第5話 文字化けの怪 (提供者:モッチー(人間・男性))
田中氏(仮名)が味わった不思議な出来事と、最終的に彼を襲った悲劇は、ほんの偶然から始まった。
厳密に言えば、彼のクリックのミスがきっかけだった。ダウンロードしたゲームで遊ぼうと思ってクリックしたら、うっかり右クリックを行っていたのだ。
それだけならまだ良い。田中氏は、そこから更に「プログラムを選択して開く」を選び、何を思ったか「メモ帳」でそのプログラムを開いたのだ。
「おおっ……これは……」
メモ帳にて開かれたソレを眺めながら、田中氏は短く声を上げた。驚きの声だったのか感動の声だったのか。それはもはや判らない。田中氏だってどっちなのか解らなかっただろう。
メモ帳で開いたと言っても、別に意味のある文字列が露わになった訳ではない。
むしろ開かれたメモ帳に羅列されてあったのは、およそ人間では理解できない文字群、それも文字化けを含んだような代物だった。
とはいえ、そうした物が露わになっても、何らおかしな話ではない。そもそも、ゲームのプログラムは遊ぶために存在している。田中氏のように、メモ帳を開いて文字の羅列を見て楽しむようには出来ていないのだ。
文字化けだらけの羅列というのは、通常であれば不気味さを感じるものであろう。
しかし――田中氏は、文字化けの羅列を食い入るように眺め始めた。事もあろうに、面白そうだと思ってしまったのである。
それ故に、田中氏の日課に「メモ帳で様々なプログラムを開いてみて、文字化けの羅列を眺める」などという物が加わってしまった。
初めはそれでも問題は無かった。だが、ある時変調が起きた。
人というのは、意味のない所に意味を見出そうとする生き物である。田中氏もまた、そうした人の性質には抗えなかった。
すなわち、文字化けした羅列の中に、何か意味のある文字を見出そうとしたのだろう。そして意味を見出した文字を見たがために――発狂してしまったのである。
※
〈話題提供者のひとこと〉
話は以上です。ま、怖い話については俺の本業なんで、ざっとこんな感じですかね。え、これが実話かどうかって? さぁね。信じるか信じないかはあなた次第ってやつさ。ちょっと古かったかな(笑)
※※
〈総括〉
モッチーさんはオカルトライターと言う事は、過去にお話を伺っていたのですが、今回のお話もコンパクトにまとまっていて、恐怖感を程よく煽っているように感じられました。
鏡で「自分は誰ですか」と語りかける、ゲシュタルト崩壊のお話を彷彿とさせますね。いずれにせよ、やりすぎは禁物という事だと思います。
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