんがマジックリュックから転移付与したフラフープを地面に出して準備を整えると、シュンッとフラフープの円の中に現れたのはジャンさん。


「……やっぱりこれは凄いな……!」


 何度か経験していても慣れないんだろうなぁ。転移した後だけど、ジャンさんがまだ自分の手の平をニギニギしてる。


 そんなジャンさんに近づいて確認する俺。


「ジャンさん、これで心残りない?」


「ああ、村の現状を見れただけで満足だ。ありがとう、コウ」


 俺を見てにっこり笑うジャンさん。


 ジャンさんは一度村の様子を自分の目で見たいって事で父さんについて行ったんだけど、なんか吹っ切れたって感じだな。


 よっし、今度は俺達の番だ!


「じゃあ爺ちゃん、行こうぜ!」


「はいよ。洸、迷子にならないようについて来いよ」


「そんな子供じゃねえよ!」


 なんて言いながらもワクワクしていた俺。


 そうなんだ!今度は俺と爺ちゃんが父さんのところに転移して街を偵察する予定なんだぜ!


 フラフープ転移陣も改良したから、互いの場所に行き来出来るようになったからなぁ。これ結構便利なんだよ。


 あ、ちゃんと魔力認証した人じゃないと使えない設定にしたから、他人が間違って入り込む隙はないぞ?


 っておっと!凛が抱きついて来たよ。


「お兄ちゃん、凛もいけるようにしっかり見て来てね!」


「了解!」


可愛い妹が安全に街で過ごせるように、兄は頑張ってくるぞ!


「洸、無駄使いは駄目よ?」


「気をつけて行って来てくださいね?」


 凛の頭を撫でていると、母さんやケイトさんからも声をかけられて「大丈夫だって!」と答える俺。


 「土産を買ってくるからな」と凛や母さん達を見て片手をあげる爺ちゃん。


 「じゃあ、ちょっと行ってくる!」


 爺ちゃんが先にフラフープに魔力を流して転移した後、俺もみんなに声かけて後に続いて転移したんだけどさ。


 母さん、おやつは3百円までってどこの小学生だよ……



——————————


更新のお知らせ 


仕事の都合により、『自宅倉庫は』週二回更新とさせて頂きます。


基本的には月、金の更新です(予定変更もあります)。


ご迷惑をおかけしますが、これからもゆっくり進む坂木家もよろしくお願いいたします。

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