「なんで?」
「なんで?」
純粋に聞いた。が、次の瞬間には
「いいよ」
と言っている自分がいた。
「おいおい。いいのかよ!」
流石に! といった調子で、外国人がよくやる『ホワッツ!?』みたいに両手を大きく広げてわたしに詰め寄るお姉さん。
おばあちゃんは落ち着いたが、今度はオロオロしている。すりこぎ棒片手にオロオロするおばあちゃん……だけど、見た目26のふつーに大人な女性は、なんだかサイコパスっぽくて怖い。
オロオロしたまま殴ってきそう。
わたしはとりあえずおばあちゃんに近寄りすりこぎ棒を取った。抵抗なくわたしの手に収まる。
わたしはすりこぎ棒ぺたんぺたん鳴らす。
「変なことしたらコレで殴ればいい」
「いやいや。見られるだけでマズいんだって。こんなチャラい詐欺師みてーな兄ちゃん。NPOって。暴力団の隠れ蓑か何かだろ。どうせ」
「ちげーよっ!」
よく云われるんだろうな……とタメダの見た目を見てやや呆れて思う。
タメダは言った。
「見たいのは通帳の取引履歴の方だ。口座番号だのが載ってる表紙や最初のページは見ないようにするし、何ならテープ貼って隠してくれてもいい。第一暗証番号分からないと引き出せもしないだろ? それは聞かない」
「たりめーだ」
「ないとは思うが、暗証番号に設定していそうな……例えば生年月日だのの欄だって必要ならば隠してくれ。あとは、」
「言い訳がかえって如何にもだな。やっぱ詐欺師だぜ。コイツ」
「だあっ! めんどくせーな!」
「ふぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「あ?」
「あぁ、起きちゃった」
おばあちゃんが赤ちゃんお母さんに駆け寄った。いやいやするように首を振り駄々っ子みたいに近くにあった古い、わたしのおもちゃの人形をこちらに投げつけてくる。
腕力は成人女性並みな為、思いっきり投げられて当たるとヤバい。
わたしは手に持ってたすりこぎ棒ですぱんっ! と下に叩き落とした。一部始終にタメダがドン引きしている。
「あれが赤ちゃんお母さん」とタメダに紹介した。「おぉ」どう返していいか分からないタメダに対し、「もういいよ。そこの引き出しに入ってるからてきとーに見といて。お姉さんはタメダが変なことしないか見張ってて? これでいいでしょ」とこれまたてきとーに示し、赤ちゃんお母さんにおばあちゃんに遅れて駆け寄った。すりこぎ棒は危ないからソファの端っこに放り投げる。
「はーい。赤ちゃんお母さーん。あいちゃんですよーーー!」と手をぱたぱたやって泣き喚くお母さんを抱いた。
抱擁。
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