第2話けして寂しくはない

書斎は沈黙に包まれていた。聞こえるのは、僕のタイピングの音だけ。

やっと、猫たちの話ができる――そう思うと胸が高鳴った。


書斎行く前リビングで猫たちがのんびり寛いでるのを確認した。

書斎に行く僕の姿をちらりと見られたが、ついてくる気配はなかった。


大丈夫、だいじょうぶ。


前回はこじろうがキーボードの上に鎮座して、何度下ろしても登ってきて苦労した。

これでやっと君たちの話ができると思うと――そう思うと嬉しかった。


ちらり


背後を振り返る。物音ひとつしない。


立ち上がり、ガチャ


廊下を見るが、誰もいない。


前はあんなに僕を求めていたのに。

気になってリビングを覗く。


こじろうは腹を天井に向け、無防備に寝ころび、お福は箱座りし、目だけこちらを追ってきた。

その瞳はまるで、「何用ですか」と言っているようで。


そう言っているように感じ、そぉっと扉を閉じる。


書斎へ戻るとドアを閉める音が、やけに大きく響いた。

書斎の空気は冷たく、指先がキーを叩くたびに孤独が増していく。


大丈夫、大丈夫。

胸の中で風船がしぼむような感覚を押し隠し、わざと大きな音を立ててキーを叩いてやった。

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メスの福とオスのこじろう つまさき彼方 @pochomu0927

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