これ……私だ……

「と、言うわけでございます」


 王城から帰宅したエレノアは、レイズの説明を聞き困惑した。


「で?その……なにかありましたか?」

「執務資料はそれらしきものは見当たらず……ただいま本の精査を始めていますが何分量が多いので……暗号かただの隠語なのかわからず、専門家を呼ぼうと」

「わいせつ本の専門家?」

「統一性のない隠語であれば暗号の可能性があるかと」

「レイズはどう思いますか?」

「金髪の令嬢物が少し多いなぁと」

「そうではありません」


 誰がノミ男爵の所持する男性向け本の傾向を聞いた!


 エレノアは少しだけイラッとしながら再度意図などを聞いた。


「実際どうなのですか?」

「ギャンカス公爵閣下の好みの男の性癖を調査しに行ったのですが……」


 何を言ってるんだコイツ……。


「違うのですか?直接名指しで爵位を継承させると言っていたので……囲い込みかと」

「私の婚約破棄を賭け事にずる度胸があったからですよ、まぁ……その度胸を買って囲い込んだんですけどね、どうですか?」

「全部持ってけ問くらいには度胸はありますよ、知らないとはいえ危険なものがでてきたら今のノミ男爵のせいになるんですけどね。一度全て差し押さえられたとはいえ我々が見落とすわけがないので危ないものがある可能性もちゃんとあったんですが……」

「そのわいせつ本だけと」

「はい、その通りです」


 わいせつ本を女性に見せつけて性的快楽を得るタイプかな?

 と思ったけど想定外だし、現場にいたのはレイズだけだし……。


「ちなみに公爵閣下に似ています」

「そういう世辞で喜ぶ女性は多分いないですよ?」

「自白によりますと本人が持っていた本は『貴族令嬢の艶めかしい夜』『婚約者のことは忘れて……』『金糸のベッド』『私の子供は愛するあなたの子~夫は知らない私の秘密~』『高貴な女性と愛をささやけ~公爵令嬢と取り巻きの私~』その他多数で……今挙げた本は全員ヒロインが金髪の女性です。あと男より女性の方が身分が上ですね」

「……ちなみに金髪の女性はその手の本では珍しいのですか?」

「いえ、別段珍しくはありませんが、こうまで偏るのは好みでしょうね」


 まさか……本当に……?

 確かに謁見の間で全身全霊をかけて支えるという高位貴族式の告白はされましたが……。

 男爵で、しかも恐らく相続することのない地位であったノミ男爵はそれは知らないはず……。


 まさか…………。その本でそのような知識を得ていたとしたら?

 私は告白をされていた?あんな謁見の間で?


「その本、精査はいつ終わるのですか?」

「本人が持っていたと自白している物は終わりました」

「…………一応確認します、書き込みなどはないのですね?」

「ええ、それはありません。ただ一般出版物か疑わしいものもあるのでそちらの精査には時間がかかります」

「とりあえずそちらは私が確認します。貴族的な暗号の可能性もあるので」

「それは調べましたが……?」

「裏稼業の貴族のものかは調べましたか?」

「いえ、さすがに……ただ違和感があれば気が付くはずなので」

「では調べます」

「…………わかりましたお部屋に運びます」




 数多いですね……。なんですこの数?

 男の人はこういうものが好きなんですか?

 なんか表紙の女性私に似てますね、なんか嫌ですね、本当になんか……いやですね……。

 これ普通の量なんですか?

 うわ、なんで大体婚約者がいる令嬢を……NTR好きなんですかね?

 あーなるほど……へー……ん?

 …………あー……

 これ私だ。


 次、あーなるほど、婚約者の男はまんまですね……はー…………

 へー……うん、これも私ですね。

 私の内面がよく描かれています。なぜ……?


 気を取り直して次!

 ああ、それ特化ですね……。

 ああ、この感じ……あれ?この人……挿絵も含めて私にそっくりですね……。

 このベッドの描写……私のベッドと同じもの……。

 これ……私だ……。


 ああ、これも……結婚後の事業は私がやりたいと思ってたものですね。

 ああ、確かに……えっ、そんなことまで……息子の名前も私が候補にしていた名前だ……。

 私なんだ……。


 えっ、じゃあこの本も!

 ああ、私がノミ男爵につけようとしていた取り巻き枠の仕事だ!

 まさか……これを見越して……?

 だから私の婚約破棄を賭けの対象にして派手にやっていたの?

 だからお金を多めに払って私に注目されようと?

 まさか、私が……この私が手のひらで踊らされていたというの?


「公爵閣下、精査は終わりましたか」

「あ、ああ…あー…あっ、えそう、そうね……」

「まさか、精査ではなく真面目に読みふけっていたのですか?」

「いえ、ただ内容が内容で……」

「えっ?その中で過激なものはありませんが」

「えっ!?これで?」

「ええ、そうですが……自白されてない本はもっと過激ですが……」

「やはり高位貴族の金髪の令嬢が婚約者に不満をいだいてという話ですの?」

「え、はい。そうですが?」


 やはり……ノミ新男爵……。

 私を狙っているんですね!

 やはり、謁見の間の言葉は告白だった……!

 まぁまぁ引いてる私と嬉しい私がいますね。元の婚約者が駄目だったのもありますが……。


「ノミ新男爵は……悪い噂はありますか?女遊びが激しいとか、下町で遊んでるとか」

「いえ、特にそのような噂がないということはお伝えした通りで……」

「そうですか」


 遊び人ではない、本気で私を狙っていますね?

 …………いいでしょう、私を狙っているなら落としてみせなさい。

 私は自分を、自分の持つ全てを賭けるわ!

 勝てば総取りさせて上げる。


「レイズ、ノミ新男爵は私付きで。そうね……うん、公爵家の新参寄り子のまとめ役をやらせましょう!この貴族の大変化で私の派閥に入りたいものはノミ新男爵を窓口にするように通達を、ではこの事をノミ新男爵へ伝えてください」

「あの、本の精査は……?」

「並行してやってください、まずこちらを先に伝えてきて!楽しくなるわよ!」


 自分をチップに賭けたときが一番ワクワクする!

 私が勝ったら何をもらうか……さてさて……婚約破棄は数年かけたギャンブルでしたけど……こちらは何年かけましょうか。

 そうね、これも賭けにしましょう。今の私は……まだ賭けない。

 次の告白と正式な回答を求めたときが終着点。高位貴族の皆様からまた財産を取って差し上げましょう!

 結末の方も賭けさせるか……。いいえ、それはまだですね。

 他の胴元をやってるギャンブルでどこまで積み上げて勝利にかけられるか。

 始めましょう、エドワード・ノミ男爵。

 私達の賭け事を!










「すっからかんだな」


 差し押さえを免れた後はまた差し押さえか、まぁ問題なければ返ってくるんだけどさ……。

 オススメでマケタンカー男爵子息のマッタから進められて買った所持していたエロ本も全部持っていかれた。

 改めて指摘されると金髪多いな。まぁ大体エロ本なんて貴族が平民とイチャコラするか下位貴族が高位の貴族に手を出してイチャコラするかばっかだしな。

 内容もそんな変わらんし、エロさとかそういうものがメインだし。

 全部挿絵で文章があるタイプのやつが俺は好きなんだが……あれは高い。


 ただ、なんかここ数年は婚約者がいる令嬢を横からかっさらう系が増えたな。

 その前後は普通に高位貴族令嬢を落とすとか、下位貴族令嬢を囲い込みみたいなのがメインだった気がするんだが。


 まぁもしかしたらギャンカス侯爵令嬢の婚約破棄の賭けがひっそり噂になって作家にそんな創作をさせたのかもしれない。

 頑なに流行りものを書かないエロ作家くらいじゃないか?それ以外の書いてるのは。


 さて、することも完全になくなったし……出かけるか……。

 流石にこの時間で精査して誰か来ないだろう。

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