第9話(サキュバス編)ご飯、ちょうだい?
いつもの部室。
「きましたね、先輩」
「待ってましたよ」
「今日はまあサキュバス風に……とりあえずツノつけてみました」
「……もしかして先輩」
「ツノだけでがっかりしちゃいました?」
「私がえっちな衣装着ること、期待してたんですか?」
下から顔を覗き込み、煽るように言う。
「違う? へえ? 本当ですかね?」
「まあ別にそんなの、どうでもいいですけど」
「それじゃあ今日も始めますよ、先輩?」
挑発するような声で言って、パン! と亜矢奈が両手を叩く。
◆
「ねえ」
いきなり肩にもたれかかり、耳元で囁く。
「私、お腹空いちゃった」
「ご飯、ちょうだい?」
「……もう、意地悪しないで」
「私のご飯がなにかなんて、とっくに知ってるでしょ」
「ね、ご飯、食べさせて」
首筋に何度も軽いキス。
上に跨ってきて、身体が密着する。
「ちゃんとこっち見て」
「私をこんなに食いしん坊にしたのは貴方なんだから」
「責任とって、美味しいご飯をいっぱいくれなきゃだめ」
両手を恋人繋ぎにされ、鼻先にキスされる。
「ねえ」
繋いだままの手をそっとブラウスのボタンに誘導される。
「外して?」
ねだるような声。
「ここ、外だから?」
「知ってる。でも今、誰もいないじゃん」
「ねえってば」
ボタンを外す音が2回。
「ほら、貴方だって、いっぱい見てる」
「いいんだよ?」
「私は生きていくためにこういうことしなきゃだし」
太ももをそっと撫でられる。
「それに私たち、恋人でしょ?」
「こういうことは俺とだけしてって言ったの、貴方なんだから、責任とって」
「今くれなきゃ、空腹で死んじゃいそう」
「お願い」
「私のこと、助けると思って?」
ゆっくり近づいてきて、そのまま口にキスされる。
「……ね?」
もう2回、ボタンを外す音。
「お願い」
「ご飯、ちょうだい?」
「……私のこと、好きにしていいから」
パン!! と両手を叩く大きな音。
◆
「……先輩」
「なんでやめちゃうんです? いいところだったのに」
「とにかくボタンを閉めろ? ……別に、外からは見えませんよ。カーテン閉まってるし」
「……先輩? 別にいいですよ」
「だって、どうせ先輩は意気地なしですし」
拗ねたような怒ったような……そして、少し泣きそうな声。
「もういいです」
雑にボタンを閉める音。
「もう、こんなエチュードも今日で……」
「あと1日だけ?」
「……どうしてもやりたいテーマでもあるんですか?」
「……1歳差の、演劇部の先輩後輩?」
「それ、普段の私たちじゃないですか」
「いつもの設定で、恋人同士のエチュード?」
「……分かりました」
「明日が、最後ですからね」
念を押すように言う。
「じゃあ私、今日はもう帰ります」
早口でそう言って、亜矢奈が部室を出ていく。
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