第5話 椎名真由美の思い
☆
私は彼が浮いている事を知っている。
彼はヒーローだけどリアルでは本当に知り合いが居ない感じで浮いているのだ。
だけどそれがどうした。
私は彼が明確に好きだ。
大好きだ。
だから。
☆
いきなり椎名真由美という瀬奈の友人に呼び出された。
俺は「???」となりながらも椎名について行ってから空き教室に入った。
椎名は空き教室に入ってから直ぐに俺を見据える。
俺はビクッとした。
「清水。アンタさ。あの子をどう思っているの?」
「あ、あの子とは?」
「あの子ってのは瀬奈の事。言い逃れ出来ないよ。何か関係性があるんでしょ」
「な、何かとは...」
「瀬奈はどうして貴方に構っているの?貴方なんかに」
「...特には」
するとガタンと椅子を椎名は蹴っ飛ばした。
それからイライラした感じで俺を見る。
「これだから童貞っつー奴は!」と怒った。
俺はビクビクしながら「は、はい?」となる。
それからイライラしている椎名を見る。
「私は怒ってる」
「何故?」
「あの子を大切に思っているのにあの子は何も話さない」
「!」
「だから手っ取り早くアンタに聞いた。でもアンタはナヨナヨしすぎて逆にイライラする」と俺に向く椎名。
俺はその言葉に椎名を見る。
椎名は「あの子は散々な目に遭っているから幸せになってほしい」と話す。
「...散々な目?」と俺は呟く。
訝しげに。
「あの子は裏切りによく遭っているから。幸せになってほしい。いい加減に」
「...それはつまり...」
「あの子は親にも。全てにも。見放された。だから笑顔なんだよ。いつも」
「!」
俺は衝撃を受ける。
それから彼女を見た。
椎名は歯を食いしばる。
そして勢いよく俺の胸ぐらを掴んだ。
俺を見上げてくる。
「アンタがもし。あの子を裏切ったらマジに許さないから。アンタを軽蔑する」
「...」
「私はアンタは星だと思っている。あの子の最後の。だから私は貴方とあの子の仲をこれから観察する」
「...」
俺は何も言えなくなり「...そうなんだ」とだけ言った。
それから俺は椎名を見る。
椎名は俺を見てから涙を浮かべて息切れしていた。
一気に捲し立てたせいだろう。
「俺は彼女を捨てる事はない」
「...」
「..,俺は絶対に彼女を蔑ろにしない」
「...なら良いけど」
椎名はそう言ってからドアに手をかける。
それから歩き出した。
そして暫く俯いてから俺を見る。
「アンタには期待している」
そう言ってから椎名は去った。
☆
教室に戻ると瀬奈が俺達を見てから「?」となっていた。
そんな教室の連中は俺を不愉快そうに見ている。
俺はその様子を見てから「...」となりながら椎名を見る。
彼女は何事も無かったかの様に仲間の下に戻って行った。
「やれやれ」
そう呟きながら俺はまた空イヤホンをする。
それから寝る感じで前の机に倒れた。
そして少ししてから尿意を感じたので立ち上がってから外に出た。
すると背後から「待って」と声がした。
「あの。真由美と何かあったの?」
瀬奈がそう聞いてくる。
俺はその言葉に「何もないよ」と返事をした。
すると瀬奈は「...うん。なら良いけど」と言いながら視線をずらした。
だけど直ぐに瀬奈は視線を戻す。
それからニコッとした。
「お弁当作ったんだ」
「ああ。誰にやるんだ?」
「誰にって貴方しか居ないよ?」
「...はぁ!?」
俺は絶句した。
何で?!、という感じで、だ。
それから俺は赤くなりながら彼女を見る。
彼女は頬を朱に染めた。
それから「私は貴方の為に。貴方だけに作った」と笑顔になる。
「お、俺の為?」
「だって夫婦だから」
「だからそれはゲームの中の...」
「私は本気で貴方を好いているから。ゲームだけじゃない」
「...!」
俺は赤くなる。
それから「はい。お弁当」と渡される。
そんか紙袋に入った布に律儀に包まれた物品を受け取った。
すると彼女はニコニコしながら「じゃあまた後で」と言って笑顔のまま去って行った。
俺はその様子に手が止まりながらも何とか見送ってから紙袋を見る。
「...俺なんかの為に」
そう呟きながら俺は弁当を見る。
それから先程の椎名の言葉を思い出す。
そして俺は眉を顰める。
瀬奈、彼女が。
そんなに酷い目に遭っているとは思わなかったから、だ。
俺は瀬奈の事を考えながら窓から外を見る。
そして歩き出した。
お弁当は有難く食べよう。
そう思いながら、だ。
☆
俺は中庭で瀬奈の手作りお弁当を食べる。
めちゃくちゃ美味い。
正直...あんなリア充なのに料理が上手とは。
かなり凄い。
そう思いながら俺は外を見る。
そうしていると中庭のドアが開いた。
それから瀬奈がやってく...瀬奈?!
「ここ空いてる?」
「あ、空いてるけど」
「やった。じゃあここ」
瀬奈は笑顔にまたなりながら腰掛ける。
俺はドギマギしながら周りを見る。
突然現れた美少女が俺なんかに絡んでいる姿に「何故アイツなんぞに絡むんだ」的な感じになっていた。
「周りの事は気にしない」
「...あ、ああ」
「ね?雄太くん」
「...しかし瀬奈。俺なんかにしつこく絡んでいるとどこぞの瀬古が喧しいぞ」
「気にならないから大丈夫。あはは」
瀬奈はニコニコしながら俺を見る。
それから瀬奈は笑顔になったままお弁当を広げてから俺に柔和になる。
俺はその柔和な顔にドギマギした。
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