第576話
面倒くさい手続きは校長先生に押し付けてしまった。そしてホタテの貝殻を取り出し作業を開始しようとした時に俺はまたやらかしてしまった。
「さっきの魔道具だけど、研磨の他に使えそうな事はあると思う?」
「そうですね……」
縦回転の研磨機って
とまぁ、苦い思い出は置いておいて、似た道具ということで
いや待て、ヤーゲンはドワーフ語で “ 狩る ” とか “ 突く ” とかの意味があるじゃないか。ちょっと不味いな。だったらヤゲーンか? いや、スキルが仕事をしてくれた。ヤクゲーエンだ。
「思い浮かばなかったら無理しなくていいよ」
「あの、これなんですけど……」
俺はさっき土魔法で作って置きっぱなしにしていた中心に穴の開いた円盤を手にし、中心の穴に棒を通す。そして地面の上をゴロゴロと往復させた。
「これ、受け皿に乾燥させた薬草を置いて、こうやって磨り潰すのに使えませんかね? 薬草でなくても【
「それ、面白いよ。ミーシャ=ニイトラックバーグ、その円盤を持ってもう一度校長室に行こう。暫定名は考えた?」
「あっ、はい。薬の上を円盤が歩いて潰す道具なので【
「ヤク・ゲーエンね。使用にあたって難しい説明をしなくていいから、それでいいんじゃない? さあ、急ごう。校長先生が出掛けてしまったら大変だ」
慌てて校長室に向かうと校長先生が商業ギルドに出掛けようとしていた。ギリギリセーフ。そして再度説明が……。校長先生ごめんなさい。
「まさか追加の発案が持ち込まれるとは」
「校長先生、申し訳ありませんでした。さっきスッと浮かんでしまいました」
「いや、構わないよ。それでその【ヤク・ゲーエン】だけど、魔道具だけでなく手動でも使えると」
「はい」
「原理は極めてシンプルだ。これは獣人族、虎の人達に人気が出るかもしれない」
「虎の人ですか?」
「虎の人は薬を作るから従来の薬草を
「そうなんですね」
「手動と言えば、【バーサーカッター】が獣人族やヒト族の平民の間で人気が出てきているそうだ。魔石要らずで作業の手間が減るから、【タワシ】と一緒にして夫が妻に贈る事が夫婦円満の秘訣になるという話だ」
「魔道具に拘る必要はないという例なんですね」
「そう言う事だよ。さて、【
「校長先生、先の二つは私単独の発案と言うよりミーシャ=ニイトラックバーグの発言からヒントを得ていますので、出来れば連名で登録をお願いしたいです」
「いや、ボクは……」
「少しでも発案の権利があると将来的に有利になるからね。権利金云々より、あの権利の発案者の誰某ってのが何かしらに結構効いてくるんだよ」
「そういう事なら連名でお願いします」
「いやー、楽しみだよ。早く試作品が届かないかな。【
「ザン=ギュラー先生、流石にそう直ぐには出来ないのでは?」
「いや、隙を持て余した魔道具工学を専攻している学生がいるから、少し焚き付けてやれば面白がって開発するでしょう。ゴーレム機構とはまた別ですから、打倒ハーレー=ポーターを掲げる学生にはこの魔道具開発は刺さるでしょう」
まさか、ハーレー=ポーターさんへの対抗心を利用するとは。やるな、校長先生。
それを聞くと嬉しさのあまりなのか、ここが校長室だというのにザン=ギュラー先生が腕組みをしたままステップを踏んで踊り出した。
「ザン=ギュラー先生……」
「そこで踊りますか?」
「校長先生、失礼しました。嬉しさのあまり、つい工作ダンスを……」
腕組みステップ、コサックダンスじゃなかったよ。
―――――――
(作者より)
近況報告にも記載しましたが、3/29〜3/31の作品更新をお休みさせていただきます。
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