2章 地の神からの罰
第6話 人間共と蟻達の準備
グリーン率いる探検隊の生き残り達が小島から逃げ出し3日後。
グリーンは本国に帰り、豊富な資源と女達を国に提供しその褒美として権力、地位さらに屋敷を国からもらった。
「これが、僕の屋敷…」
豪華な屋敷には多くの使用人がおり、呼び鈴一つでなんでも自分の命令が叶えられる。
もう二度と働くこともせず、探検家など命を落としかねない任務もしなくていい。
贅沢極楽三昧な暮らしにグリーンは堕落していく。
そして、グリーン側についた手下達は嘘の報告と国に献上した資源のおかげもあってレッドとブルーを守れなかった罪はとても軽く済んだ。
手下達は小島であった出来事をグリーンと口裏合わせをして亡くなった仲間達は野蛮な現住人に殺されたと国に説明するも、酒に酔い真実を話す者や仲間を見捨てたことへの罪の重みに耐えきれず真実を漏らす者もいた。
だが、真実を話した所で蟻が人を殺せるわけがない。どうせ作り話だと信じる者はあまりいなかった。
小島から手に入れた良質の資源は国に大きな利益をもたらし、女達も簡単な言葉を覚えさせて権力者たちにより家事や見世物など仕事をさせてられていた。
豊富な資源と美形な女達を権力者たちは見て国は小島の占拠を計画していた。
現住人を黙らせる兵力や武器、侵略後に手に入れた資源を国に運ぶための往復船を何隻も用意して侵略の準備が着々と進んでいく。
今まで他国を武力で侵略し支配して利益を得てきた。多くの奴隷を持ち、労働力が安定して武器の生産ができ次々と支配地を増やし他国から嫌われていた。
だが、この国で新たな問題が出ていた。
「あぁ、もうぅ!! またアリが出てるわよぉ!! メイドは何をしてるのかしらぁ!!」
グリーン達のいる国の王妃が庭でくつろいでいると騒ぎ始めた。
税金で自分だけ良い物を食べていたブタ王妃は王に仕事を押し付けて優雅に過ごしていたが、豪華なケーキに蟻が集っているのを見て機嫌を損ねてメイドをしかりつけた。
メイドは急いで殺虫粉を振りまき、庭の地面に羽を生やした羽蟻達の死骸が散乱していた。
「もう!! せっかく、いい気分でケーキを食べてたのに気分が台無しじゃない!!」
王妃の太い指には小島で手に入れた鉱石を加工した綺麗な指輪がはめられていた。
大好きな甘いケーキを蟻で汚されて気分を悪くした王妃だが、綺麗な指輪を見て表情が変わる。
「あぁ、綺麗!! 欲しい、欲しい!! この私に似合う素敵で綺麗な宝石が……もっと欲しい」
指輪の表面に不気味で醜悪な王妃の表情が映る。
一方で、王は小島の侵略について貴族達と段取りをしており会議室にいた
「くぅ、また蟻か…」
会議室のテーブルの上や窓に羽蟻が数匹おり、兵士は急いで殺虫粉を振りまく。粉を浴びた羽蟻は床に落ち動かなくなる。
「おかしい、グリーンが帰ってきてから国内に尋常ではない程に蟻が繁殖しておる」
今までこの国で蟻がこんなに異常繁殖したことはなかった。
城の中だけでなく、街にも毎日蟻の被害が出ていた。
飲食店では出された商品に蟻が入っており、客からのクレームや中には賠償問題が起きて店舗や食品業界に大きなダメージが出た。
民家にも侵入し寝ている者の目や鼻に蟻が入り、体内を酸で溶かされて流血し病院へ運ばれる者が多く医療現場は大きな負担を強いられていた。
あらゆる方面で蟻の被害が増大しており、蟻対策で殺虫粉の価格が高騰して中には、殺虫粉と言いながらただの塩を高額で売りつける悪質商法までする者も増えて経済も危うくなっていた。
グリーンが小島から持ってきた豊富な資源は他国へ高額で売却できたが、蟻の被害や殺虫粉の供給のせいで全て消えてしまった。
「やはり、港で船ごと沈めるべきだったか…」
国の悩みの種であった問題児がさらに問題を運んできて王や貴族達は頭を悩ませた。
国民からは蟻の対策について早急に何とかしてくれ、と声が上がっている。
グリーンへの詰問と蟻対策に金と時間を割くべきなのだが我儘な王妃と欲深い貴族達は小島侵略を早くしろと強く勧めてきた。
王妃は素敵な鉱石から作られる装飾品が欲しいと王に恐喝しており、貴族達は無能なグリーンが手柄を立ててしまい、このままでは自分達の立場が危ない、武勲を立てて出世しなければ。と、自分の出世の事しか頭がなかった。
さらに、グリーンが連れてきた美しい娘達にも目がくらみ自分も女が欲しいと思う馬鹿者もいた。
国としても探検隊に出した貴族2名が犠牲になっており、ここで仇討ちをしなかったら他国から何を思われるか…とにかく国の沽券にかかわる。
会議は欲望と利益を優先した判断が下され小島への侵略計画が進む。
グリーンからもたらされた情報で、島の人間達には銃や火薬などの武器はない。
せいぜい固い棒や石程度の武器しかないが、力は強く狂暴であるとグリーンの嘘情報を鵜呑みにして、接近戦を避けて大砲や銃など火器中心で責める方向で決まる。
支配している国から大量の火薬を没収し、奴隷達を休ませずに死ぬ気で火薬を運ばせば用意はできる。
王や貴族らは下々の命よりも自分らの欲を満たす事しか考えておらず、殺虫粉を受けたはずの羽蟻らが未だに生きている事に気づいていなかった。
そして、羽蟻達はギチギチと力強く牙を動かし黒紫色をした瞳は王族と貴族達を映していた。
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