ヤマナカ

もう何年前のことになるだろうか?


その日僕は、かつて住んでいた町を車で通り抜けようとしていた。


喉が渇いたのでペットボトル飲料でも買おうと思い、馴染みだったスーパーに寄ってみた。


飲み物を吟味していると、店員さんに声を掛けられた。


振り返ると、一目で分かった。

井上さん(仮)だった。


運送会社で一緒に働いていたパート仲間の井上さん。


優しい声と優しい笑顔で、少しおっとりし過ぎの井上さん。


あまり話すことはできなかったが、声を掛けてくれたことが嬉しかった。


高身長はコンプレックスだが、この時ばかりはデカくて目立つ風貌をしていて良かったと思った。



今、あの奇跡的な再会を思い出す一方で、少し寂しくもなった。


井上さんは、今日もきっと優しい笑顔で周りを幸せにしているのだろう。


でも、そこに僕はいない。

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