第11話



 【悲報】俺、ロリPカップを丁重に扱おうとしたら部下が拷問してた件【~条約無視で戦場無双! え、部下がなんかやっちゃいました?(笑)~】



 って笑えるかボケェエエエエエ!!!!!!!!!!!



「ニーナ、お前、何を、やっている?(マジでなんなのマジでなんなの!?)」


「あっ、これは空に輝く黒翼山の星にしてアルヴァトロス隊長閣下! おはようございますっ!」「ぎゃあああああああああ!!!!!!?」


「……おはよう(じゃねーよッ!?)」



 いやいやいやニーナちゃんさん!?


 可愛い笑顔で挨拶しつつ、指先に蒼炎灯して女の子焼肉するのやめてくれない!?


 Pさんめっちゃ叫んでるよォ!?



「朝からいないと思いきや……」


「あッ申し訳ありません! すぐにお吐精のご用意をいたします!♡」



 ってメイド服脱ぐな脱ぐな脱ぐな! 女の子焼きながらLカップぼろんするなッ! どういうプレイだ!?



「……俺は状況を聞いているんだ。貴様、捕虜に対して何をしている……?」



 捕虜の扱いもソフィア条約で決まっている。


 交渉や尋問は許されているが、拷問は原則禁止だ。


 まぁ『少し厳しめの尋問』と称してパンチの数発は叩き込むことはあるが、流石に身体の半分近くを火で焼くのはアカンすぎるだろ……!

 完全に戦争犯罪やんけぇ~……。



「返答によっては、俺は貴様を本気で処分するぞ……?」



 ……先日の戦いでニーナちゃん強いなぁ~と見直したところだが、やっぱこの子は怖すぎる。

 いざというとき命令破って迷惑かけるような存在なら、流石の俺も排除に動くぞ。



「ハ……ッ! それについては、順を追って説明いたします」



 処分、という言葉にびくりとしつつ、ニーナは半死半生の獣人少女を見下げた。



「今朝がた様子を見に来たところ、この女は意識を取り戻していました。そして本人曰く、自分は『ズカキップ辺境伯の子、ラフム』とのこと」


「なんだと?」



 王国の辺境伯の子ときた。


 うーん……であれば幼くして戦場に出ていることも、一応は説明がつくのか?


 向こうの国は獣人族からなる性質ゆえか、極めて成果主義な一面を持つ。


 ゆえに貴族の血筋だからという理由だけでは人々は従わないため、王国の貴族の子らは、形だけでも戦場に立たされて、最低限使える人材であることを示していかなければならない。


 昔の日本みたいな感じだな。戦場童貞にゃ誰もついていかないのだ。



「ふむ……王国の習慣は理解しているが、よもや子女まで戦場に立たせるとは……。まぁ、そこはズカキップの教育方針ということで納得しておこう。話を続けろ、なぜ拷問した?」


「ハッ。自称とはいえ貴族の子女となれば、敵国の情勢に相当詳しいと判断しました。この時点ではまだ、私も穏便に尋問するつもりでしたが……」



 そこでふと、火傷で朦朧としていたラフムが、俺のほうを見て目を見開いた。


 そして、



「滅びるのだ劣悪な種がッ!」


「むっ」



 なんと椅子に縛られたまま、全身を倒して俺の股間に噛み付こうとしてきたのだ!



「貴様……(ひええええええええええ!?)」



 咄嗟に避けたが、危なかった。


 なにせラフムちゃんは獣人の子だ。白い犬耳としっぽが生えているだけでなく、犬歯も野獣のように尖っていた。

 あれに噛まれたらマジで千切れちゃうぞオイィ……!?



「うぐぅううッ……! 貴様が、例のアルヴァトロスだなぁ……!? 優等なる獣人族を滅ぼしてきた劣悪種……! さっさと滅びて死ねばいいのだァアァ……!」



 うさぎのような赤目をさらに血走らせて睨みつけてくるロリPちゃん。



「ほう、劣悪種ときたか……(え、なにそれへこむんですけどぉ~……!?)」



 いやぁ~確かに俺は劣悪種かもだよ?


 コミュ障で、口下手で、全然会話が弾まないしさ。


 もっとアメリカ映画のウィットに富んだナイスガイな上官目指してたのに、出来上がったのは鉄面皮の冷徹軍人だよ。

 俺みたいな男ばっかになったら世界はきっと暗くなるさ。だからそういう意味じゃ劣悪種だよ。


 でもさぁ~~~~。

 十三歳くらいの一部以外ちっちゃい女の子に、暴言吐かれるのはさぁ……。



「隊長閣下、この女は目覚めた時からずっとこの調子なのです。やれ、アルヴァトロスを断種しろだの、ケツに優等な獣人汁を植え付けてやるだの、極めて侮辱的で歪んだ発言ばかり。まったく不愉快の極みで……!」


「それで拷問したのか」


「はっ……いいえ閣下! 違います!」



 いや今『はい』って言いかけたよね!?



「ご覧ください。この女ときたら喚いて叫んで暴れてばかりですゆえ、全身十回所以上に空いた矢傷が開いてしまったのですよ。それでこのままでは失血死すると思い、緊急の『治療行為』として傷を焼いていたのです」


「む」



 そっ、そうきたかぁ~~……!


 たしかに足元血だらけだし、ラフムちゃんの焼けた傷も元々広がってたのかジュクジュクしている。


 ニーナちゃんの言い分も完全に間違っちゃいないわけだ。



「肌を焼きながら詰問していたように見えたが?」


「治療中の雑談です。会話することでリラックスさせようとしました」


「なぜ、衛生兵を呼んでいない?」


「彼女の血を見てパニックになり失念しておりました。悪意なき精神的錯乱ゆえ条約違反にはならないかと。また『治療をしない』『間違った治療をする』のではなく、適切な止血自体は行っていましたので、問題になる要素はございません」



 ってこいつ確信犯やんけッッッ!?

 絶対全部わかっててやってるじゃねーかこええよ!!!



「隊長閣下! 私は帝国のためにッ、何より閣下のためにッ、必要なことは全て行う所存です! 我らが目下の敵は隣接するウルス王国! 先日、向こうからの強襲とはいえ辺境伯軍を撃滅した以上、何らかのアクションを起こしてくるはずです! そのために早急にウルスの生きた情勢図が必須であり、またついでにこの女の思想が歪んでて腹立つため『少し厳しめの尋問』も必要だと愚考しました!!!」



 いやキミ私情混ざってんじゃん~……!

 俺への忠誠と俺を罵倒したラフムちゃんへの憎しみでドロドロになってんじゃん、こわいよぉお……!



「はぁ……事情と言い分はよくわかった。流石はニーナ。戦争犯罪法の知識は豊富だな」


「っっっ! ありがとうございます! 閣下に迷惑を掛けず戦犯できるよう、必死に勉強しました!」



 って目をキラキラさせるな皮肉言ってんだよッッッ!


 あと学んだ知識で穴突くな! 守れアホ!



「……これより捕虜ラフムと直接話す。ニーナは少し黙っていろ」


「むぐー!」



 さぁて、ロリPカップちゃんのほうどうにかしないとなぁ。



「死ぬのだぁあぁあ~~……! 劣等ちんぽ潰れろなのだああぁああぁ……!」



 床に顔面から倒れた状態で怖いこと言うラフムちゃん(※胸がクッションになっており、痛そうではない)。



「劣等ちんぽぉぉぉぉぉおお……!」



 ――うん、最初から交渉の余地がない子なのはわかった。


 そういう意味じゃニーナちゃんに感謝だな。


 もし当初の予定通り甘い顔して近づいてたら、間違いなく嚙み千切られていただろう……!



「まずは自己紹介といこう。俺の名は」


「劣等ちんぽ!」


「……アルヴァトロスだ」



 どうしよう、俺もうこの子イヤなんだけど?



「はぁ。では体調確認から行こう。ラフムよ、傷は痛むか?」


「あッ、当たり前なのだ! あのニーナとかいう女、開いた矢傷に指突っ込んで着火してきたのだッ! 気が狂ってるのかッ!?」



 あぁうんそりゃ同意見だわ。なんで俺ってばこんな部下持ってるんだろって思うもん。

 まぁラフムちゃんも人のこと言えた感じじゃないけどね? つかそんなことされてよく心が折れないなぁ。



「タフな女だ」


「タフなのだ!」


「ああ、それだけ喋れるなら気力は十分だな。では次は雑談といこう。好きな食べ物は?」


「劣等ちんぽ!!!」


「……嫌いな食べ物は?」


「劣等ちんぽ!!! 死ね!!!」



 あかん。


 こいつ、会話する気が一切ないわ。


 マジで頭ンなか俺のちんちん噛み千切ることでいっぱいだわ。



「クソがぁなのだああぁああぁああああーーーッッッ! 優等なる獣人の種がこの世界を覆うことこそ人類発展著しき未来に繋がるはずなのにッ、貴様が現れてから滅茶苦茶なのだああぁあああ! 死ねぇ~~~~!」


「なるほど……」



 このバスト身長同センチ女、『民族統括思想』の持ち主ってやつか。


 たまーにいるんだよなぁ。

 なにせ肌色くらいしか人の違いがなかった前世とは違い、この世界では人種の違いが酷く顕著になっている。


 耳無しと呼ばれる俺たちヒト族、動物の特徴を持つ獣人族、自然の声を聴くエルフ族、他にドワーフ族やらインスマウス族やら……歴史を遡ればさらに多様な種がいるのだ。


 おかげでそれぞれ国に分かれてバチクソ殺し合っているのが現状だ。



「はぁ……(やれやれ、創世者『女神ソフィア様』とやらは何を考えてるんだろうなぁ?)」



 こんなに見た目に差異を作れば争い合うことは必定だろうに。


 まさか、最強を決める異種族バトルロワイヤルでもしたかったのか? んなアホな。



「おいッ、何を溜息をついてるのだ!? 己が罪深さを反省し、メスになって獣人の子を産む決心をしたかなのだ!?」


「するか」



 ……こんな歪んだ世界のせいで、生まれたのがこのラフムちゃんみたいな思想主義者なわけだ。


 自分の種族こそが優等と信じ、優等な者が世界に溢れれば未来は明るくなるに違いないと夢見て――そうして他民族を制圧するゴミだ。



「許さんのだァアアア……! アルヴァトロスよ、貴様は世界の未来を閉ざしていく大罪者なのだ! 我がウルス王国が、優れた獣人が世界を統一していたら、どんなに素晴らしい未来が待っていたかぁ……!」



 などと本気で語る彼女に、俺が『もうこっそり殺しちゃおっかなぁ~』と考えていた時だ。


 不意にニーナちゃんが口を開いた。



「むぐー、むぐむぐむぐー」


「……なんだニーナ、話していいぞ」


「っぷは! は、はい! その女の主張が、完全におかしいと思いまして!」



 と言い放つニーナに、ラフムがくわっと目を見開いた。



「はぁああッ!? どこがおかしいのだぁ!? 獣人は、貴様ら耳無しどもより身体能力に優れているのだ! 知能が少し低めとは言われてるけど、それだって腕っぷしでカバー出来るのだ! どんな頭のいい奴でも殴れば死ぬのだ!」


「うむ認めよう。たしかに獣人の能力は素晴らしいな」


「むっ!?」



 意外にも、ニーナちゃんはラフムの言い分を認めた。


 だが「しかし」と言葉を続ける。



「ならばなぜ、獣人の国たるウルス王国は我らが帝国に負けたんだ? 優等種ならばおかしくないか?」


「そっ……それは違うのだ! 数年前まで、帝国は風前の灯火だったのだ! 我らがウルス王国こそ一番になるはずだったのだ! でもっ!」


「でも?」


「そこのアルヴァトロスという男が台頭してから、急に負け始めて――うぅ……」



 ラフムの顔がしょぼくれていく。そんなに俺が必死こいて巻き返したのが嫌なのか……。



「あぁラフムよ。ならば獣人族が一番優れているとは言えないんじゃないか? 現実はこうだぞ?」


「ッ、黙るのだニーナ! たしかに王国は負けはしたが、だからとて貴様ら耳無しが優れているわけじゃないのだ! あくまで優れているのはっ」


「そうだ。我らがアルヴァトロス隊長閣下だ……!」


「!?」



 ニーナは恍惚とした表情で目を輝かせた。



「なぁラフムよ、種族同士の優劣を決めるなど不毛極まりないと思わないか? お前が語ったように、獣人は強い代わりに知恵に乏しい。兵量の計算ミスや命令の無理解で戦う前から戦線崩壊するケースもよくあると聞く」


「うぅ……」


「半面、我らヒト族も最有力とは言い難い。満遍なくステータスは高いが、獣人に劣る身体能力、エルフに劣る感覚能力、ドワーフに劣る環境適応力と……悪く言えば器用貧乏な種族なのだ。ゆえに全周辺国家と戦争になった際には、それぞれの強みに圧し潰されかけた。こんな優等種があるものか」



 しかしッ! とニーナは再び力強く吼えた。



「我らがアルヴァトロス隊長閣下は違うぞ! 閣下はあらゆる能力に優れ、全ての敗戦濃厚な戦場で奇跡の勝利を重ねてきた御仁なのだッ! お前たち獣人との『西部戦線』で、悪辣なエルフどもとの『フィオナ樹海混戦』で、捨て身なドワーフどもとの『鉛毒山湖奪還戦』で! 全てにおいて勝利してきたのだァッ! それが獣人族に出来るかぁ!? 貴様らの国から一番優れた人物を閣下の立場に置き換えて、それで同じことが出来るのかァアアッ!?」


「そっ、それは……!?」


「出来るわけがないだろう! だがアルヴァトロス隊長閣下なら出来るぞ! この世界のあらゆる人種が出来ない覇業も、アルヴァトロス隊長閣下なら出来るぞッ! アルヴァトロス隊長閣下なら出来るぞォッ!?!?!?!?」


「ひぅっ!?」


「ならばァアアーーーーッ!!! 優等さを問うなら『種族』単位ではなく個人単位で決めるべきではないのか!? 真に世界を優等な種で満たしたというならッ、『個』の頂点に立つ我らがアルヴァトロス隊長閣下の子を産むべきなんじゃないのかァァアアーーーーーッ!?!?!?!??」


「ひぁあああっ!?!??」



 ニ――ニーナさん何言うてますのこの子ォオオオーーーッ!?


 俺を御旗にして民族統括思想主義を論破するなッッッ!


 俺、世界中に赤ちゃん作るの嫌なんだけどッ!? 普通に一軒家で清楚な嫁さんと平凡に暮らしたいんだけどぉーッ!?



「そ、そんな、だが、獣人こそ一番で……あぁでも、帝国……じゃなく、アルヴァトロスに、押し返されて……!」


「その通りだ。ラフムよ、お前の民族統括思想は決して間違ってはいない。ただ掲げるべき存在を見誤っていただけなのだ」


「それが、アルヴァトロスであると……?」


「その通りだ。これまでの絶大な功績もさることながら、顔を見てみろ。――彼より最高の美丈夫がいるか……?」


「うっ、いない……!」



 って顔で押されるなラフムちゃん!



「うぐぅぅうッ、だがしかしッ! 所詮この男は魔術師! 魔術の才に優れていても、身体能力自体はやはり獣人以下に決まっているのだ! そんな男をッ――最優等種だと認めるかァッ!」


「おまっ!?」



 刹那、ラフムちゃんは身体を弾ませ大きく跳ねた――!


 凄まじい跳躍力だ。おそらく130cmのPカップが物凄いバネになってエネルギーを生み出したのだろう。


 俺が反応する間もなく、彼女は股間にがぶりと噛み付いて――!



「あがッ!?」


「ん?」



 ……なぜか痛みは走らなかった。


 それどころかラフムちゃんは口を離して床に落ち、がたがたと顎を震わせていた。


 ど、どうしたどうした!?



「あぎ、がッ……な、何なのだ、あの硬さは……!? 私の歯が、折れかけたのだ……! それに、この、大きさは……!」



 えっ?


 ラフムちゃんの戦慄した視線を追い、俺も股間に目を向けたら――あっ。


 お、おっきくなってるやんけぇーーーーーッッッ!?



「おぉぉ流石は隊長閣下ッ! 回避が間に合わないと察した瞬間、屹立させて真っ向勝負を挑んだのですねッ!? なんて的確で冷静な判断!」


「お、男らしすぎる選択なのだ……ッ!」



 いや偶然だよ! たぶん普段ならニーナちゃんが淫乱毛布してる時間だからだよッ! それでクセになってたんだよ馬鹿野郎!



「うぅぅうッ、この硬さに大きさは……なんて、なんて……!」


「ふっふっふ、慄くがいいラフムよ。隊長閣下の股間は普段から20cmと規格外だが、大きくなればなんと30cmに到達! 硬さも私の全体重55kgを支えれる鋼の逸物になるのだぁッ!」


「30cm!? 55kgを支えれる鋼の逸物ッ!?」


「さらに限界寸前となれば35cmを記録ッ! しかもこの大きさは毎日更新され続けているのだァーーーッ!」


「のだああああああーーーーーーーーッ!?」



 ……そして、ラフムちゃんは謎の衝撃を受けて突っ伏した。


 床に顔を伏せてすすり泣きながら、「間違っていたのだ……」と呟く。



「ぁ、アルヴァトロス、殿……! 私の思想は歪んでいたのだ。真に広めるべき子種は、貴殿のぴゅっぴゅだったのだァ~……!」


「おぉ改心した! やりましたねぇ隊長閣下ッ!」



 って、なんもよくねーよクソボケどもがぁーーーーーーーッ!





偉大グレートちんぽ様……!」




 うるせえ!



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