うん。
うん。
わたしも我が家ながらひどいと思う。
「通報されてないのが奇跡ってくらいにな。人はいるようだから、今んとこは見過ごされてるって感じか。にしてもそれもいつまでもつかだが」
タメダを家に通す。玄関はゴミで入れない為、ぐるりと回って掃き出し窓のある庭へと赴く。
タメダはふと目をやり、屋外のガレージに停めてある車をじっと見ていた。車好きか?
掃き出し窓はコミちゃんの腕みたいに瞬時に修復しているなんてことはなくって、びゅーびゅーに風が居間へと吹き抜けるくらい穴だらけだ。
コミちゃんが人間じゃないなら、べつにコミちゃん以外でもいいけどお母さん集団の誰かが、なんらかの特殊な、都合のいい能力とか持ってて一夜にして窓を直してくれるんじゃないかとそんな妄想をしていたのだがそんなことはなく。
あの後。
夕食の買い出しがてらスーパーに寄ったわたしたちはそこで段ボールをたくさんもらってきた。特定の場所に置いてあって誰でも無料でもらえる。
お母さん集団と家まで運んで切ってガムテで貼った。
図工だ。
図工は5だ。
割と上手くいったが、段ボールが足りなかったため、手が回っていない部屋もある。
スーパーはおばあちゃんとわたし二人でどうにかして、他は外で待ってもらってたから目は引かなかった。
「ご対面か」
タメダが言う。「しかしでけー家だな。もったいねえ」ぼやきながらテラスに足をかける。わん!とピケットが鳴く(命名:コミちゃん)。タメダがびくっとする。わたしもびくっとする。なんちゃらコッカースパニエルだ。小うるさいから苦手。
「リビングにいんのか」
「わたしの部屋だと狭すぎてあの大きさの犬三匹は無理」
「ふうん」
「犬大丈夫?」
「噛まなきゃな」
「じゃ、大丈夫」
わたしは無理だけど。
できる限り近寄らないで欲しい。
わたしは段ボールの壁の前でどうしていいか分からないタメダの前に回り込むと、「ここで待ってて」と手を向けた。中に入る。
「そっから入んのかよ」
タメダがツッコんだ。
スライドするという窓の構造上、厚い段ボールで穴を塞いでしまえば窓をスライドした際にせっかく貼り付けた段ボールがぜんぶ落っこちてくるってことが分かった為、わたしたちは早々にやり方を変えた。
段ボールに一部穴をつくってそこからくぐる感じにした。
アレだよ。猫が入る扉……キャットドアみたいな感じ。ぱったんって閉まるやつね。
「入ってきていいよー」
わたしは家族(?)に説得を試み、外で待機するタメダに声を掛ける。なんだか大人と、かくれんぼとか秘密基地とかのごっこ遊びしているみたいだなと思いながら、段ボールのドアから徐々に表れるくるくるパーマを見ている。
横では鼻息荒くし、すりこぎ棒持ったおばあちゃんがいて、そんなおばあちゃんをお姉さんがとりあえず捕まえている。
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