捜査協力者

 翌朝私と御厨さんが捜査一課の刑事部屋にいると、バンと部屋のドアが開く音がする。入り口の方を見ると、部屋の中に一人の女性が入ってきた。


「御厨―、小川―、一時間後に会議室に行ってー」


 ギャルみたいな金髪を靡かせながらそう言ったのは、私達の直属の上司である捜査一課長、白鐘卯月しろがねうづき。課長はまだ三十二歳にも関わらず課長になったやり手だ。


「あの、課長、会議室に行けとはどういう事でしょう?」


 私が聞くと、課長は奥にある自分の席に着きながら答える。


「昨日の公園に事件、殺されたのって『グリーンクローバー』の元マネージャーでしょ? しかも、『グリーンクローバー』の元メンバーに事情聴取もしてるし。世間の注目度が高いんだよねー。だから、上層部が早々に捜査協力者を呼ぶ事に決めたの」

「ああ、そうなんですか……」


 私は頷きながら、ある二人の人物の顔を思い浮かべた。


 一時間後、私と御厨さんが会議室に入ると、既に二人がパイプ椅子に座っていた。私は、微笑んで二人に声を掛ける。


「お久しぶりです、花音さん、堀江先生」


 すると、こちらに視線を向けた精神科医の堀江先生が、穏やかな声で挨拶する。


「お久しぶりです、小川さん」


 堀江先生の隣に腰掛けている小学六年生の花音さんも、会釈をしてから言った。

「……お久しぶりです、小川さん」


 御厨さんと二人が挨拶を交わした後、私達四人は席に着き、早速事件の話を始めた。花音さんには類まれな推理力があり、捜査協力者として助言を求める事があるのだ。


「……とまあこのような状況でして、まだ事件の真相は分かりません」


 私が事件についての説明を終えると、堀江先生が質問する。


「成程。まだ関係者への事情聴取も済んでいないんですね。……それで、僕達はこれからどうすれば?」


 それに答えたのは御厨さんだ。


「俺達は今から事件の関係者に話を聞きに行きます。もしよろしければ、花音さんと堀江先生にも同行して頂きたいのですが」

「どうする? 花音」


 堀江先生の言葉に、花音さんは頷きながら言った。


「同行させて頂きます」



 移動する車の中で、運転席の御厨さんが口を開く。


「今日は土曜日だから花音さんは休みだとして、堀江先生もお休みですか?」

「はい、元々土曜日は休みが取れやすいんですけど、今日は花音と出かけようと思って休みを頂いていたんです」

「ああ、そうだったんですね。それなのにすみません、急に捜査に駆り出したりして」

「いえいえ、花音も捜査に協力したいと言ってましたから。ね、花音?」


 堀江先生に話を振られた花音さんは、少し恥ずかしそうにしながら無言で頷いた。

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