第7話 召喚士として生きていくのだ僕は

今回はもちろん召喚の能力を貰うことにした。


意思疎通をとることが出来る動物なんて素敵じゃないか。


前世では賃貸マンションだったのでペットを飼うことが出来なかったが、本当は大型犬を飼いたかったのだ。


夜な夜な動画で観ていた可愛い動物たち…。


うへへ。


この世界の動物は知らないが、毛が生えている生き物なら、なんでも可愛がることが出来ると思うのだ。


早速教会の外でガリガリと魔法陣を描いて行く。


円の中に幾何学模様を描くのだが、神様に貰った能力はやっぱりすごいみたいだ。


絵などろくに描けないし、製図の経験もないのに、なかなか複雑な模様を頭の中に浮かぶままに描いていけた。


前回の力も発揮せず終わったが、本当に規格外だったのだろう。

452cmも身長があればそりゃそうだろうけども…。


少なくとも全くのハリボテなんて事はなく、効果自体はきちんと現れていたのだと思う。


いやー、フィクションの中のキャラクターたちはやっぱり肉体なんかも強靭だし、能力を得る過程での経験があってこそ、超スピードで動けたり色々出来たわけだよね。


能力だけ得られても、僕の様な事になるのだろうなぁ…。


魔法陣の製図自体は能力の助けを借りた結果10分ほどで完了し、いよいよ呼び出す準備ができた。


陣の端に手をつき力を込めると、複雑に描いた線に幻想的な光が立ち上がる。


おぉ…すごい光景だ。


見たことはないが、オーロラってこんな感じなのかな…。


光はだんだん強くなり、強くカッと光るとそこには白い毛に覆われた犬と馬の間の様な生き物が立っていた。


かっこいい…!


この子が僕の召喚獣なのか…と感慨深く見つめていると、なんとその生き物は喋り出した。


…?


なんて言っているんだ…?


そうか!言語がわからないのか!

この子が犬語を話しているのか馬語を話しているのか分からないがそりゃそうだよ。


口や喉の作りが全く違うんだからさ、仕方ないよ。

でもどうしよう。

せっかくなんか話しかけて来てくれているのに。


どうしようもなくあわあわしていると、召喚獣のおでこから光の糸の様なものが出て来て、僕のおでこの中に入って行った。


『我が名はヤイシャ…喚び出しに応じて参上した…。』


なんだ?頭の中に声がする…!


『汝が喚び出した者か…。

清浄な気配を感じる…。


名を名乗れ…。


それが縁となり、契約となるのだ…。』


…喋ってもかっこいいな、なんか荘厳な感じ。


僕はラルフ。

神様からキミを喚び出せる力を頂いたんだ。

だから清浄な気配がするのかも知れないね。


僕と契約してくれるかい…?


こちらをしばらくじっと見たヤイシャはゆっくりと口を開き言う。


『…真名ではないな。

様子から愚弄する気配は感じられないが、なぜ名乗らぬ。

それでは我との繋がりが出来ないのだ。』


真名…?

名前ね…!


はいはい、名前か…。


覚えてない!

覚えてないよ、あんな長くて馴染みがなくて変な名前!


ラルフィード…なんとかだ。


だめだ…記憶の隅に転がったりしてないかと思ったけど、認識を阻害する効果でもついているんじゃないかってくらいなにも覚えてない。


もじもじしている僕を見てヤイシャはため息をついた。


そりゃ自分の名前を覚えられない様なやつがこんな複雑な魔法陣描けるわけないと思うよ、僕も。


与えられたんだから仕方ないじゃない!


いや…まてよ…名前も同じヤツに与えられたんじゃないか!


なんだそれ!

どういう罠だ?


『すまないが時間切れだ。


しかし、自分の名前さえ理解せずとも我を喚び出したラルフには才能があるのだろう…。


またいつかあい見えることもあろう…。

その時を楽しみにしているぞ。』


ではな。

と言い残しヤイシャは光の中に消えて行った。

そうか、いつかまた出会えるかもしれないのか。


その時までには名前を覚え…るのは不可能だから、何か方法を考えておこうかな。


諦めて立ち上がり、伸びをした瞬間に目の前が真っ白になり、見慣れた神様がこちらを見ていた。


は?

死んだの?

なんでさ!

もういいって!

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