邪神の一部をテイムした結果幼女になったので、そのまま魔王を倒して世界を平和にでもしてきます。(短編)
@AI_isekai
オープニング
鼓動
一話:邪神をテイムしたらしい
世界が誕生する遥か以前、有と無を分かつ神があった。
世界を作った神々は恐れ、人々は畏怖し、世界を震えさせる存在。
邪神と呼ばれるそれは、“かの手”ひとつで光を消し、文明を消し、存在を裏返した。
「選ばれなかった無数の未来や世界」は、その邪神の持つある空間に蓄積され、邪神はそれを管理し続けた。
無を「静かに、掌で抱き続けている」邪神の一部。
――
彼あるいは彼女もしくは"それ"は人格もなく、意思もない。
名を問えば、己の名を忘れ、意志を持てば、既にこの世から消え去る。
それはつまり、その
そのはずなのに。
「なんで、お前をテイムできるんだよ」
俺の名前は、セイル。ただの一般テイマーの俺は、あり得ない状況に独り言をつぶやいた。
いま、俺の目の前には、かつてワンハンドだったであろう少女が立っている。
黒い髪。蒼と黒が混ざる虚無の瞳。
装束はどこか時代が混在しており、胸元にはテイム状態であることを示す"隷呪の紋章"が淡く光り浮かんでいる。
「質問の意味が不明。私があなたを選んだだけ」
けれど、彼女は首を傾げるだけだった。
「“選んだ”って、ワンハンドに意思はないんじゃなかったのか!?」
叫ぶ俺を見つめて、彼女は微かに瞬きをする。
その瞬間、周囲の空間がヒビ割れ、雨が止む。
「……叫ぶと、空間が共鳴する。あなたの魂の波形が私に同期して、干渉が発生する」
「よくわかんないし、怖い説明だな……つまりどういうことだ」
「うるさいと世界が壊れる」
数刻前――
大雨のなか、雨宿りをしようと近くの洞穴に入った俺は、偶然にも黒く濁る水滴の中、ワンハンドが本能的に居ると確信した。
そして、その瞬間、咄嗟に"テイム"と言った、気がする。
そしたら、これである。
「まったく意味が分からない。なんでなんだ邪神が幼女って……」
「不満?テイムされた状態としても機能性能としても最適解のはず。魔王を倒す。未来を守る。世界を再構成する。油断を誘うこともできる。可愛い姿で貴方を癒すことも、いずれも可能。できないことは、この姿だと子を宿すことができないこと。望むなら、魔力の解放を行えば姿を自由に変えられる」
「ちがうんだよ……! そういう性能面の話じゃなくて、というか邪神と子作りとか怖すぎる!」
幼女姿の邪神が、俺の横で首をかしげる。
「なら、なにが不満?」
「その、あれだなんていうか……」
「なら、名前をつけて」
「え?」
「識別上、あなたが私を“隷呪《テイム》している”なら、名前が必要というか合理的。私は、“
「調子が狂うなぁ」
非現実的すぎる現実に、思考は正直明後日方向へ飛んで行ったまま戻っていない。というか冷静になった瞬間、発狂しそうで恐ろしい。
「……お前、自分が邪神ってことを理解してるのか?」
「してる」
「なら、テイムされていることも?」
「してる」
「そうだよな!?それで、どうして俺を殺さない?邪神に限って俺如きのテイム術で殺せなくなるなんてことないだろ」
「その通り、私はいつでもどこでも貴方を消せる。けど、それはそれ。これはこれ」
「便利な言葉だな」
「言ったでしょ、私が選んだ」
おそらく名前をつけるまで、この状況が進展することはないだろう。仕方ない、名前を考えるしかないか。
「……“ナノ”はどうだ?」
「ナノ……。微小、あるいは一億分の一。私がワンハンドの“ほんの一部”であることを示す呼称。……気に入った」
「まあ納得してくれたならいいんだが……」
「これから私は、あなたの右手となる。必要ならば、世界を壊し、魔王を殺し、未来を書き換える」
「お、おう……まあ、頼むよ。強すぎて逆に怖いけど」
「それと、あなた。寝る時、私の隣で寝て」
「いま世界を壊すより怖いこと言ったな!?」
「何も怖くない、当然のこと。それに寝息がうるさくても世界が壊れる」
「勘弁してくれ」
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