等身大の豪放磊落

本作を読み進めると違和感を覚えるだろう、「果たして、これは王道ざまぁ剣と魔法の異世界ファンタジーなのか」と。

その感覚は正しい。一皮むけば登場人物の誰も彼も女の腐ったような性格をしている。(決して女性蔑視の意図はない)
なんなら地の文だってその気がある。

そんなキャラクターしかいない小説は、別に他ジャンルでは珍しいことではなく名作だって多い。
単に前述のジャンルや往年の少年漫画ではなじみが薄いだけである。

主人公は粗暴でありながら勇敢、ヒロインの兄は思慮深く権謀術数に優れ、友人の騎士は思いやりに溢れた悪友。なるほど王道である。
残念ながらその実には皆優柔不断で周囲の顔色をうかがう性根や、誰かの言葉やあいまいな表現を逃げ道にする姿勢が見え隠れする。断じてヒーローの性質ではない。

しかし、それを王道のキャラクター像と地の文で見事覆い隠している。
この構造が主人公をはじめとしたキャラクターを非常に「人間臭く」「親しみやすい」ものに仕上げているのだ。
本作の魅力的な人物表現は王道ジャンルに新たな風を吹き込む力がある。

王道に慣れ親しんだ読者諸兄はこの違和感を嫌悪しないで欲しい。人は慣れないものに批判的になりがちなため、あえて辛辣な言葉を用いて本作の魅力を表現した。諸兄の違和感を言語化する一助となれば幸いである。

過剰に言葉を尽くしたが、私は本作を非常に評価している。
なにより女々しい男(決して女性蔑視の意図はない)からしか摂取できない栄養がある!
作者には今後も素晴らしい物語を紡いでいただきたい。応援しています。

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