第26話

 詭弁だ。一人で自転車に跨りながら、そう思った。先輩は受験勉強のためだと言っていたが、俺が先輩を学校まで迎えにいくことだけのことがその邪魔になるとも思えない。親に塾に行かせてもらっているからというのも、塾自体には休むことなく通っているわけだから問題はないように思う。確かに休日に遊びに行くというのは親の心象として良くはないかもしれないが、だからといって関係自体を解消する必要はないはずだ。それに、相手も受験期だから告白してこないだろうという最後の言はもっとおかしい。聞いた話によれば、その相手は受験勉強や何かを理由に断る先輩にまずは形だけで良いからと交際を迫ったはずだった。そんな相手が自分も受験期だからという理由で先輩へのアプローチを控えるとは思えない。

 目の前の歩行者用信号が赤になり、俺は自転車のブレーキを掛ける。

 なら本当の理由は? たとえば俺への忌避感からという線はあるだろうか。いや、だとするとそもそも休日にまで俺と出掛ける必要がない。あれは少なくとも俺のことを嫌ってはいないという証拠ではないだろうか。それとも、これはただの俺の希望だろうか。

 そうして考えてみたものの、この時の俺に先輩の事情などわかりようもなかった。

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