「なんで?」
「なんで?」
わたしは首を傾げてた思う。
タメダは「今は元ヤンって言っても通じねーのか」と、がしがし頭をかいている。
勘違い。
通じてるわ。わたしが誰だと思ってる。
「昔、やんちゃしてたのか、けっこう悪い遊びしてたのか、とか。まあ、そんなニュアンスだよ」
お姉さんがおばあちゃん掴みながらわたしに小声で言った。「わかってる」とわたしは返事する。
「そうだよ? それがどうしたの?」
今聞くことじゃなくない?
ばかなのタメダと思ったところで、タメダの真摯な瞳にまっすぐ見られていることに気が付いた。わたしはぐっとなる。
「あい」
「やめろ」
「まだなんも言ってねーぞ」
「その目やめろ」
「ああ?」
「フッ!」
思わず、といった感じだけど、思いっきり吹き出したお姉さんを軽く睨んで、わたしは上目遣いでタメダを見やった。
「……なに」
タメダが口開く。
「あい。それから……ご家族へ、モノ頼む前に、何か言う前に、話する前に、まず俺の身分を明かしたい」
タメダが片膝立ちしてわたしの目線に自分を合わした。わたしはやっぱり首を傾げている。今更タメダのことなんてどうでもいいよと思いながらタメダの秘密を知れることがなんとなく嬉しい自分がいて、けれど今じゃなくていいな、とか、知りたいようで知りたくなかったな、とか、こんな風にして知りたくなかったって自分がいて、モヤモヤ。
モヤモヤ。
「うん」
わたしはタメダにした中で今まで一番元気のない、けれど一番子供っぽい「うん」って返事をする。
ちょっと怖かった。
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