第10話

 地図上で俯瞰する土地関係はわからなかったものの、さらに左の方へ行けば海があって、海岸沿いを走っていれば湯河原に到着するような気がした。

 ──小サイ頃ニ家族ト親戚デ遊ンダ旅館ト砂浜ハ、モハヤ小サイ空間ニ萎ンデ名残ヲ見ツケヅラカッタ──。

 ──海岸ハ、歩イテ着イタ長イ距離ヲサラニ広ゲテ、国道ニ車ガ走ッテイタ……、南国ダ──。

 すこし寄ってみたい気もしたが、懐かしむにしてはもう数年前の景色が固着しており、遊ぶにしてはサーフボードがなかった。

 ──台風ヲ迎エル前ノ吉浜ハ防波堤ニ巨大ナ波ガ突撃シテオリ、雨ト曇リノ激シイ暗サハ、小サイ背丈デ見タ明ルイ海ナドドコニモ見セナカッタ──。

 ──海ト波ヲ求メテ友人ト小サナ旅行ヲシタ、真鶴モタダノ駅名デハナクナッタ、玉石ニ冷タク綺麗ナ波ガ崩レル、湘南ヨリモ涼シゲデ小サナ海岸ダッタ──。

 ──昼ノ波遊ビノ後ハ、地元ノ銭湯デ浸カリ、友人宅ノ庭ニてんとヲ張ッテタワイナイオ喋リヲ──。

 範囲を広げるたびに予期せぬ得も言われぬ喜びを感じていた。小田原を過ぎて道は狭くなり、箱根らしい自然な山の麓へ突入していく。

 ──イツカラ、何モカモ満タサレズ、現実ノ学業カラ逃ゲテ、遠イ地ニ憧憬ヲ置クヨウニナッタノカ──。

 ──途切レタ波ハ、前触レナクヤッテキタ、意識モシナカッタ……、理由ヲ振リ返ルト、アッケナカッタ──。

 ──くらぶ活動ヲ高校生ノ時ヨリモ発展サセテ、再度ひっぷほっぷニ立チ戻ッタ……、ソレヲ言イ訳ニさぁぁふぼぉぉどヲ放ッタ──。

 ──日焼ケヲ気ニシテ……、ソウ言ッタ事モアッタ……、冗談ニナラナイ──。

 箱根は一つの目的だった。峠を難所として新世界への玄関口に見立てていたと訊かれれば、そうだと答えたはず。

 ──大学ノさぁぁふぃん同好会ハ、マッタク馴染メナカッタ、スデニ仲間ガイルノニ、ワザワザ作ル必要ガアルダロウカ、地元デハナイ、地方カラヤッテ来タ新シク始メル学生達ト──。

 ──立ツコトモママナラナイ時カラ一緒ニ海ニ入ッテイル、上達ヲ常ニ併セテキタ──。

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