無敵の人。
無敵の人。
って、いるじゃない?
もう人生終わってるから、何しても怖くないって奴。
社会の大迷惑。
癌。
ゴミクズ。
犯罪しようが、何をしようが、これ以上失うものなんてないし、もーどうにでもなっちゃえ~! 逮捕されてムショ入ることができればむしろご飯が食べられる。死刑になったらそれはそれでこのクソみたいな人生を終わらせることができる。
あの時のわたしはそれに近かった。
だって、もうこの学校通えないんだなー。って、それとなくだけど思ってたし。良いキッカケだなって思ったから。
そりゃ思うよ。
お母さんあんなんだし。
お母さん"ら"ね。あんなんだからね。
続きから。
ひろきは結局負けた。
うがぁー!って熊みたい威嚇してきたのが、もう全然隙だらけで、わたしは思わずそのだるんだるんの腹ぱぁん!って殴った。
殴っちまっただ。
「お、おおう」
って情けなく蹲るひろきに間髪入れず、竜也が「乱戦だー!! ヒャッハー!!」って本当に漫画みたいに「ヒャッハー!!」って言った。
「えぇ……?」
なんか竜也のテンションがキモくて引いたわたしだけど、そんな気持ちも長くは続かなくって、後ろにいた奴に腕取られて抑え付けられてバンザイさせられた後にもみくちゃにされた挙げ句……、目の前のただ向かってくる奴をげしげし蹴ってる最中、横ッ際から誰かがわたしのスカート掴んで、下にずりおろした。
「ぎゃああああ。パンツ見えてるううううううううううううううううううううううううう」って男子の下品な騒ぎ声とわたしの「あああああああにすんだああああああああああああああああああ」って怒りの声が重なる。
こういう時にしおらしくできれば男子たちはむしろおずおずとやっぱりやめとこうぜ……? って空気になるかもしれないけど(知らん)、そこはわたし。
ガンガン抵抗するし、ガンガン蹴っ飛ばすし、なんなら後ろの奴にガツンガツン頭突きする。
もうぐっしゃぐしゃのわやくちゃのメタメタになりながらも、正しく乱戦。
全員が全員ムキになってる雰囲気があって、それでもやっぱり多対一はどうしようもない。
終いにはわたしは着ていたシャツ脱がされ、ずりおろされたスカート引っ掛かってこけた拍子にパンツも脱がされた。
流石にそんな状態ではまともに立ってることも怪しくなるわたし。乱戦の最中、地面で死んでる竜也だけは足蹴にして再起不能にすることができたけど、目の前に何をするでもなく立ってたしゅんくんが(つかいたんだって思った)おもむろにぽけっとからスマホ取り出してぱしゃりとやった時点でわたしは固まってしまう。
「しゅんくん」
その時になってはじめてわたしはこの構図に竜也以外にも、しゅんくん、さらにはしゅんくんからまあちゃんの大いなる意図を感じ、あぁ、これ復讐だ……ってなって(勝手にそう感じて)動けなくなってしまう。
ぱしゃり。
ぱしゃり。ぱしゃり。
4人くらいいたと思う。
この年齢だとまだスマホ持ってる人、持ってても学校にまで持ってきている人は少ないから。
わたしがす、す、す、すっとようやく半泣きで涙に顔滲ませながら散らばった服を着ている間にもその音は響いている。男子共はそれをじっくり見ていた。観察していた。
わたしの裸を。
小さな胸を。小さな乳首を。毛も生えていないま◯こを。
ちびなま◯こを。これは今思いついたダジャレだ。関係ない。
この時点で気持ち悪いとか以前に何も感じなくなっていたわたし。
服は取られなくてよかった――、なんて。
いいや。例え取られて素っ裸だったとして、その方が戦えたかもしれない。無敵以上だ。へへ。
当然、靴も脱がされている。
靴下はどうでもいいや。ってどっか行って見当たらなかった靴下見て思ったわたしが靴を履き終える頃には、男子たちの間に『へへっ。やってやったぜ』って雰囲気が漂いだしていて、みんな必死こいていたのが、だんだんヘラヘラに変わり出している。
そのタイミングでわたしは近くに転がっていた小石をスマホ持っていたしゅんくんに思いっきり振り被って投げた。
『ゴっ』ってすごい音が鳴って、それはしゅんくんの生えたばかりの永久歯が永久に失くなってしまった音だった。
「うぇ」「あ、あ、」とか鼻息、ぜいぜいという吐息混じりに、見る見る口を血だらけにしたしゅんくんにずんずんと近寄るわたしを止める者は誰もいなくって、みんなが道を開ける。
しゅんくんはスマホを取り落としていて、わたしはスマホを手に取った。しゅんくんの見ている前でスマホを地面に置いたままテコの要領で靴で挟んでへし折る。
iphoneが粉となる。
それだけじゃ飽き足りなかったわたしはまあちゃんが大好きなしゅんくんの顔をぐちゃぐちゃにしてやろうととりあえず目を潰して鼻を折る。手に持っていた石で行った。
後で聞くところによると、鼻は治るが右目は失明したらしい。左目もやってやればよかった。
地面に転がっている竜也に目を付けた。
五指を折ってやった。
片方だけで済ませた。
それから、逃げ出す男子を全力で追いかけた。わたしはひとりオロオロするひろきを足蹴にし、「捕まえろ! あいつ! 次あいつ!」と次々命令。ひろきはデブだが、まあ、やる気になれば動けるデブだ。単純に本人も言うようにでかいのだ。横にもでかいが、縦にもでかくて、つまりは歩幅が大きい。
ひろきは速かった。
俊足だった。しゅんくよりしゅん!って感じに動く。
命令されるがままに動くひろきはスマホで撮ってた残り三人を全員掴まえてきて、わたしは一人残らずスマホを丁寧に圧し折ってやる。泣き言か恨み言の如く、「へへえへっへえ。もうデータ送ってやったから意味ねえよ」って言ってくる奴はいたけど、つか全員そうだったけど、わたしはそんなこと知るもんかってあいつらの見ている前で最新式の親の七光りiphoneをひとつ残らず圧し折ってやったし、ついでに全員の歯を圧し折ってやった。
もう、光は見えないようにしてやろう。
そんな想いがあったわたしは、しゅんくん以外のそいつらの目を狙って石をガンガンやったし、つか指突っ込んだし(ゴリッっていった。案外目って硬いんだって思った)、その間にもひろきがバンバンアホの男子共捕まえてくるもんだから、ひろきと一緒になって、全員の歯と目をやった。
殺った。
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