第25話
──ソレホド興味ノナイ球団ノ十数年振リノ優勝ヲキッカケニ着イタ大阪ハ、スベテ敵ノ圏外ダッタ、電車デ喋ル中年女性ノ関西弁ハ、萎縮サセテ口ヲ閉ザサセタ──(コンナ近イカラ、名古屋ノ言葉ハ多分、関東ト変ワラナイハズダ)乗り継いだ電車の距離は遠かったが、下道を走ってきた一日は数字で数えることができた。
(竹ハ一日デドレホド成長スルンダッケ)──地面カラ生エタ青竹ヲ頬ニ渦巻キ模様ノ忍者ガ跳ンデ行ッタリ来タリ──(株価モ急激ニ上ガルコトモアル)──おんらいんげぇぇむ会社ノ数字ガ伸ビテ今日ハすとっぷ──(今日ノ営業ヲ終エルニハ、ヤラナキャナラナイ事ガアル)──浴室ノ鉢植エハ前日ヨリモ三せんち伸ビテイル──。
待ったなしの速度はむしろ緩めたい気分の前を走っていた。待ち望んでいた先へ到着するよりは、まだまだ残る気力と体力をこのまま保持していたかった。変化を求めて動いたにも関わらず、その過程の心地良さにいつまでも取り巻かれていたかった。逃げていた学業からの門出はもっと冒険が待っているはずだった。しかし次の道路を曲がってしまえば、別の動きでピリオドを打たなければならない。それからの日常がいくら未来に満ちあふれた新生活だとしても、旅の苦労はもっと濃いものであるはず。こうもたやすく辿り着いてしまうなら、新天地の暮らしもそれに並んで薄っぺらなものになってしまう。功徳が足りない。捧げるべき道のりがまだ到底達していない。
山の奥の細道の、人界の及ばない自然に囲まれて、実際は別の所へ到達してしまうのではないか。そんな意識もちらつく両側の暗がりは、昼ならどれだけの色を見せることだろうか。車窓は夕方に終わりを告げて、街が後退して家屋の灯りだけになると、反射して映る自身の姿ばかり目に入る。地図が本当にこの世のマップを反映しているのか疑うことなく、描かれた線と図を頼りに進んでいる。
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