第6話 メイド衣装の生徒会長

 ≪真理奈視点≫


 プルルル……

 私は廊下で電話をかけている。

 

「はい、白崎澄玲です。いかがなさいましたか?」


 まるでお嬢様のような声が聞こえた。


「ねぇ澄玲、相談あるんだけど。今日、そっちは学校休みだよね?」


 そう実は妹の声である。

 私は空を見ながら質問する。


「おう! お姉さまか! どうした!? まだ生徒会の仕事じゃないのか?」


 さっきの口調とは打って変わり、いつも通りの口調になる。

 

「澄玲が着てる以外のメイド服ってある?」

「……」


 しばらくの沈黙が流れる。

 どうしたのだろうか?


「お姉さまがメイドだとおおお!? おい!俺の立場がなくなるじゃないか!! なんだ!? 俺のメイドが気に入らないって!?」


 何か勘違いをしているようだ。

 ちなみに、両親は既に他界しており、澄玲が代わりのメイド的な役割をしている。

 本当は私もする予定だったのだが「お姉さまのお世話は俺がするぜ!」と断固拒否された。


「はぁ……勘違いしてるようだけど、家では着ないから」


 私は額を手で押さえながら話す。


「なんだそうか! じゃあいいのがあるぞ! 俺は似合わないから1回も着てないが、お姉さまには合うだろうな!」


 どうやら2着あったらしい。

 なんで持っているのかはさておき、これでなんとかなりそうだ。


「わかった。よろしく」


 そういって電話を切った。


「明君どんな反応するのかな、私がメイド……面倒なことは嫌なんだけど、明君が喜ぶのなら」


 私はボソボソ呟きながら部室の中に戻るのだった。



≪明視点≫


 僕は今日教室の机で、1日中休み時間を割いて昨日話し合ったことをノートにまとめていた。

 とりあえずやることは決まった。

 後は、詳細を決めるだけ……

 ただ……


「決まらねぇ!!」

「どうしたんだ? 明そんな大声出して」


 あまりの声の大きさに僕自身もびっくりする

 おかげで周りからめちゃくちゃ見られてしまった。


「活動方針は決まっても、なかなかどうすればいいのか……」

「そんなもの適当に考えたらいいだろう。今すぐってわけじゃないんだろ?」


 確かにその通りなのだが……

 うーん……

 そんなことを考えていると学校終わりのチャイムが鳴った。

 

「とりあえず部活部屋行こうぜ!」

「うん、そうだね」


 ということで僕たちは部活部屋に向かっていくのだった。

 

「ところでよ明、人数はどうするんだ? 俺ら3人だけだと寂しくないか?」

「確かに……」


 もう1人増やしてもいい気はする。 

 けど誰を増やしたらいいのだろうか?

 僕はおもむろに立ち止まり考える。


「キャッ!!」


ドサドサドサ!!


「いってえ!!」


 何が起こったのか僕は慌てて横を見る。

 すると後ろには1人の女の子、そしてノートやら本で埋もれている大和君の姿があった。


「ふえええ!! す、すみません……その……」

「あー! いってぇな畜生!」


 大和君が叫びながら頭を撫でている。

 

「ご、ごめんなさい! いつもこんな調子で……」


 女の子は必死にノートや辞書を集めている。

 どうやらどこかへ運ぶところだったらしい。


「明先行っててくれ」

「え? でも大和君は?」

「俺はこれがおわったらすぐいく」


 と言ってノートの回収を始めた。

 どうやら手伝うらしい。

 確かに、この量を女の子1人で運ばせるのも確かに罪悪感がある……


「す、すみません! あ、ありがとうございます」

「ああ、どこへ運べばいいんだ?」

「ええっと……さ……3階です」


 大和君は、そのまま女の子と歩いて行く。

 僕は2人の背中を見ながら部活部屋に向かうのだった。

 そうして、着いた部活部屋……にはもう既に電気がついていた。

 生徒会長がもう既に来ているのだろうか……?


「早いなぁ……相変わらず」


 そうして扉を開ける。

 そしたら……

 目の前にはきれいなメイドさんが立っていた。

 青色のメイド服に、頭には後ろに青色の丸い帽子を付けている。

 あの生徒会長が……


「おかえりなさいませーご主人様ー」


 めっちゃ低音ボイスの棒読み!!

 だけどそれもいい!


「え、その……可愛い」

「そう、ここに座って」


 僕は思うがままに椅子に座る。

 すると、真理奈さんは、ゆっくりと何やらコーヒーを持ってくる。


「こちらーピリッと苦くキュンと甘いホワイトコーヒーです。おいしくなる魔法いりますかー」


 めっちゃめんどくさそうな低音棒読みボイスだが、メイド衣装と顔の可愛さがアンマッチしているので、なんかもうすごいことになっている。


「お、お願いします」

「萌え萌えキュン。おいしく召し上がれー」


 隣で胸にハートを手で作りそのままコーヒーに注ぎ込んだ。

 声は相変わらず低音ボイスなのだが……

 可愛い!!

 僕は、ゆっくりコーヒーを口に含む。

 おいしい……

 時折苦いところもあるのだが、そのあと甘い香りが口の中に広がった。


「おいしい……」


ガラガラ!


「おう! 明! おまた……」


 大和君が入ってくるなり、生徒会長を見て目を見開いていた。

 それはそうだろう……


「生徒会長……だよな?」

「早く入ってきたら?」


 真理奈先輩に促され、大和君も中に入ってくる。

 それにしても可愛い。


「私は、明君専属のメイド、真理奈だから」

「え? 聞いてな……」

「よかったじゃねえか! 明! お前メイド大好きだもんな!」


 確かに大好きだけど!! でも……あの生徒会長が僕のメイドは……嬉しいけど!! 緊張する!!


「せ、生徒会長!!?」


 もう1人後ろから今度は、先生ではない女の子の声が聞こえたのだった。

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引きこもりで人見知りな僕と、清楚で可愛い生徒会長。 蜂鳥タイト @hatidori_taito

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