ロリ吸血鬼になって蘇生された中堅冒険者がヤンデレや箒と一緒に殺した奴を探しに行く物語
はち
Lost My Gun But This is My Rifle
第1話
流れ星を見た事があるだろうか?
僕は見たことが在る。たった一度だけ、偶然に見えたソレは酷く恐ろしいものだと感じた。落ちて死ぬ、燃えて死ぬ、そんな言いしれぬ恐怖を僕はあの一筋の光に覚えてしまった。
《そろそろ来るんじゃねぇか?》
5千年間続いた2つの世界間の戦争は唐突に終わった。
西の世界、魔力という概念に多種族が暮らす世界は銃や機械が進歩していないが多種多様な種族と魔力を基礎とした魔術や原始的な魔術たる魔法が世界を占めていた。
東の世界、魔力という概念は無く西の世界では人と呼ばれる単一種族が支配している世界。科学が高度に発達し、国家という概念は消滅して企業が世界を形成している。
《MG準備良いか?》
魔力と科学の融合で作られた無線機からは味方の声が届く。臨時パーティーで組んだ連中。
僕は彼等の支援だ。獲物は自動小銃、SKSと呼ばれるセミオートマチックのライフルで東の世界に太古からある銃だ。西の世界にある魔力の根源をなすと言う世界樹、それから落ちた枝を削り出した銃床にダマスカス鉱石と呼ばれる鉱石から削り出した銃身。神鉄と呼ばれる自然の魔力が封入された鉱石で作られた機関部。
全て合わせれ高級娼館で一週間は豪遊できる値段になるだろう。
「君は、流れ星を見たことはあるかい?」
狙撃眼鏡に捉えた一匹のゴブリン。魔力に反応して獲物を模るそれは矢張り値が張る一品だ。
杖を片手に歩くそのゴブリンはゴブリンメイジと呼ばれる魔物のくせに頭が良い存在だ。引き金を絞る。銃口が跳ね上がり、発射の衝撃を肩で感じる。それが生物の命を奪う代償だ。
跳ね上がった銃口が元の位置に戻ると、狙撃眼鏡には頭を半分程失って倒れ掛かっていた。
次の瞬間、別の位置に隠れていた機関銃手がゲボボボと弾をばら撒き出した。縦隊を組んで歩いていたゴブリン達は薙ぎ倒されていく。今回は捕虜は居ないので気楽に殺せる。
僕は次の標的として倒れて起き上がろうとせず周囲を伺っているゴブリンだ。ああ言う賢い奴がゴブリンメイジになるらしい。
未来の有望株を殺すのだ。さらば。
「君は流れ星を見たのかな?」
次の獲物を探す。ふと、森の奥で何か動く別働隊らしき影がある。無線を開く。
「奥に動く陰!」
直後、奥の影が光る。発砲だ。横取りか、山賊か、その両方か。
兎も角、僕等はゴブリンを挟んで撃ち合いになった。
「狙撃するから回り込んで」
無線で告げて、銃を乱射する敵影を眼鏡のレチクルに納める。人間、ではない。機械的な外見をしている。
いや、人間と言えば人間だ。機械人。そう呼ばれる彼等は魔術と科学の融合体。戦争が生み出した究極の選択。
電子精霊と言う新しい存在が機械の体を纏った結果が彼等機械人だ。命という概念は希薄で生身なら到底扱えないような代物の武器兵器を運用し、魔術を理解する。
これだけ聞くと非常に強いのだが、実際は全身が機械なので自己治癒能力がなく定期的なメンテナンス等が必須。
なので、殆どの機械人は企業やクニに属している。
《敵は機械人だ!》
その言葉が耳に入ると同時に爆音が聞こえた。赤い炎が膨らみ木々を大きく揺らす。その方向を見れば臨時パーティーで組んだ前衛が消滅していた。
何が起こったのか?理解する前に答えが出た。
杖を持ったローブの敵が自身の前にソフトボール大の火球を作っていたのだ。
「魔術師が出てきたぞ!」
眼鏡で捉え、レチクルを胴体に。引き金を素早く2回。ダブルタップと呼ばれる射法。魔術師は胸と腹に弾を受けてその場に崩れ落ちた。
しかし、腕が動いていたので更に2発、ダブルタップで胴体に弾を叩き込む。計4発のスチール弾芯入り7.62mm×39弾を食らったのだ。
絶命したのだろう、魔術師は動かない。目標を未だ森の奥から大口径銃で撃ってくる敵に変える。
恐らくは50口径。細い木々はなぎ倒され、ゴブリンの死体はあっと言う間にミンチだ。
「糞、何処の組織だ?」
レチクル越しに遮蔽もせずに重機関銃をぶっ放してる機械人を見付けた。
体を素早く見るが、何処に所属しているのか分からない。つまり、何処かの組織の暗部に所属している訳だ。
重機関銃ヤロウの頭部に狙いを定めて引き金を絞る。
奴等の弱点は頭部か胸部にあるコア。人形に似せてるので弱点も其処に在るのだとか。
「抜けるか?」
スチールコアの弾芯だ。一発撃って大きく仰け反る。しかし、手は止まらない。糞。
更に撃つ。そこで漸く射撃が止まった。機能不全を起こしたらしか、エマージェンシーモードに突入、今頃彼奴は縮退機能を起動してシステムチェック中だろう。手足は無事なのでじきに攻撃を再開するが、時間は稼げたはずだ。
そろそろ移動しよう。ゴブリンを含めてだいぶ同じ場所で撃ち過ぎた。負い紐を首に掛けて低い姿勢で別の射撃位置に移動する。
太い倒木があり、依託及び遮蔽に期待出来る。
「生きてる奴は居るか?」
無線で聞くが何も返って来ない。銃声も散発的だ。こりゃ、負けたな。どんな理由が知らんが逃げるに限るって奴。
ウエストポーチのサイドポケットにぶら下げた3号缶程の大きさの缶を2つ取りだす。魔力を封入し対IRも兼ね備えた少し高めの発煙弾。
引張環を引き抜き、安全レバーを開放。そのまま風上に放り投げる。残る一個も安全レバーを握って待機。1個目の煙が充分に展開した所で追加に自分の前に投げる。
後はひたすら逃走だ。対IRも在るから機械人共の熱探知も分からないだろう。案の定、凄まじい勢いで弾を四方八方にばら撒き出した。
姿勢を低くし、木々を背にして素早く走る。
この風なら大体10分は彼処で停滞してくれる。魔術師も見える範囲で殺したので突風等を吹かせられる奴は居ない筈だ。
死ぬ気で全力疾走。人間命が懸かると素晴らしいぐらいに頑張れる。そして、10分も走って森の輪端に出る。
「ハァハァ……ッシ!」
気合を入れて小走りに街道を目指す。街道まで出ればある程度の往来があり街まで帰るのも楽になる。
此処から約5kmだ。走って30分位だろう。
後ろを振り返らずに走る。走り出して30分すれば計算通り街道に出る。街道の往来は基本的に馬やバイク、車両で徒歩は居ない。
此処からどうするか?いや、やる事は決まってる。正確にはどう帰るか?だ。
正答は幾つか有る。が、此処は確実な手を取ろう。
「もしもし?」
念話と言う魔術が有る。電話と言う機械がある。電魔になった。何処と無く卑猥にきこえる。
《もしもしロゼ君!?》
ワンコールで出た。
「そう。
チームが山賊に襲われた。今は何とか逃げ出してシュトロン街道のB-122地点に居る。暇なら迎えに来て欲しいん《今から行くから待っててね!》
所謂ガチャ切りされて音信不通。
取り敢えず、足は確保出来た。縁石にしゃがみ、一心地付いたと思ったその瞬間だった。背中から胸にかけて熱せられた鉄をねじ込まれたような感覚。声が出ない程に熱い。
慌てて見たら胸から長い刃物が飛び出ていた。丁度心臓の位置だ。
「なっ……」
「お主に怨みはない。此れも仕事故……」
グリッと拗じられ引き抜かれる。体に力が入らぬまま地面に倒れると、薄れゆく意識の中で暗殺者、女にも男に見える16か7くらいの人間が僕のライフルに手を掛けるのが見えた。
なるほど、この銃狙いか……
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