痴漢を捕まえたら女の子だったので、好きに触らせてみた結果、私が百合にハマった話。
木立 花音@書籍発売中
第一章「関係の始まり」
【電車の中で、始まるルール】
女性と恋に落ちてはならない。そんな言葉を耳にしたことは一度もない。
けれど、恋とは――。
男と女、オスとメスが織りなすものだと、世界は静かに暗黙のルールを刻んでいる。
その枠からこぼれ落ちた者は、「異端」と呼ばれ影に追いやられる。
「恋人ができたの?」と問われるとき、誰も性別を訊ねはしない。
「結婚はまだ?」と急かされても、相手が男か女かを言う必要はない。
なぜなら、誰もが知っているから――。
愛とは、異性の間でだけ咲くものだと。
私もかつて、そう信じていた。
高校の教室、今では色あせてしまったセピア色の記憶の片隅で、一度だけ心の扉を叩かれたことがある。
彼女だった。奈緒だった。
柔らかな声で差し出された好意を、しかし私は踏み潰した。
その手を握り返す勇気がなかったせいで、彼女の瞳に宿る光を私が曇らせたのだ。
スマホを出していじる。目の前を、ニュースのトピック映像が横切る。
『同性カップルに、法的に結婚を認める』という見出しが目に入る。もちろん、日本の話ではなかった。それ以外は、芸能人が起こした不祥事や、どこそこの国でクーデターが起きたという話。私が関与する世界とはまるで別次元の、遠い世界のニュースだ。
私はスマホを操作して、SNSアプリを開く。
フォローもフォロワーもいない、鍵アカウントを表示させる。タイムラインには、さっき見たのと同じニュースがいくつか流れていた。
【奈緒は死んだとき、どんな気持ちだった?】
どこにも吐き出すことのできない感情を、こうして時々ネットの海に放流している。誰も見るはずのない、返事がくるはずもない投稿を。
さながら、ネットの海の藻屑だ。なんの価値もないもの。
しかしこいつはちょっと不謹慎すぎるだろうと、投稿するのは自重した。価値があるとかないとか以前の問題だ。
――!?
お尻に誰かの手が触れたのは、そのときだった。
*
――――――――――
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12/9、【ラブコメ・美少女】部門に変更しました。
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