第20話 第4階層 合格
「さて 、そろそろ矢を撃ち込む時間やねぇ」
想狐さんはそう言って妖力を使って7本の矢を浮かべ、それぞれに放つ。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!」
1つの部屋から大きな声がした。参加者の誰かに当たったんだろう。ものすごく痛ましい男の叫びが会場内に響いた。
「
その部屋からすぐさま声がし、穴が開いた障子を塊が覆う。
「(ダメだ······そうしたら、障子の開く道も閉ざし、水の出口も無くなってしまう····)」
そんなウチの心の声は届くはずも無く、痛みに耐えかねたと思われる男は障子を次々に
「がぼっ······ごぼっ······」
別の部屋から誰かが溺れるような声がした。
水屋が水でいっぱいになったんだ····。
水は肩ぐらいまで身体が浸かっても湯船に似た感覚もあって危機感は意外と感じづらい。
だけど顎付近まで水がたどり着いてしまえば恐怖は一気に跳ね上がる。
直前になって命の危機を感じさせるやり方。そしてその頃には自らの
未緒さんと龍吾さんは、一体どこの部屋にいるんだ······?
ガラッ―――――――――――
その瞬間、1つの水屋の扉が開いた。
「ふっ、見つけたぜ·····生き残る術を·······!!」
そこには未緒さんでも龍吾さんでもない2mはゆうに超えるスキンヘッドの屈強な大男が姿を現した。
「おめでとう。これで2人目やねぇ。最初の
想狐さんは空っぽの笑顔でその大男に拍手を送った。
男は急に目を丸くした。
「何っ!? この俺が1番じゃねぇってのか!? んっ······? テメェは確か·····」
男はウチの顔を覗き込んだ。そしてニタニタと笑い、ウチの頭にポンっと手を置いた。
「そうか、思い出したぜ。オメェ、冒険者の中で最強格だった
ウチにはその言葉に対して何も言い返せず、下を向くことしか出来なかった。
ウチは間違いなくあの人を死なせる原因を作った。そして力が無いことを言い訳に、こうして
ウチは本当にこれで良いのだろうか······。
すると、
ガラッガラッ―――――――――
ガラッ―――――――
勢いよく2つの水屋が開いた。
「未緒さん!! 龍吾さん!!」
ウチは大男の手を払い、2人に駆け寄り、手を取る。
「無事で良かったです。2人とも····」
未緒さんは優しく微笑んだ。
「蒼さん、今回も私たちよりも先に攻略法に閃いたんですね。私は開始早々、
「そうなんですね。良かったです·····」
龍吾さんの方も見ると、何故か俯き、表情は暗かった。
「私はこの試練で死ぬつもりで何もせずただ座っていた。大人しく溺死を覚悟したが、やはり息が苦しくなると立ち上がってしまい、天井ギリギリまで足掻き続けた。すると障子を破った矢の穴から水が抜けるスピードの方が早くなり、水が引いていったんだ。私は何も行動しなかった。だからこそ、生きるべき道を何も閉ざしてなかったからこそ、生き残ってしまったのだろう」
龍吾さんは自虐気味に笑った。
「どこまでも根性なしなんですね。あなた。試練で死なせてもらおうだなんて、あなたは何のために生きているんですか?」
未緒さん暗い顔で龍吾さんに吐き捨てた。
龍吾さんはただ何も言わず、下を向くだけだった。
龍吾さんは過去の罪を背負いながら生きている。それはウチも同じだ。
龍吾さんは過去から解放されたくて戦っている。ウチは、一体何のために戦って、そして生きているのだろう······。
「何だァ?オメェ仲間がいたのか?そいつらも全員しみったれた顔してんなァおい」
さっきの大男がまた絡んできた。
「何なんですかあなたは。逆にあなたに仲間はいないんですか?」
未緒さん小さい声だが、その声に
「仲間ァ? そんなもん必要ねぇんだよ。この世は力が全て。俺はその全てを手に入れる。そして足りねぇもんはある程度は自分で補い、無ければそこらの誰かを差し出す。基本だろ?」
大男はさも当然かのように言った。
「可哀想に······」
未緒さんのその言葉は大男には届かなかったようだ。
一触即発ムードになる前に立ち去りたい所だが、まだ全員が試練を終えてないので終わらない。
と思った矢先、
ガラッ――――――――――
「はァ··········ハァ·····ハァ····」
20歳前と思われる黒髪ショートで露出度高めの白の着物を着た女性が息を切らしながら出てきた。
「さて、これで第4階層の
想狐さんはそう言い、魔石と
ウチら3人は、誰も欠けずに生き残れた。
―――――
以上5名、
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