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バストサイズに変化はないと言っていた。むしろ少し減ったとか。ただ、ウエストが絞られてラインが生まれた。美は絶対値でなく変化値なのだ。
「オレ、逆に困ってるんだけど」
「何が困る? 果報者めが」
「なんか、相手がオレでいいのかな、って。オレ、きわめてフツーだし。これから雪ちゃんに、遊び慣れたイケメン軍団が群がるような気がするのだよ」
「ううむ」親友は真顔になる。「それは、ありうるなあ」
そこへ、雪ちゃんが角を曲がって図書室から戻って来た。
「光治くん、お待たせ」
何度見てもドキリとする。帰国してからの彼女は、淡い光のオーラを
冷たいほど澄みきった陽光が射す、北欧の深い森。オールヌードの雪ちゃんが天を指さしてポーズをとる。まるでニンフのように――そんな不埒な妄想が脳裏を駆け巡った。
男には情動を簡潔に表示するバロメーターが付いている。その指針は常に正確で、バカ正直に真上へ振りきれようとする。あわててカバンを腰の前に移動し表示を隠した。
「じゃあ光治、オレ帰るわ」辰則が気をきかせた。
「
「おう。いいってことよ、
「天藤さん、だって。ずうっとアマユキだったのに」
「みんな対応が変わっちまったね」彼女から目を逸らし深呼吸しながら言う。バロメーターの針を、とにかく下げなきゃ。
「嬉しかった」
「え?」
「どう変わったって雪ちゃんは雪ちゃんだ、って言ってくれた。聞こえてたよ」
「いや、その、当然のことだし」
「ワタシね、痩せてから近づいてくる人は信用しない」
「うん」歩きながら彼女をチラ見する。
湯上りみたいにツルリと素朴だ。思わず抱きしめたくなる。またぞろメーターの針が上向きかける。
「コンビニで声かけられたの。ほら、頭シマシマの遊び人」
「まだら狼……」
隣市の繁華街で、ホストをやってるとかやってたとかいう
──やっぱり来たか。
マンガなら、ここで水滴型の汗がこめかみを伝う図だ。
ボクのカノジョは競争率がはね上がり、高嶺の花になったのだ。
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