第26話

 ──夕方ノ紫ガ時刻ヲ変エテ降リテクル、夕焼ケガ爛熟シテ熱ヲ失イ、絹雲ニ角度ガ延焼シテイル……、今日モ何一ツ満足ナク、命ガ失ワレテイク──。

 ──薬効ニ糸ヲ引カレテ、小サナ部屋ヲ音デ満載ニ、車ハ目的地ヲウロツイテ走ル──。

 ──嘘ヲ抱エテ実家ニ戻ル、慣レタハグラカシ、同棲部屋ハ暗ク、あるばいと先ノ焼肉屋ノ火ガヤタラ脂臭イ──。

 ──燃焼スルぱいぷノ先ハ、イツマデモ人生ヲ燻ラセル、寿命ハイツモソノ日マデ──。

 ──離レテイク大学生活ニ、去ッテイク友人達ニ、避ケテクル性行為ダ、近寄ッテクルノハ胡散臭イ講釈商売ト、商品ト、りみっとガ目前ニナル卒業デキナイ単位ダ──。

 ──外ヘ出ルト、モウ日ガ暮レテイル、入店シタノハ眩シイ快活ナ午前ノ光ダッタノニ、一日ガ無為ニ消失シテイル──。

 ──小サナ音バカリ鳴ル、雑音バカリデ何モ手応エノナイ目ノ前ノ悩ミ──。

 ──海カラ離レタノハ、間違イダッタカモシレナイ、夜ノ箱ノ中ハ、現実逃避ノ苦行デ、閉鎖サレタ空間ハ煙草ト騒音ト熱狂ト、実ハ何モ楽シクナイ見栄ノ張ッタ踊リノ欺瞞ダ──。

 ──波打チ際デ一めぇぇとるヲ越ス波ガ崩レテ砂浜ニ叩キツケラレル、白波ニ揉マレテ回転スル無重力ノえねるぎぃぃハ、苦シクモ生キタ心地ガシタ──。

 ──スベテヲ一度ニ解決デキル鍵ハナイノカ、目ハヤッテクル事象ニ手当タリ次第釣ラレテイタガ、死ヲ迎エル遙カ前ノ、何モ描ケナイ塞ガッタ未来ニ焦点ガ向イテイタ──。

 「すいません、あのぉぉ、名古屋万博には、どうやって行けばいいですか」国道6号線に近づいた予感の信号待ちでふいに思いついて隣にいた赤いワンボックスの車に訊ねた。

 ──携帯電話ガ鳴ッタ……、掴ム物ハ何デモ良カッタ……、勘ガ働イタ、運命ダト……、イヤ、運命ニ仕立テアゲタ、今回モ……、何百回目ノ運命カ、ホトンドノ運命ハ事ヲ成サズニ去ッテイタ、ソレデモ、今度モ、自分ノ意志デ手繰リ寄セナイト──。

 五十円玉を入れて回すガチャポンに、空き缶のプルタブをはめて回すと、水に膨張するオタマジャクシが出てきた。誰かの真似がうまく行ったので、それを繰り返して、カエルやトカゲなど十体近く手に入れて、湯船に浸けた。何倍にも膨れ上がった両生類や爬虫類は、浴槽を満タンにしていた。

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