第2話 第一回坂木家家族会議
———という事で家族全員リビングに集まって俺と爺ちゃんから報告会。
「……まあ、そう言う訳で俺と洸にはこう言ったアクセサリーがついたんだが」
爺ちゃんがリビングテーブルの上に腕を乗せるタイミングで、俺も腕をテーブルの上に乗せる。
よくよくみると爺ちゃんのバングルにも俺のバングルにも読めない文字がびっしり記されている。
……多分、スキルの使用や倉庫の出入りの関係で必要なんだろうなぁ……
俺がぼーっとそんな事を考えていると、父さんと爺ちゃんが話し合いを進めていた。
「コレは俺や遥、凛もそうなるのか試してみてもいいな」
「まあ、繁はそう言うだろうと思っていたぞ。お前、好きだったもんなぁ。子供ん時から」
「当然だ!こんなん試したいに決まっているだろ!早速試してみたい!」
父さんがこんなにワクワクした顔をしているのは初めて見た俺と凛は驚いていたが、母さんは「ふふふ」って笑っていたからわかっていたんだなぁ。
「繁さんも私も、こういうワクワクするのは大好きよ」
俺の考えを読んだのか、母さんは俺と凛に笑って言ったんだ。普段おっとりとしている母さんや、仕事人間の父さんのまた新しい面を見た感じだ。
「おっしゃ!じゃあ遥、凛やってみるぞ!」
「ふふふ、楽しみねえ」
「大丈夫かなぁ」
早速、行動に移る両親とちょっと不安げな凛が庭に移り、試した結果がコレ。
シゲル・サカキ 42 男 人間
HP 3,000
MP 1,000,000
スキル 建築
ギフト アークレイブの扉
称号 次元神の加護
アイテム 次元神からの手紙
ハルカ・サカキ 41 女 人間
HP 2,000
MP 1,000,000
スキル 調理
ギフト アークレイブの扉
称号 次元神の加護
アイテム 次元神からの手紙
リン・サカキ 13 女 人間
HP 1,300
MP 1,000,000
スキル 植物魔法
ギフト アークレイブの扉
称号 次元神の加護
アイテム 次元神からの手紙
スキルが取得出来たのは勿論、バングルもみんなの腕にハマっていた。でも個体識別があるのか、父さんは青、母さんはオレンジ、凛は黄緑とそれぞれ異なっていたんだ。
そして、判明した事も多い。
実験の結果、全員地球ではスキルが使えず、そのかわり各自のスキルがバングルになっているらしい事(異世界に行くとバングルは消える)。
地球から物は持って行けるが、異世界から地球には持ち込みが出来ない事(入り口に木を持っていっても弾かれる)。
あ、元々地球の物でもあちらからは身につけている物以外持って帰れなかったんだ。何でだろうな?
そして、倉庫の向こうの異世界では、動物改め魔物がいるということ。コレは母さんのスキル調理が教えてくれたんだ。遠くのでかい動物が母さんのステータスボードにこう表示されたらしい。
『ビックレッドボア 強さ/Bランク
雑食で凶暴。角と毛皮が武器や防具に最適。
肉は美味』
……正直母さんが「お肉なのね!」と喜んだのは驚きだ。1番逃げ腰になると思っていたからなぁ。
そして、父さんが1番喜んだ事。それは———
「やっぱり一瞬で帰って来たわよ?」
「いや、待て。あっちで過ごしたのはかっきり1時間だぞ?なあ、親父」
「ああ、まあな。おかげで色々試せたからな。……しかし遥さん、本当に一瞬だったのかい?」
「爺ちゃん、本当だって!な、凛」
「うん。お父さんとお爺ちゃん、すぐ帰って来たんだよ?」
そう、あちらと地球では時間の進み方が違うって事だ。
1時間がほぼ一瞬だって事は、働いている父さんにとっては夢のような話。いわば、父さんの好きな事が出来る時間が増えたわけでーー
「うおおお!やった!コレぞ大人の休日!あっちでならやりたい事がガッツリ出来るんだな!」
「こりゃ、早くあちらの地盤を整えなければな」
父さんは俺たちの前なのに子供のように飛び跳ねて喜び、爺ちゃんも嬉しいのか腕組みしながらニヤニヤしている。
でも嬉しいのは俺と凛と母さんも一緒!夏休み中とはいえ、俺と凛は課題もあるし、友達と遊ぶ約束もあるし、母さんもパートがあるからな。地球時間は有限なんだ。
ハイタッチする俺と凛の様子に、そこはしっかり釘をさす爺ちゃん。
「喜ぶのは良いが、あちらで傷ついた傷は地球に戻って来ても治っておらん。どうやら命の危険はあちらが上だ。だからこそ洸と凛は、俺か遥さんか繁と一緒じゃなければあちらに行ってはならん!」
家長としての言葉に渋々頷く俺と凛。何せ小さい頃からの坂木家の教訓なんだ。家長に従順であれってね。
そして気になっていた『次元神からの手紙』には、みんな同じ内容が書かれていたらしい。
『坂木家の皆様へ
この度は次元の調整に巻き込んでしまい、ご迷惑をお掛けしております。その為、地球の坂木家倉庫とアークレイブの世界が繋がってしまい、現在倉庫とアークレイブ大森林の一部が強力な力で繋がっております。
次元の調整を直すには千年程必要となります。その間、坂木家の皆様にはゲートを守る為、アークレイブ側限定で皆様の能力を元にスキルを授けさせて頂きました。
因みにアークレイブの扉のギフトが無い者は、行き来は出来ないどころかただの倉庫に見えるだけです。坂木家限定のギフトとなります事をご理解下さい。
コレ以上の干渉が不可能な為、この場にてお詫びとさせて頂きます。願わくばアークレイブでの楽しいひと時をお過ごし下さい。
次元神 ジークレイド』
「意外に腰の低い神さんだな」
読み終わった後の父さんの感想にみんなが頷くも、母さんが裏に追記を見つけて読み出す。
『追記:万が一アークレイブで亡くなった場合は、地球でもそれまでの人生になりますので十分にお気をつけ下さい』
「あら、やっぱりそこはシビアなのねぇ」
「うーわぁ、やっぱり危険じゃん。安全地帯作るまでどうするよ?」
「あら?洸、珍しいわね。貴方が1番喜ぶと思っていたのに」
「命がかかっているなら別!ってか、母さんも意外に落ち着いているよな?」
「うふふ。だってね……」
母さん曰く、調理スキルの中には【解体】【鑑定】【無限冷蔵庫】【高性能魔導具コンロ】などがあるらしく、「お肉あっちでなら沢山食べても良いわよ〜」と呑気な発言をしていた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。私も植物使って守ってあげれるよ!」
俺の服の裾をチョンチョンと引っ張りながら、俺を守ると笑顔で言う可愛い妹。そんな凛に癒される一方で——
「大丈夫だ、洸。爺ちゃんの【掘削】と【源泉】使って魔物なんぞ茹でてやるさ」
「父さんだって、罠に生コンクリート流し込んで固めてやるさ」
ちょっとビビっていた俺の様子を見て、ニヤニヤしながら揶揄う二人。俺が珍しく弱気なのが面白いらしい。くっそぉ!見てろよ!
……とまあ、家族会議も終わり、用事がある母さん以外でアークレイブに行ってみる事にした俺達四人。
「お肉期待してるからねぇ〜」
そう言って婦人会の集まりに行った母さんに応えるべく、家中の物を引っ張り出して備える俺達。
父さんは会社の古い作業着に安全第一のヘルメットをつけて、リュックに水と着替えを持っていくらしい。
爺ちゃんは農作業の格好に麦わら帽子とおやつと下着と水をバックに詰めて、唯一残っていたクワを持っている。
凛と俺は、帽子を被りと長袖長ズボンとリュックにノートと筆記用具、下着を各自詰めている。あ、でも爺ちゃんに飲料も持てって言われたな。
そんなこんなで準備が整った俺達は、庭の倉庫前に集まり整列すると、父さんが最終確認をする。
「よーし、各自準備はいいな!」
「「はい!」」「おう」
「では、坂木家の拠点作りに出発!いくぞ!」
「「「おおー!」」」
———————————
ーお知らせー
明日から毎日更新ですが、6:45分に1話ずつとなります。
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