第57話

 あれから魔境・獣の森に簡単に行けるようになったからこそ、週に2回は獣の森でモンスター討伐をしながら過ごしている。


 何度も中層のモンスターも戦うことで中層のモンスターの動きもだいぶ見極められるようになり、僕のことを認識しているモンスターに当たる命中率も60%を超え始めていた。


 順調に僕とリムに20匹のスライムだけでも中層の探索が可能だと判断した頃に、僕たちは中層の奥に向かって進んで行く。


 『見つけたみたいだよ。』


 「どんなモンスターか分かる?」


 『ペネトレイトディアだよ。数は5匹みたい。』


 それからリムに斥候役のスライムたちが発見したモンスターの情報を確認しながら、僕たちは隠れるようにして目撃したモンスターのペネトレイトディアの元へと向かって移動して行く。


 こそこそと移動しながら斥候役のスライムたちの元までたどり着いた。


 スライムたちが監視しているペネトレイトディアの群れの姿を確認すれば、そこには獣の森に幾つもある泉の水を呑気に飲んでいるペネトレイトディアの姿がそこにはあった。


 「僕が攻撃したらみんな攻撃開始だよ。」


 弓を引く際に音が鳴らないように注意しながら引いて、僕はペネトレイトディアの1匹に狙いを付けてから矢を放つ。


 こちらを認識していないペネトレイトディアの頭部に命中し、ペネトレイトディアは地面に倒れた。


 あのペネトレイトディアはしばらくして動きを止めるだろうと判断し、僕はスライムたちが突撃するのを見送りながら次のペネトレイトディアを狙って矢を放っていく。


 だが、流石に仲間のペネトレイトディアが殺されたことで周囲に注意を向けていたせいで致命傷を負わせることは出来なかった。


 それならと、僕は倒すのはスライムたちに任せてペネトレイトディアの動きを制限させるように攻撃を仕掛けることにする。


 角を使った刺突の突撃をさせないように走り出そうとするタイミングを狙って、僕はペネトレイトディアに向けて矢を放って攻撃していく。


 「間に合わない。」


 1匹のペネトレイトディアの突撃を妨害するのが間に合わなかった。


 しかもペネトレイトディアが狙って来たのは突撃の妨害ばかりして来る僕だ。


 『させないよ!!ボクがマスターを守るんだからね!!』


 僕の前にリムが飛び出すと、その身体を最大サイズのスライムであるラージスライムと同じサイズまで大きくなる。


 30センチほどの小さなスライムのサイズから1メートルを超えるサイズに変わったリムにペネトレイトディアも驚いているように見えたが、それでもペネトレイトディアの駆けている足を止めることなく角を僕の方に向けながら突っ込んで来る。


 そのまま大きくなったリムにペネトレイトディアは突っ込んで、そのまま僕の元まで突っ込んで来るのかと思われた。


 だが、リムがその身体をスチールスライムとミスリルスライムの力を借りてプルプルボディが金属製のミスリル合金ボディへと変化する。


 ガギンッと金属と金属が衝突したような音がして、リムの金属ボディとペネトレイトディアの貫通に特化した角がぶつかり合う音が泉に響く。


 そして僕は完全に動きを止めているペネトレイトディアの角と角の隙間を狙って矢を放ち、ペネトレイトディアの頭部に矢が深々と突き刺さってペネトレイトディアはそのまま地面に倒れ込んだ。


 「リム、大丈夫?回復する?」


 『少しだけ減り込んだだけだから大丈夫だよ。それよりも他のペネトレイトディアを倒さないと!!』


 「そうだね!」


 まだ残っているペネトレイトディアはスライムたちに集られているが、それでも必死に抵抗してスライムたちをどうにかしようとしている。


 僕はそんなペネトレイトディアを倒す為に急所を狙って矢を放っていくのだった。

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