敏腕スパイは普通の高校生活を送りたい
紺崎濃霧
Ⅰ.Spy of a Student
帝都・
開校100年の記念式典を兼ねた入学式が終わり、新入生がぞろぞろと新しい教室に入っていく頃、一人の男子生徒は至る所に目を光らせていた。
襟に白のラインが入った黒色のブレザーを身に纏い、寒色系の色が織りなすネクタイを締めていた。
「廊下にも体育館にも空調があったよな!?流石私学は違うなぁ」
と、自分で言うのもどうかと思うが、目が感動と期待で潤んでいる。
資本力は桁違い。それが首都に位置する私学の強みだ。大手チェーンが入っているカフェテリアがあり、さっきの体育館にも可動式スタンドや最高級の音響設備が詰まっている。全く、私学は最高だぜ。
「一年丑組の担任、
新しい担任もクラスメイトも親しみやすくて面白い、というのが第一印象だった。初日の今日は資料配布と自己紹介で終わった。
「
隣の席の女子の苗さんは、明るい笑顔が印象的だった。中学時代はバレーボールで名を轟かせていたそうだが、高校では引退し、新しい事を始めたいと言う。少々もったいない気もするが、俺には口出しできないな。
「俺は
後ろの席の海斗は優しそうな見た目。地毛があからさまな茶髪だったことに驚いたが、とても似合っていた。高校生、みんな格好よく見える。
彼らと談笑を楽しんだ後、俺は帰路に着いた。
「さてと、仕事すっか」
最寄りの
一人エレベーターに乗り、操作盤をがしゃんと外した。ボタンを押した。そして、エレベーターは静かに、だが尋常ではない速さで下降していく。陸軍の将校ですら絶対に立ち入ることのできない、この國の心臓部へ。
そう、俺はこの國の諜報員である――
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