第29話

 僕がアロースライムから受け取った矢でスライム種を射っている間に前線でこちらのスライムたちが大きく減らす事態が起きていた。


 「暴れ過ぎだよ、リム。」


 ラージスライムと同じサイズに身体を変化させたリムが、身体のあちらこちらを武器に変えてスライムたちを攻撃していた。


 あのままだとこちらのスライムたちだけが数を減らしてしまうことになる。


 僕は狙いをリムに変えて矢を射る。引き絞った弓から放たれた矢が武器と武器の隙間を通り過ぎてリムを貫く。


 「あまり効いてない。アロースライム、矢の大きさをもっと大きくして。今の大きさだと効かない。」


 アロースライムはすぐに僕の指示を聞いて変形する身体の大きさを変えて矢へと変える。


 矢のおおきさが大きくなったせいでアロースライムの身体の体積が大きく減ってしまうが、これは僕がスライム召喚でアロースライムを召喚する回数が増えるだけなので問題はない。


 長く太くなった矢を弓につがえると先ほどと同じようにリムを狙って矢を放つ。


 『どうから来るのか分かるんだから効かないよ!』


 念話を使ったのだろうリムの声が聞こえた。リムの言う通り、先ほど放った矢はリムがスライムマジシャンの力である魔法で迎撃して威力を落とすと、身体を変形させている武器で叩き落とした。


 「次、ちょうだい。」


 これは予想済みだ。今の僕の役割りはリムの意識を少しでも僕に向けさせることだ。そうすれば、それだけで他のスライムたちに起こる被害が減るのだから。


 アロースライムが渡して来る太く長い矢をリムに放ち続ける。アロースライムが絶え間なく普及してくれているから問題はない。


 矢を射って射って射りまくる。僕がそうすればするほどにリムは他のことに力を割くことが出来ずにいた。


 『マスター!しつこいよ!!』


 「こっちに攻撃してきた。守りは任せたよ、ラージスライム。」


 すぐ近くのラージスライムを盾の代わりにする為に移動すると、僕の前に出たラージスライムが僕の代わりにリムの魔法攻撃を防いでくれた。


 「ポーションスライム。急いで回復を!」


 ポーションスライムが傷付いたラージスライムに身体から出したポーションを降り掛けて回復させていく。


 これで傷付いてもすぐに回復する盾の出来上がりである。本当はもう少し上手い使い方があるのだろうが、今の僕にはこれが精一杯だ。その間にもアロースライムを新たに召喚してリムに向かって矢を射っていく。


 そしてお互いのスライムたちの数も減ってきた。もう既に最初にスライムを召喚した時と比べて数はお互いに3分の1くらいだろう。


 それもこちらは前衛担当のスライムを多く失って、リム側は後衛担当のスライムが僕の矢で数を減らしていた。


 ここから僕は新しいスライムを召喚することが可能だが、リム側はスライムを減らしていく一方になるのでここでスライム合戦は終了となる。


 お互いに今現在も残っているスライムの数で勝敗が決まる。もちろん僕の方はスライム合戦が始まってから召喚したスライムを数に数えるのはなしだ。


 『今回はボクの勝ちだね!マスター。』


 「前半でリムに一気に減らされたもんね。あれがなかったら、まだ分からなかったよ。」


 今回はリムの勝利で終わった。前線で戦うスライムが多かったのが原因であるが、スライムたちの役割り的にそれは可笑しくないのでこれは僕のスライムたちを動かす方法が悪かったのだろう。


 負けたのは悔しいがこれで少しは戦闘経験をリムに蓄積させることが出来たはずだ。


 僕が召喚する全てのスライムに繋がっているリムがそれだけ経験を積めば、召喚するスライムたちにも反映されて上手い戦い方をしてくれる。


 規模の大きなスライム対スライムの戦いだったが、激しい戦いを終えた僕はスライムたちに練兵場を整地させて行った。

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