異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~【書籍化決定】

ノエ丸

出稼ぎ編

69.ランクアップ後、最初の依頼は・・・。

 カーン。


 カーン。


 と金属と何かがぶつかる音が反響する。


 何人もの人間がツルハシを振るい、鉱石を掘っていた。


 ここはとある、鉱山都市。

 坑道を抜けた先にある採掘エリアにて、ツルハシ片手に鉱石が掘られていた。


 それぞれ額に汗を滲ませ、一心不乱にツルハシを振るい、掘り出した鉱石を集め、〈収納魔法アイテムボックス〉へと詰め込む。


 そしてまた掘る。


 そして詰め込む。


 その繰り返しである。


 全員が黙々と作業を続けていると、大きな声が響き渡る。


「よーし!お前らー!昼飯の時間だ!手を止めろー!」


「「「うーっす」」」


 その声を合図に、各々手を止め休憩を始めた。

 そんな中、女の子が1人の男に近づき話しかける。


「ソラー、今日のお昼何ー?」

 

「昨日良いウィンナー手に入ったからな、ホットドッグだ。夜はポトフだぞー」


「やったー!」


 喜ぶ少女と1人の男。


 俺とシャロは今、鉱山都市へと出稼ぎに来ていた。


 何故そうなったのかと云うと、話は10日ほど前にさかのぼる。


 ◆


 俺とシャロは無事に[アイアン]ランクへと昇格し、駆け出し冒険者から、普通の冒険者へとレベルアップしていた。


 ギルドに居た面々からも、祝いの言葉を頂いた。


「お前達も、もうヒヨっ子じゃないんだな⋯⋯」

「ランクが上がったからって、油断はするんじゃね〜ぞ?」

「へっへっへっ、おめでとう」


「訓練所にもちゃんと顔出してくださいね」

「怪我したら言ってくださいね」

「回復魔法要ります?」



「ありがとうー!」

「ありがとうございます。今日は訓練所行かないので、ヒーラーの人達は散ってください」


 ヒーラーの人達は訓練所へと向かっていった。

 なにあの人達⋯⋯。


 俺とシャロはランクが上がった報告をする為、冒険者ギルドを後にし、宿屋へと戻った。


「なに![アイアン]ランクになったのか?!」

「あら~、2人共おめでとう~」

「シャロ、ソラ、おめでとう」


 シャロの家族からもお祝いの言葉を貰った。

 因みに、アナはまだ寝てるらしい。

 多分お昼ごろまで寝てるんだろうな、報告は起きてからでいいな。


 ランクが上がったお祝いという事で、今日の夜は店を閉めお祝いをしてもらえる事になった。

 その後、お昼過ぎにアナも起きて来た。


「[アイアン]になったんだ。2人共おめでとう。早く[白金プラチナ]ランクになってね?」


「お、おう⋯⋯」

 まぁ、なれるものならなってみたいがな。

[白金プラチナ]ランクの条件って単独でドラゴン討伐だったか⋯⋯。

 まだまだ俺とシャロには無理ゲーだな。


 そして夜になり、祝賀会が始まった。

 アレックス君が作った料理の数々がテーブルの上を彩る。

 腕を上げたな⋯⋯、俺から教える事はもう無さそうだ。


 アレックス君の成長を感じながら、夜は更けていった。


 ◇


 夜が明けた。

 清々しい朝だ。


 今日から俺は、新たな一歩を踏み出すのだ。

 そう![アイアン]ランク冒険者ソラとして!


 俺はシャロと共に、冒険者ギルドへ足を運んだ。


 冒険者ギルドへ着いた。

 目指すは[アイアン]ランク専用の掲示板だ。

[ブロンズ]ランク用の掲示板よりも、色々な依頼が張り出されている。

 魔物の討伐、素材の採取、護衛、荷物の運搬等、これぞ冒険者と云った依頼が沢山ある。

 初めての[アイアン]ランクの依頼だからな、どれにするか⋯⋯。


「あ、ソラ君にシャロちゃん。ちょっといい?」


 2人で掲示板と睨めっこをしていると、受付に居るアイリさんから声を掛けられた。

 なんだろうか⋯⋯。

 呼ばれたからにはそちらを優先しないとな。

 アイリさんの居る受付へと向かう。


「なにかごようですか?」


「2人共まだ依頼は受けていませんよね?もしまだなら良い依頼があるんですけど、どうですか?」


 ほぉ、良い依頼とな。

 何だろうか、アイリさんが勧めるなら変な依頼では無いだろう。

 内容を聞いてみてから決めるか。


「どんな依頼ですか?」


「この街から、乗合馬車で3日程かかる鉱山都市での採掘作業ですね。」


「採掘作業なの?それ冒険者がする仕事じゃないんじゃない?」


「普段ならそうですね。今回の依頼は事情がありまして。この鉱山都市はですね、10年に1度の周期で[鉱石喰らい]と呼ばれる魔物が出るんです」


「鉱石喰らい、ですか?」

「はい。文字通り鉱石を食べる魔物ですね、ロックタートルとは異なって、この魔物は鉱石のみを選んで捕食するんです。その魔物が10年に1度群れをなして鉱山にやってくるんですが、その対策として、普段は鉱夫のみが行う採掘を冒険者ギルドを通して冒険者を雇い、鉱山の鉱石を根こそぎ採掘する、というのが今回の依頼となっています」


 なるほど⋯⋯。

 この世界、謎に自然物は時間経過で再生する仕組みになっている。

 それは鉱石も例外ではないらしく、時間が経てば取り尽くしても少しずつ再生されていくらしい。魔法のある世界ってすごい。実質資源取り放題だ。


 さて、どうしたものか⋯⋯。

 この街を離れての依頼か。


「アイリさん、この依頼ってどれ位報酬出るのー?」

 シャロがアイリさんに報酬の事を聞き出そうとしてるので、俺は思考を一旦止めた。


「この依頼は少し特殊でして。採掘した鉱石を鉱山都市が、直接買い取る形で報酬を得るんです。つまり、鉱石を採れば採るほど報酬は上がります」


「やろう!ソラ!」

「⋯⋯はいはい」


 シャロの眼が¥マークになっている。

 まぁ、良い機会かな。他の街ってのも見て見たいし。


「アイリさん、その依頼受けます!」

[アイアン]ランク初めての依頼は、鉱山都市での採掘依頼に決まった。


「では、コチラの書類を向こうの冒険者ギルドへ渡してください。依頼完了後にサインを貰い、再度こちらに持って来てくださいね」


「わかりました。因みに用意しておく道具とかはありますか?」


「そうですねー。ツルハシの類は向こうが用意するそうですが、自分で用意した物を使っても構いませんよ。それ以外ですと⋯⋯、やはり宿ですかね。他の街からも冒険者が大勢来ますので、安い所は直ぐに埋まってしまいますね」


 他の街からも来るのか⋯⋯。

 いや当たり前か、俺達だけにって訳じゃないんだし。

 そうと決まれば、早く準備して向かった方がいいな。


「アイリさん、ありがとうございます。早速準備して早めに向かいますね」

「じゃーねー」


 宿の事を考えたら、早めに向かった方が良さそうだ。

 ツルハシか⋯⋯。

 カールさんの店か、ヴィーシュさんが作ってたりしないかな、帰りに寄ってみるか。


 結果から言えば、ヴィーシュさんが作ってくれることになった。

 なんでも、鉱山都市に兄弟が居るらしく、会った際はヴィーシュさんは元気でやっていると伝える様に言付けを頼まれた。

 ツルハシが出来るのは明日らしいので、それまでに他の準備を済ませおこう。


 何時もの様に、食料を買い込んで料理のストックを貯めておくか。

 シャロと共に市場で色々と買い物を済ませ、宿屋に戻った。


 丁度アナが居たので、鉱山都市へと出稼ぎに行くことを伝える。


「あの街行くんだ。丁度私の家あるから好きに使っていいよ。はい、これ鍵ね」


 聞けば、アナは色々な街に家を持っているという。

 拠点としているのこのドレスラードだが、依頼で他の街に行った際に、その家で寝泊まりをするのだそうだ。


「いいのか?俺達で使っちゃって⋯⋯」


「うん、いいよ。最近あの街行って無いから掃除とかお願いしたいかな」


「それ位だったらお安い御用だ。⋯⋯アナはこの街に残るのか?」


「私はこの前のアネモス家の件で、しばらくこの街離れられないんだよね。一緒に行きたいけど⋯⋯ごめんね?」


「そうか、それは残念だ。所であれって結局なんだったんだ?」


「んー?なんかねー、狂王神教とかいうのが絡んでたみたい」


「狂王神教?なんだそれ」


「詳しくは私もわからないんだけどね。500年位前に居た王様なんだって。それを復活させようとしている、組織が狂王神教っていうらしいよ」


「そんな奴らが居るのか⋯⋯。その狂王?ってのはどんな奴なんだ?」


「さあ?文献が残ってないみたいだし、アネモス家の調査でも向こうが、そう名乗ってる位しかわからないんだって。今も捕まえた連中とカッスダから、情報引き出してる最中らしいし」


「正体不明の敵か⋯⋯。あんまり関わり合いになりたくないな」


「関わらなければ良いんだよ」


「そんなものか」

 そんなものなのだろう。

 俺から積極的に関わる気もないし、普通に生きてれば出会うことも無いか。

 とは言え、思わぬ所で宿の問題が解消したな。ありがたく使わせてもらおう。


 急ぐ理由も無くなったし、明日ツルハシを受け取ってから、次の日にでも出発しようかな。

 そうと決まれば、アレックス君に料理を手伝ってもらおう。愛する妹の為なら快く引き受けてくれるだろう。


 アレックス君と料理を作っている間、シャロとアナは空のお皿とフォークを持って待機していた。


 ⋯⋯少しだけだぞ?

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