様々な新しいものが入り乱れ、古いものが置き去りにされていく時代――明治時代風の世界観で紡がれる異類婚姻譚。
主人公のくるみは田舎から都会へと繰り出し、豊穣邸のお嬢様の美乃里に拾われて働く日々。その豊穣邸の裏山へ生ごみ捨てに行くと、そこで芥と出会う。芥は烏の化身。
捨てられた生ごみを供物と言い張る芥はゴミに埋もれて生きていた。
ゴミに執着する芥と、ごみを活かそうとするくるみ。
ゴミばかり捨てられる裏山を大事にする芥のために、くるみは知識を活かして生き生きとした場所へと変えていくのですが――。
とにかく二人が尊い。
ほのぼのとした調子で会話を重ねたかと思えば、途端にくるみへの執着を剥き出しにもする芥。
つたない話し方をしたかと思えば、人ならざるものの片鱗もしっかりとあります。
そのギャップが堪らない。
そして、もう一つ。
くるみとお嬢様の関係も好きです。
お嬢様はしっかりと先を見据えた人物で、しかし、途方に暮れていたくるみを広い、常に優しさもある。
新しいものを取り入れ、古いものは捨てる。
くるみとは真逆の考えを持っているお嬢様。
二人の交流は明治風の世界観をしっかりと描き、芥とは対照的に華やかです。
その対象がまた、このお話の魅力だと思います。
ごみの中で生きる芥とくるみ。
二人の些細な会話から深いやり取りまで、全てがオススメです。
“散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする”
そんな流行歌も幾分昔となった、成熟後の明治時代を思わせる舞台。
夕日が沈みガス灯ともる港町のセンチメンタルな風情に思い馳せていると……
ぷぅんと意識を戻すハエの音⁉︎
主人公・くるみが奉公先の使いで山にゴミを捨てているところ、あやかしに襲われ大切な形見を奪われてしまう。そのあやかしこそ、本作のヒーロー、芥でした。
衝撃的な出会いでしたが、お役目と形見のため、くるみは“密会”を重ねていきます。
というのも、奉公先のお嬢様は大のあやかし嫌い、古い価値観嫌い。
大らかで明るいくるみはいつしか芥とも心を通わせていくのですが……
主人公のくるみさんが太陽。持ち前の明るさ、柔軟さで惹きつけられます。
危うさも垣間見せる芥さんを、躱し、包み込み、彼にとって無くてはならない存在になっていくのがよく分かります。彼女ならなんとかしてくれる!と思わせる不思議な魅力。そして芥さんも弟可愛いというか、無邪気で、かと思えば年下攻めな魅惑もあり。二人のどこかコミカルなかけあいにも和みます。
新しい文化やものが取り入れられていく一方で、古いものが棄てられ凋落していく側面もあった。その時代背景と絡み合ったストーリー、様々な立ち位置の人物が描き出され、共感しつつはらはらしつつ、でもくるみさんの持ち前のマイペースさに安心してぐいぐい引き込まれます。
明治の斜陽への感性が、物語の陰影を深く特別なものにしていて心に刺さります。
光と影、善と悪、新しいものと古いもの。それは隔てることはできず、移り変わりさえするものかもしれない。何が正解とは言えない。だからこそ最後まで予想のつかない結末を追わずにいられません。
最後のシーンも、きっとこの物語のひとたち、読者も、それぞれの思いを抱くと思います。思い浮かべる「たからもの」が、それぞれ違うように。
二人の約束が果たされたとき、私は、白く暖かな光に包まれているのが見えました。
ぜひ読んで、あなただけの光景に辿り着いてほしいと思います。
明治のような日本。
くるみは美乃里という令嬢のいる奉公先で女中として、働いておりました。
ゴミを捨てている最中ですが、とあるゴミ捨て場にあるほとんどのものが、綺麗や手入れをすれば使えるものばかり。一つ手にして持ち帰ろうとすると、
「供物を取るな!」
と、背中に翼を生やした男が彼女の手を掴んで制したのです。
彼は人ではありません。ごみの山を奉納品として見ていました。くるみは彼にとっての失言をしてしまい、彼の手が伸びかけたとき、彼女はやられると思いました。しかし、彼はくるみの祖母の形見である指輪をとって見逃して、姿を消しました。
この指輪の騒動をきっかけに、二人の仲は進展していくのです。
彼は芥という烏。その彼が、ごみの山を奉納品というのには理由があります。
新しきもの、古きもの、捨て去るものはゴミだけではありません。
信仰もまた、捨てられてしまうことがあります。
残るべきもの、残ったもの、形が変わったもの。
上記のことが読みながら、感じられ考えさせられます。
二人はどうなっていくのか、タイトルにある塵芥のびいどろは何を示すのか。
皆様、どうか最後まで見届けてください。
私は最後まで見届けて、二人にふさわしい指輪はガラス、びいどろしかないと思いました。
文明開化の中で取り残される古いものと広がっていく新しいもの。そのどちらも誰かにとっては大切で、誰かにとっては憎んでいるもの。
主人公のくるみは「混ざりモノ」。でも、そんな彼女だからこそ、苦しむ者に寄り添えることがある。苦しむ者にとって希望の光のような存在になることができる。
約130,000字の物語の中に、素晴らしい描写や場面が溢れていて、その中でも物語の最後に紡がれるエピローグには良い意味で心を抉られました。この景色を最後に見ることができたのは、くるみという存在があったから。誰かを救うことは、また誰かを救うことへと繋がっていく。隔たりのある存在の架け橋となることは確かにできて、確かな悲しみの中に未来へと繋がる優しい希望を生むことができる。
未読の方は、ぜひ最初から読み、そして最後の一文まで辿り着いてほしいです。願わくはこの物語が数えきれないほど沢山の方に届き、せつなくそれでいてあたたかな読後感を味わっていただけますように。
古いものや古い文化がだんだんと廃れ、新しい異国の文化を取り入れて、ごちゃまぜになっている頃の時代背景を舞台にした、明治時代風な、和風ファンタジー異類婚姻譚です。
田舎から奉公に来たはずが当てが外れ、しかしその運命的な出会いによりとあるお邸のお嬢様に拾われ?た主人公、くるみ。
彼女の初仕事は、裏山のごみ山にごみを捨てに行くことだった。くるみがごみ山を見て思ったこと。
「もったいないなあ」
そこにはまだ使えそうなものがたくさん捨てられていたのだ。洗えばいけるかも···肥料にできそう···あれもこれもまだまだ使い道がある! そう考えたくるみは、ここに来る前に約束させられた『あること』をすっかり忘れ、ごみ山に夢中になってしまう。
桶に物色したごみを詰め込み、さあ帰ろうと立ち上がったその時―――、
「ドロボー! 僕の供物を勝手に持っていくな!!」
真っ黒な翼が、くるみの視界を覆った。黒い翼を持つその少年は、芥(あくた)という名のごみ山の主だった。
芥はくるみの宝物の指輪を奪うとさっさと去ってしまう。
ひょんなことから出会ってしまったふたり。くるみは指輪を返してもらうため、芥と交渉するのだが····。
とにかく、微笑ましいふたりのやり取りにほっこりしたりくすりとしたり、どきどきハラハラしちゃうのです。
途中からお嬢様も絡んできて、これは三角関係か? と腐な脳の私は今後の展開が楽しみでしょうがないのです。
が、作者さまのほぼ全作品を読んでいる私が思うに、いつ胸をぎゅっとされる苦しくて切ない展開が待っているかわからず、油断できません(笑)
和風ファンタジー、異類婚姻譚がお好きな方はもちろん、恋愛ジャンルが好きな方はぜひ読んで欲しい作品。
ふたりの恋の行方がどうなっていくのか、もしくはお嬢様ルートはあるのか、最後まで見守りたい! そんな作品です。
コンテストおめでとうございます✨
もちろん書籍化希望(๑•̀ㅂ•́)و✧
裏山に生ゴミを捨てに来た下女くるみ。そこで出会ったのは、ゴミが捨てられないカラスでした。
カラスに「供物泥棒」と呼ばれたくるみは、大事な祖母の形見を奪われてしまいます。
そのことを恩人の美乃里お嬢様に言おうとしたところ、その前に来たのは「外聞悪いこと言いふらす女中は問答無用で解雇」と言うセリフ。
八方塞がりのくるみは、とにかくカラスと対話することに……
「君も、よく見たらとっても綺麗だから。君のなにかをくれるなら、指輪を返してあげるよ」
困ってしまうくるみですが、やがて裏山の事情を知ることになります。
文明開化。かつての常識をいっぺんに捨て、ごっそり新しく変わった時代。
その中で捨てられ、忘れられたものを、その時代に生きるくるみはどう感じるのでしょうか。
溺愛(過剰)コンテスト応募作品を紹介します。
自分じゃなかなか溺愛は書けないので羨ましいです。
和風ファンタジー&異類婚姻譚と言えば、ちづさま。
ちづさまはこれまで、ホラーでもなく、おどろおどろしい、ダークファンタジー( ,,`・ω・´)ンンン? 上手く説明できませんが、少しあやしくて、なのに恋愛はきゅんきゅんするという奇跡の作家さまです。
作者さまいわく、斜め上の異類婚姻譚です(*^-^*)
さて今回のお話は、明治あたりの架空の日本。主人公のくるみの祖母が亡くなり、偶然お嬢様の美乃里に出会って、お嬢様の住む大きなお屋敷に奉公することになる。
ただ、一人娘の美乃里お嬢様は潔癖症。ゆえにゴミはそのまま裏山に捨てるので、くるみはもったいないと思い、いくつか使えそうな物を持ち帰ろうとする。するとそれに怒るあやしい烏(カラス⁉)が
「供物ドロボー」とくるみにいう。
その烏は、ただの烏ではない。人間のようで羽根のある鳥男。あやかしなのか?
あろうことに祖母の形見の指輪をとられてしまった。返してほしいと懇願すると、烏男は代わりになるものを要求する。
「生爪でも小指でも目玉でも──君自身でも。なんでもいいよ」
ひええええ(; ・`д・´)⁉
ここからがちづさまの本領発揮な展開ですよ。
この先、どうやって溺愛になっていくのか?
見守りましょう。おススメします\(^o^)/📚✨