命の恩人の恩人は私だった!?

@hayama_25

プロローグ

私が生まれたのは裕福な家庭だった。


両親は私を愛してくれて、幸せに暮らしていた。


そんなある日、お父さんの会社が倒産し、借金を背負うことになった。


両親を助けたいと私は勉強だけを頑張り、有名な大学にも合格した。


奨学金を貰って大学に通い、バイトをかけ持ちして、何とか借金を返そうと奮闘していた。


大変だったけど、幸せだった。

そんな生活も今日で終わりだ。


冷たい風が吹きすさぶ冬の夜、私は疲れ果てた体と心を引きずるようにして家路を急いでいた。


街はいつも通りの賑わいを見せていた。

私は、ただ家に戻ることだけを目指していた。


家の灯りが見えて、ようやく安堵のため息をつこうとしたその瞬間、玄関の前に立つ見知らぬ男の姿が目に入った。


男はダークスーツに身を包み、無表情でこちらを見つめていた。


その冷たい視線に、私は一瞬で緊張感に包まれた。


「…どちら様ですか?」

私は不安を隠しきれず、声を震わせて尋ねた。


「5000万返してもらいに来た」

男の声は低く、冷たい響きを持っていた。


その言葉に、私は一瞬で血の気が引いた。


「それはお父さんが…」

私は動揺し、言葉が詰まった。


お父さんが借金を返済したって。


しかし男は一歩も引かず、私の家に近づいてきた。


「あいつなら逃げた。娘を売るなんて酷い話だよなぁ。さっさと着いてこい」


男の声が冷たく響く。


お父さんが私を売った…?


私は抵抗する気力もなく、ただ彼の指示に従おうとした。


絶望に押しつぶされ、何も考えられないまま、彼の指示に従うことしかできなかった。


男の手が私の腕を掴んだ。


その冷たく強い手が、私を現実へと引き戻した。


冷たい汗が額を伝い、全身が震えた。


絶望の中で、私はもう逃げることができないと諦めかけたその瞬間、背後から別の声が聞こえた。


「この子に触らないでくれる?」


驚いて振り返ると、そこにはスーツ姿の別の男性が立っていた。


彼の目は鋭く、借金取りを真っ直ぐに見据えていた。


その眼差しは冷静でありながら、どこか優しさを感じさせるものだった。


「あ?誰だお前。関係ない奴は引っ込んでろ!」

借金取りは怒鳴ったが、彼は一歩も引かずに冷静に応じた。


「お望み通り5000万円払ってあげる。だから、さっさと消えてくれる?」


その言葉には揺るぎない決意が感じられた。


借金取りたちは一瞬たじろぎ、そして不満そうにその場を去って行った。


男は私に優しく微笑みかけた。


この見知らぬ男が私に新たな希望の灯をともした。





この奇跡のような出会いが、新たな物語の始まりとなることを、私はまだ知らない。


将来に希望を見いだすことができず、絶望の中で日々を過ごしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る