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なんだか世界がガラリと変わって見える。昨日までと違った色合いになってしまった。のほほんとしたコドモの世界に、オトナの世界が割り込んできたってカンジ。
いっぱしに何でもわかった気でいたが、まるで違う。ボクたちは、庇護下の牧場で草を
そして
妙な想像が泡のように浮き上がるたびに、追い払った。
誰に話すわけにもいかない。舞島先生の前で頬を染めていたアネゴ。ずっとあのままの姿でいてほしい。
お母さんの手術は無事に終わり、休養したのち仕事に復帰するという。倉庫業の入出庫事務を担当しているそうだ。
LUCKSでのバイト代に数人の賛同者からのおカネを足し、お見舞いにした。合意により賛同者の名前は伏せた。気を遣わせないためだ。
代表して、ボクと雪ちゃんが手渡した。
ありがとう。そう言って彼女は目を伏せた。元気が無かった。
翌8月30日、雪ちゃんとアネゴとボクは、隣市駅前にあるマクドの2階席に居た。
見下ろす駅前ロータリーは、強い夏の陽に炙られている。
電車で15分ほどの隣市は県の中心地で、周りの市町村から通勤者を集める。買い物や娯楽は、この街に来ないと用が足せない。
夏休みの最後を盛り上げようと、アネゴを誘って遊びに来ていた。
ショッピングモールで無料の音楽ライブを楽しむ。女の子の好きなキャラクターグッズの店へお供し、帰りの電車に乗る前に、冷たいシェイクを飲んでいる。
雪ちゃんはまたアイティーだ。ミルク、シロップ無しの。このところ、外で何か食べるのを見たことがない。あんなに甘いものが好きだったのに。
減量を維持するためだろう。キレイで居ることは、それなりの努力を要するのだ。
つらくなる。太っていても、ケーキにフォークを入れる笑顔が好きだった。
おまけに、この店に入ってから、急にアネゴの口数が減った。これまではボクらに合わせて、盛り上がったフリをしていたのかもしれない。
囲んだテーブルに影が降りたように、沈鬱なムードが漂う。
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