巫女巫女バスターズ
夕日ゆうや
戦いのとき
シャランと神楽鈴が鳴る。
神楽舞いは正確に、そして丁寧に、お淑やかに行われる。
デモムービーが流れると、わたしはキャラメイキングに移る。
顔は小さく……身体は女子らしく、そして髪は長くしよう。
巫女服をアレンジしたメイド、巫女服の水着、巫女服の甲冑、巫女服のアリス、巫女服のナース、巫女服の魔女、巫女服のバニー、巫女服のチャイナ、巫女服の忍者、巫女服のポリス、巫女服のシスター、巫女服の花嫁。
様々な衣装があり目移りしちゃう。
巫女服のドレスを選択するといよいよ『巫女巫女バスターズ』が始まる。
AIを応用した完全対話型自立式VRMMORPG。そのゲームが2月14日金曜日、24:00に始まった。
チュートリアルを終えると、さっそくクエストを受注する。
そして実質ゲーム内通貨である巫女ポイントを貯めて、アイテムやスキル、アバターなどを購入できる。
わたしはワクワクした気持ちで中央広場を駆け抜けていく。
噴水の影にあるカップルに睨まれた気がする。
なんでだろ。
まあいいもん。
武器を強く握り西区にあるダンジョンを目指す。
ダンジョンは迷路のようにいり組んでいて簡単には攻略できないようになっている。
わたしは錫杖を揺らし一番簡単なダンジョンに入る。
目の前に敵影が見える。
人の子のような体躯をした緑色の体表の黄色い瞳――ゴブリンだ。
ゲームではありがちな雑魚キャラだ。
錫杖をかかげ詠唱を唱える。
「蒼き炎よ。遠雷に似た嘆きを聞きたまえ!」
錫杖の先端に集中する。
そこに蒼い炎の剣が顕現する。
「フレア・シュナイダー!!」
大降りのモーションのあと、錫杖に力をこめる。
「GYAAAAAA」
ゴブリンの断末魔を聞き届けると、あっという間にゴブリンのHPバーがゼロになる。
倒し終えると、巫女ポイントが手に入る。
「やった! これでレベルあげるかな」
手をかざしてステータス画面を開く。
「やった! レベルアップできる!」
ついガッツポーズをとる。
いけない。淑女らしく振る舞いたい。
「オホホ……」
うん。これも何か違う。
どう振る舞えばいいのか、真剣に考えこむ。
答えが見つからないまま、数分が過ぎる。
「GYAAA 」
またもゴブリンが現れる。
「む! しつこい!」
再び剣をほとばしらせ切りかかる。
絶命したゴブリンを見やり答えがでた。
「うん。わたしにはこっちが似合うかも」
剣を振り回しながら進撃する。
「オラオラオラー!」
ちっとも可愛くない声をあげる。
そうしてボス戦前まで辿り着く。
レベルもだいぶ上がり13になった。
15レベルでクラスチェンジができるらしい。
あと少しだ。
「このボスを倒せれば……」
ドーム状の広い空間にでた。
直径ニキロ。
高さ三キロ。
いくつか柱があり凍りついている。
つららが天井からぶら下がっていて、冷たい風を運ぶ。
床板には氷が張ってある。
ツルツルとしておりよく滑りそう。
慎重に前に進む。
と視界にWARNINGの文字が躍る。
推測二メートルの氷の龍が現れる。
アイス・ドラゴン。
それがやつの名前だ。
このダンジョンのラスボス。
戦闘開始から五分。
「フレア・キャノン」
発射された炎の弾丸はアイス・ドラゴンの表面を焼き焦がす。
だがダメージを受けた様子はない。
「どうやって倒すのよ!!」
わたしはアイス・ブレスの攻撃をかわすと、柱の裏に隠れる。
このままじゃ倒すことができない。
レベルの不足か、あるいは弱点ではないのか。
もしかして攻略方法が他にあるんじゃないか?
となると何かしらのギミックがある。
考えろ。
考えるんだ。
奴の弱点はなんだ。
氷のダンジョン――そうだ。
わたしは柱の陰から飛び出し、アイス・ドラゴンの頭上にある氷柱を狙い撃つ。
氷柱の根本を撃ち抜くと鋭利な氷柱が落ちていく。
落下した氷柱でアイス・ドラゴンがダメージを受ける。
「やった」
それを何度か繰り返しているとアイス・ドラゴンの皮膚を覆う鱗が完全に剥がれ落ちる。
鱗という重りを失ったのか、速度を増す。
空を縦横無尽に飛びたつアイス・ドラゴン。
「飛んだ」
氷柱はなぜか消えていた。
第二形態というところか。
わたしはフレア・キャノンを発射する。
どうどうと音を立ててアイス・ドラゴンにヒットする。
「おお。ダメージ入っている」
敵のHPバーは減っていく。
「いけるいける」
テンションの上がってきたわたしは柱の陰から攻撃をする。
アイス・ドラゴンが最後の力を振り絞って、全身を紅くする。
数倍の力を使いアイス・ブレスを放つ。
「いった!!」
ダメージを受けたわたしは慌てて回避するが、ダメージを負う。
HPバーが半分減る。
「うそっ」
神楽鈴を鳴らし、フレア・キャノンを撃つ。
アイス・ドラゴンが足を止めた瞬間、火球が身体を射貫く。
身体中に炎が延焼し、弓なりにのけぞり、砕ける。
YouWinの文字が視界に広がり、ドロップアイテム、巫女ポイントをもらい私はさらに奥へと進む。
先にあった小部屋で宝箱を開くと《氷霜の巫女服》を手に入れた。
なるほど。
防御力+9か。
初心者にしてはかなりいい報酬だ。
わたしはルンルン気分でそれを着て中央広場へと向かう。
その道中、目の前にカップルが現れる。
「あら。その服素敵じゃない」
女が言う。
「ならキミのために身ぐるみ剥がそうか」
男はにんまりと笑みを浮かべる。
「何を言っているのかな?」
わたしは小さく呟くと、彼らの前から立ち去ろうとする。
「待てよ。こいつ」
男はわたしに向かって
とっさの判断で回避した。
「あぶな!! なにするのさ!」
「俺があんたを殺す」
この巫女巫女バスターズはPVPを推奨している。
街などの特定安全地帯でなければ好きに攻撃ができる。
ちなみにフレンドリーキラーもできる。
やらなくちゃ、やられる。
直感を信じ、わたしは身体をひねり、フレア・キャノンで応戦する。
火球をかわしきれない女が炎の中で舞う。
「ちっ。おらっ」
男の方がわたしに蹴りをいれる。
「がっ」
小さくうめくと、距離を取る。
ふと後ろを振り返ると、女が立っていた。
ナイフを片手につっこんでくる。
わたしは錫杖の先端にフレアシュナイダーを迸らせて応戦する。
甲高い金属音が鳴り響く。
そのままなぎ倒し、後ろからきた男を蹴り飛ばす。
「あんたら、弱いね?」
「はっ。舐めた口聞いてんじゃねーぞ。タコ助」
「た……」
むっとしたわたしは錫杖を掲げる。
背後にいる女を切り裂き、正面の男に向き直る。
「あんたは始末する」
巫女服をゆらし、猛突進する。
「はっ。一直線な動き。見えるんだよ」
わたしの一撃を回避した男はにまりと笑みをもらす。
フレア・キャノンを放つ。
「どこ撃って、なに!?」
フレア・キャノンの反動を利用し、わたしは空中で身体をくねらせる。
姿勢を変えた瞬間、わたしはフレア・シュナイダーで男を切り裂く。
「な、バカな……っ!!」
HPバーが少し残っている。
マナも少ない。
「アイシクル・キャノン」
先ほどアイス・ドラゴンを倒したことで得た魔法を放つ。
氷点下の氷のつぶてが発射され、男を吹き飛ばしていく。
「勝った」
わたしは肩で息をすると、目の前で消えていく男女を見守る。
「勝ったよ!」
今日はごちそうだ。
わたしは疲れた足をなんとか前に進めると、街一番のレストランに向かう。
わたしの巫女巫女バスターズの攻略はまだ始まったばかりだ。
巫女巫女バスターズ 夕日ゆうや @PT03wing
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