第18話
コンビニに寄ると、昼の休憩からそう待たずにビッグスクーターを止めたように思えた。ところが午前の時間ほど多くはなくとも、その三分の二くらいの数字が経過しており、得た情感の密度の差に違和感を覚えた。そしてすぐに、自然豊かな風景ではなく、工業道路のような通り道が思い出されて、ベルトコンベアの作業に近い実感だったのだとよそ見よりも目的の完遂が考えられ、とにかく浜名湖を欲しがって運転に集中していたと理解した。
風とマフラー音の凪いだ夕方前の大気に半端な静寂と無聊が立ちこめるようだった。コンビニから出てきた男女の話し声が耳に入ると現実の位置付けが平然とされるようで、孤独と異域の不確定が肌に張り付いて変わらない意識に侵入してきた。コンビニと国道という相性の普遍化によって静岡の西部を実感できないとはいえ、一日の経過がその遠さを知らせていた。ふと駐車している三台の自動車のナンバーを見ると、多摩や相模がなく、豊田と名古屋と静岡とあり、住み慣れた土地ではないことが明確に判然できた。もうそろそろ愛知に入り、見知らぬ名古屋をいよいよ知ることになると考えれば期待は高まるものの、大冒険の意気込みで朝を出発した道のりがこうもあっさりしていると、波乱なき夢見が悄然と萎れてきた。携帯電話で時刻を確認すると、浮遊感に浸る時間はもう過ぎたのだと再認識できた。ここまではただ道を走って景色を味わっていればよかった。ここからは一点を目指してルートを探していかなければならない。
コンビニに再び入り、本棚から観光雑誌のコーナーを見つけると、愛知万博を特集したムック本を手に取った。映画作品を選ぶ際に情報誌を慎重に開くのとは違っためくりでページを忙しく繰る手つきは、目的の画面を最初から探していた。巻頭と巻末に狙いを定めた早送りは脇目せずに、マップを開いた。
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