第11話

 ──初メテ参加シタ大学ノ大会ハ、猛者バカリダッタ、絶対数ガ鵠沼海岸ヨリモ絞ラレテイル……、一回戦惨敗ダ──。

 ──ソンナニ対決シテドウナル、モウ飽キタ、同好会デ一緒ノ者ニ負ケタコトガ理由デハナイ、日中ノ海ヨリモ、深夜ノくらぶニ切リ替ワッタダケ──。

 ──高校ニ行カナクナッタ理由ハ、ばいくノ改造費ト夜遊ビ、大学ニ行カナクナッタ理由ハ、ばいくノろぉぉんト夜遊ビ……、さぁぁふぃんヲ続ケテイレバ──。

 細かく覚えていなくても絶対的な記憶が小田急線の線路を渡ると、遠い昔の窓際から観た登山鉄道の光景は寄りつかず、昨年末のバスルートが登り曲がるテンポで情感を募らせた。

 ──秋モ深マッタ雨ノ冷タイ暗イ道ヲばすハ登ッテイク、ココマデ来ル楽シミヨリモ、天候ト先行キニ左右サレタ無言ガ窓ヲ眺メサセル──。

 緑に溢れた山道は急峻な箱根らしい道をくねらせていくので、ビッグスクーターはエンジンをより回転させて楽楽と登っていく。

 ──長ク急ナ山道ニすくぅぅたぁぁハ苦シソウニ唸リ、速度ハ五十きろ以上針ヲ回サナイ、他ノばいくモ同ジヨウダ──。

 ──少ナイ乗客ノばすハ重重シク道ヲ登ッテイク、一日ニ何度通ルノダロウカ、嫌ニナル鈍行運転ハ家畜ノヨウニ息ヲ苦シクえんじんヲ回シテイル──。

 車通りの少ない道は高低差をよそ見させて、日差しと木漏れ日に情景がきらめき過ぎるようだった。

 ──楽シサガマズ先立チ、後ロニイツモ調和シナイ物憂イガ黙ッテイル、遠出ハ必ズ期待感デコチラヲ弾マセルノニ、アチラハイツモツマラナサソウニシテイル……、ドウシテ──。

 快調にビッグスクーターが道を走るのは、電車でなければ来られないと思っていた場所に達した喜びがあるからだろう。

 ──渋谷ノくらぶニ車デ来ル、慣レタ事ダ、吉祥寺モ池袋モ、慣レタ事ダ──。

 ──ジメジメシテ寒イばすノ車内ニ冷エテイク、来ルベキジャナカッタ、温泉施設ガ開イテイナカッタラドウスル──。

 登り出しの記憶の直感以外は同じ景色も感慨も重ならなかった。季節も天気も違った。

 ──マルデ心中シニ行クヨウダ、先ノ見エナイ逃避シタ学業ト、ソウサセタ相手トノ熱ノ戻ラナイ関係ノ惰性ニケリヲツケル為ニ──。

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